ブルームバーグ外電等が12月になって伝えたところによると、中国の輸出が11月に入り10月とは異なり増加に転じた一方、輸入の伸びは微々たるものだった。その背景にはトランプ政権との緊張緩和があった。
11月の貿易黒字が過去最高に
中国の貿易黒字は11月に7,925億7,000万人民元(約17兆3,135億円)と過去最高を記録した。中国海関総署 注)のデータに基づき、オランダ王手のING銀行は11月の中国からの輸出額が前年同月比5.9%増加したと発表した。10月の黒字が前年同月比1.1%減だったのとは対照的で、年初来では、輸出は5.4%増加している。
米ドル換算では、これは年間の貿易黒字が初めて1兆ドル(約155兆円)を超えたことになる。11月の輸入は1.9%増にとどまった。
注)中国海関総署は、税関、物品等の輸出入管理、検疫の事務を司る機関。中央政府が事務を直接管掌する、いわゆる垂直管理体制にあり、国務院の部級直属機関で、日本の省に相当する。海関総署、広東分署、天津特派員事務所、上海特派員事務所、41の税関、2カ所の税関学校、及び562の所管税関機関よりなる。
輸出依存から脱却できない中国
中国の貿易黒字はトランプ米政権との緊張緩和を受け、この節目に達した。中国からの安い産品の流入によって国内産業への圧力に直面する貿易相手国の関心が再び強まりそうだ。その事実として、中国発の欧州向けとアジア域内でのコンテナ貨物の量が増えている。
同時に浮き彫りとなったのは、輸出需要への依存から脱却しようとする中国の取り組みが難航している現状だ。純輸出は今年、経済成長のほぼ3分の1を占めているともいわれており国内では不動産バブルが弾けたことにより建設活動が著しく低迷しており、特に建築資材への需要に特段の影響が出ているようだ。
輸出の目玉は
輸出の伸びを牽引しているのは、半導体(11月の輸出は前年同月比24.7%増)や自動車(11月の輸出は前年同月比16.7%増)といった目玉となる「テクノロジー」製品だけでなく、船舶も含まれている。
船舶に関しては、海運立国の再現を掲げるトランプ政権の下で中国で製造された船舶への入港料徴収案が昨年において唐突に打ち出さたが、1年間延期された。
今回の入港料問題によって現在のコンテナ海上輸送を支える船舶やコンテナ機器類がいかに、中国によって支えられているかが明らかになった。
今後の問題は
欧州諸国は今のところ、米国のような中国輸入品への関税制度を導入していない。しかしながら、欧州諸国、そして米国以外の世界経済が、これほどの量の中国からの輸出をどれだけ長く吸収し続けることができるのか、という疑問は当然のこととしてある。中国からの輸出量が低迷すれば、コンテナ輸送市場の成長の基盤の大部分だけでなく、航空貨物輸送や関連分野の道路貨物輸送、倉庫保管といった市場も下振れする可能性がある。
現在の世界貿易の動向は、物流市場の成長率に大きな変化が生じる可能性があることを示唆しているともいえる。
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。