2025 SMM APAC鉛蓄電池産業会議(LABC2025、主催:SMM)が2025年12月4日〜5日の2日間、ベトナム・ホーチミン市で開催された。同会議には世界30カ国以上から約300名の鉛蓄電池産業の主要プレーヤーが参加し、ベトナムの主要企業に加えて、世界の鉱石サプライヤー、電池メーカー、エンドユーザーが集結した。会場では、原材料調達、サプライチェーン最適化、持続可能なリサイクルソリューションの構築など、業界が直面する多様な課題について活発な議論が行われた。
本稿では、5日のパネルディスカッションの内容について紹介する。
パネルディスカッション:突破と再構築 - 世界の鉛蓄電池サプライチェーンのグリーン再構築
モデレーター : SMM Information & Technology, Rock Ding, Consulting Project Manager
パネリスト:
Jujiang Power Group, Yongdong Wang, Chairman & President
KIJO Group, Juan Shen, Group Purchasing Director
Xupai Power Vietnam, Wenquan Zhang, General Manager
Zhejiang Tianeng Resource Recycling Technology, Chunqiang Zhang, Vice President
本パネルディスカッションでは、鉛蓄電池分野における中国企業の海外進出、とりわけベトナムおよび東南アジアを中心とした生産・市場展開の必要性と課題について多角的な議論が行われた。近年、中国国内では新エネルギー技術の浸透や市場成熟により、従来型製品の需要が伸び悩み、全体の市場規模が縮小する可能性が指摘されている。このような環境下で、企業が成長を維持するためには海外市場の開拓が不可欠であり、政策対応や生産体制の再構築が重要なテーマとして浮上している。
パネルディスカッションでは、中国企業が鉛蓄電池分野の海外進出を進める背景として、関税や貿易障壁への対応、現地生産による市場ローカライズの必要性が挙げられた。特に保護主義の強まりや貿易の分断化が進む中、輸出依存から脱却し、現地での生産や供給体制を構築することが中長期的な競争力確保につながるとの認識が共有された。また、政策面では関税措置だけでなく、海外市場における安全基準やライフサイクル管理、ESG(Environment, Social, Governance)対応への適応が、企業の持続的成長に直結するとの意見が示された。
市場環境に関しては、中国国内市場の飽和と新エネルギー車の急速な普及が、従来製品の需要構造を変化させている点が強調された。ガソリン車とEVなどの新エネルギー車の販売比率が拮抗する中で、製品の小型化や長寿命化が進み、結果として市場全体の数量やシェアが縮小する可能性があるとの分析が示された。これにより、国内における生産能力の過剰問題が顕在化し、海外展開の緊急性が一層高まっているとされた。
鉛蓄電池の進出先として東南アジアが注目される理由については、人口規模の大きさと若年層の多さ、電子商取引の高い成長率、将来的な消費拡大余地が挙げられた。加えて、地理的優位性による物流効率、相対的に低いコスト構造、環境・安全面での政策的柔軟性も投資判断を後押しする要因とされた。特にベトナムは自給率が低く、一定割合を輸入に依存しているため、供給面でのビジネス機会が大きいとの見方が示された。
一方、サプライチェーン面では課題も指摘された。この課題に対しては、現地調達の未成熟さから輸入依存が避けられない現状や、品質基準の違い、資源供給の不安定性などが挙げられ、将来的には原材料や資源のローカライズ供給を契約ベースで確保する重要性が強調された。また、国や地域による基準の差異は存在するものの、企業間の継続的な対話と品質管理の高度化によって克服可能であるとの認識も示された。
本ディスカッションでは総じて、中国企業が直面する市場構造の変化と外部環境の不確実性を踏まえ、海外進出は選択肢ではなく必然であるとの共通認識が形成された。政策対応、技術力、コスト管理、サプライチェーンの再設計を組み合わせることで、海外市場において持続的な競争力を構築できるかが、今後の成長を左右する重要な分岐点になると結論づけられた。
本稿をもって、ベトナム・ホーチミンで開催された2025 SMM APAC鉛蓄電池産業会議の報告を締めくくる。
(IRuniverse Midori Fushimi)