2026年2月10日、関東鉄源協同組合(関鉄)は2月輸出テンダーを行い、平均落札価格はトン48,083円(H2/FAS)(前回比1312円高)で落札となった。落札数量は2万トン。豊通マテリアルがシッパー、とみられている。この日、東鉄は静観の構えで動かずだったが、鉄スクラップ市況は今後どう動くのだろうか?
1. 落札価格のインパクト分析(「輸出」が「国内」を上回った)
今回の落札価格 平均 48,083円(FAS) という数字は、現在の関東地区の地場相場に対して「明確なプレミアム」を持っている。
- FAS(船側渡し)→ FOB(本船渡し)換算:
- メーカー着値との比較:
FAS 48,083円 + 船積みコスト(約1,000〜1,500円) = 実質FOB 約49,500円 前後
現在の関東地区電炉メーカーのH2買値はおおよそ47,000円〜48,000円どころ。これに対し、今回の輸出価格は、横持ち運賃を考慮しても「輸出に向けた方が1,000円〜2,000円高い」計算になる。
これにより、関東湾岸部のディーラー(ヤード業者)は、国内メーカーへの納入を絞り、輸出向け(船積み)に荷物を優先させる動きが加速している。

2. 時期的要因とシッパーの意図を読むと?
- 旧正月(春節)前の駆け込み・明けの期待:
2026年の春節(2月17日)直前のこの時期に、大手商社である豊通マテリアルが2万トンというまとまった量を、前回比プラス(+1,312円)で落札した意味は大きい。
これは、ベトナムやバングラデシュなどの海外需要家が、「春節明けの相場は下がらない(むしろ上がる)」と踏んで、手当てを急いだ(または商社が先読みしてポジションを取った)ことを示唆している。
| 国・地域 | 品種 | 推定価格 (CFR $/ton) | 前週比・動向 |
| 韓国 | 日本産 H2 | $350 - $355 | 強含み
関鉄結果(FAS 48,000円≒FOB $330-335)を受け、FOB $330以下での成約は不可能に。現代製鉄などのビッドも切り上がる公算大。 |
| ベトナム | 日本産 H2 | $365 - $370 | 強含み
旧正月前の手当て需要と競合。米国産バルクHMSが高止まりしているため、日本産の割安感が消えても買わざるを得ない状況。 |
| インド | HMS 1&2 (80:20) | $385 - $395 | 堅調
欧州・米国産コンテナおよびバルクがベース。日本産H2の上昇は間接的に影響し、底値を切り上げる要因に。 |
1韓国市場(対日H2)
- 計算ロジック: 関鉄FAS 48,000円 +船積コスト(約1,500円)= FOB 49,500円(約$335)。これに韓国向け運賃($15-20)を足すと、CFRコストは$350を超えてきくる。
- 見通し: 韓国メーカー(現代製鉄、東国製鋼)はこれまで指値を抑えてきたが、日本の国内価格と輸出FASが跳ね上がったため、在庫確保のためには$350台を受け入れざるを得ない「追随値上げ」のフェーズに入る可能性がある。
2. ベトナム市場(対日H2 / 対米バルク)
- 計算ロジック: ベトナム向け運賃は$30-35程度。FOB $335 + 運賃= CFR $365-370。
- 見通し: ベトナムは旧正月(テト)前の駆け込み需要があるものの、製品需要(建設鋼材)の回復がまだら模様で、高値追いに慎重でした。しかし、今回の関鉄で「安値の日本玉」が消滅したため、嫌気しながらもオファーを受け入れるか、あるいはテト明けまで観望するかの岐路に立たされる。豊通マテリアルの落札は、ベトナム等の需要家がこの価格帯を許容した(あるいは許容すると読んだ)証拠とも言える。
3. インド市場(対欧米HMS)
- 動向: インドは日本産H2よりも、欧州・中東・米国からのHMSやシュレッダーを好んで買っている。
- 見通し: トルコ市場が堅調(HMS $390-400 CFR Turkey)であること、そしてアジアの指標である日本産スクラップが急騰したことで、インド向けのオファーも強気になる。$380台後半から$400を伺う展開が予想される。
4. 米国市場の影響(悪天候)
米国での「厳しい寒波と悪天候(Winter Weather)」の影響で、米国内のスクラップ発生と物流が滞っている状況。
原因: 1月から2月にかけて、米国中西部(シカゴなど主要なスクラップ発生地)や東海岸を厳しい寒波と雪が襲っている。
影響:
発生減: 解体工事や廃車回収がストップし、市中から出るスクラップの量が激減している。
物流麻痺: 路面凍結や河川の凍結により、トレーラーやバージ(はしけ)での輸送が遅延しており、輸出ヤードに荷物が集まりにくくなっている。
結果: 米国内でもスクラップが取り合いになり、価格がトンあたり$30〜$50上昇。輸出に向けられる余剰玉が極端に減っている。
トルコの鉄鋼メーカーは原料の多くを米国からの輸入に頼っている。
価格上昇: 米国からのオファー価格が上昇したため、トルコ向けの成約価格(CFR Turkey)もつられて上昇している。1月から2月にかけてトンあたり$30以上の値上がりが確認されている。現状は$380前後。
在庫確保: トルコのメーカーは製品需要がそこまで強くないものの、「これ以上上がると買えなくなる」「春に向けて在庫を持っておきたい」という心理から、高値でも手当てを急ぐ動きが出ている。
バングラデシュへの影響
バングラデシュも同様に価格上昇の波を受けている。
連鎖反応: トルコ価格は世界指標となるため、トルコが上がると、アジア向け(バングラデシュ、ベトナム等)のオファー価格も自動的に引き上げられる。
競合: 米国の供給が減ると、代替として欧州や日本、近隣のスクラップを奪い合う形になり、結果としてバングラデシュが入手する価格も上昇している(直近でトンあたり$25〜$30の上昇)。
つまりは「米国の悪天候による供給ショック」が起きている。これが世界のスクラップ相場を押し上げており、天候が回復して物流が正常化するまでは、この高値基調が続く可能性が高い。
- 為替の影響:
円安基調が継続している場合、海外バイヤーにとっては円建て価格が高くてもドルベースでは許容範囲内。

3. 東京製鉄が「動かなかった」理由と今後の展開
東京製鉄が即座に動かなかったことには、以下の背景が推測される。
- 静観の構え: 現在の在庫が十分にある、生産数量が伸びていない。あるいは「輸出価格が突出しているだけで、国内の鋼材需要(製品需要)はそこまで強くない」という判断で、過熱感を抑えたい意図。
- タイムラグ: 関鉄の結果を見て、他社(関東スチールや伊藤製鐵など)の動向を確認してから、後出しで修正するパターン。
【今後の市況予測シナリオ】
- 短期的(今週〜来週): 強含み・一段高
- 「輸出の方が高い」という事実が出た以上、湾岸部から内陸へのスクラップ還流が止まる。
- 集荷を維持したい関東の他電炉メーカーが、明日以降、500円〜1,000円程度の値上げに踏み切る可能性が高い。
- 周辺メーカーが上げれば、東京製鉄も在庫確保の観点から、遅れて(あるいは春節明けに)買値を引き上げざるを得なくなる。
- 中期的(3月): 海外市況次第
- 今回のFAS 48,000円台後半は、海外CFR価格で言えばかなり強気の水準である。春節明けに海外の製品需要(建設・インフラ)が実際についてくるかが鍵。
- もし海外が失速すれば、「高値掴み」となり急落するリスクもあるが、現状の底堅さを見る限り、3月まではジリ高基調が続くと予想される。
(IRUNIVERSE YT)