(写真左:高橋秀晴社長、高橋敦之会長)
泰和電気工業株式会社の新社長に就任した高橋秀晴氏。同社は電気設備の製造やリサイクル事業を展開しているが、高橋新社長は就任にあたり、従来の製造業の限界を見据えつつ、急速に拡大する「蓄電所(エネルギー貯蔵)」ビジネスへの本格参入を掲げている。今後の成長戦略と市場展望について話を聞いた。
── まずは、社長就任にあたっての現在の会社の規模感と、今後の売上目標についてお聞かせください。
高橋社長(以下、高橋):
現在の売上規模は年間で約35億〜38億円程度で推移しています。個人的な野心としては「売上100億円企業」を目指したい気持ちはありますが、現実的な経営判断としては、まずは「50億円」の規模まで着実に引き上げることが目標です。
今の我々の主力であるキュービクル(高圧受変電設備)、継電器などは業界的に好調ですが、製造業モデルだけで急拡大を目指すのはリスクが高いと考えています。例えば、売上を倍増させるには、製品をストックし出荷するための広大な工場用地、人員、現在外注に出している板金塗装の内製化が必要で
関東圏でそれだけの工場を作ろうとすると20億円規模以上の投資が必要です。したがって、既存の製造業を維持しつつ、資金効率の良い新規事業へ投資することで成長を図る方針です。
── そこで新たな柱として注力されているのが「蓄電所(ESS)」ビジネスですね。
高橋:
はい。現在は「蓄電所」の開発に注力しています。具体的には、2メガワットクラスの蓄電所を建設するプロジェクトなどを進めています。
製造業の設備投資と比較して、蓄電所ビジネスは資金的なリターンが直近数年間は、十分に見込め、今後の電力需給逼迫を見据えても非常に堅実な事業です。ご存じの通り、2034年に向けてデーターセンターなど増えていく中、電力不足は深刻化しており、原発の再稼働も時間がかかる中、太陽光などの再生可能エネルギーを安定供給するための「調整弁」としての蓄電池の需要は伸びていくと予想されます。
── 蓄電所ビジネスにおける御社の強みや、現在の市場環境はどうでしょうか?
高橋:
今の蓄電所ビジネスは、一種の「土地の争奪戦」の様相を呈しています。系統連系(グリッドへの接続)が可能な土地をいかに早く確保するかが勝負です。都内や関東近郊で連携の早い接続回答済みの土地価格は高騰しており、工事負担金、本申請などの開発許可込みで1億前後の価格になることも珍しくありません。しかし、それでも早期に連系できれば現状十分な収益が見込めるため、我々もスピード感を持って土地の仕入れ、選定を行っています。
また、お客様への蓄電所販売もおこなっており、当社の強みは「ベンダーフリー」であることです。特定のメーカーに縛られないため、ファーウェイやCATL、あるいは国内メーカーなど、その時のコストや性能、納期に合わせて最適なバッテリーやパワーコンディショナーを選定・構築できます。これにより、他社よりも柔軟でコスト競争力のある提案が可能です。
── 泰和電気工業といえばリサイクル事業もございますが、蓄電池ビジネスとのシナジーはあるのでしょうか?
高橋:
そこが最大のポイントです。我々はもともとリサイクル事業を手掛けていますから、蓄電池の導入だけでなく、将来必ず発生する「使用済み蓄電池」の回収・リユース・リサイクルまでを一気通貫で描いています。
まさに「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の実践です。他社は「作るだけ」「売るだけ」かもしれませんが、我々は将来の廃棄・リサイクルまで見据えた「泰和バッテリーエコシステム」のようなものを構築できると考えています。
── 最後に、既存のリサイクル事業(スクラップ事業)の現況について教えてください。
高橋:
リサイクル事業についても、おかげさまで順調に活動しています。特に最近は相場も良く、タンタル、タングステンなどのレアメタルは非常に高値で取引されています。金属そのものの価値はもちろん、スクラップとしての買取価格も上昇傾向にあります。ただ、営業マンが欲しいですね~。いつでも募集中です(笑)
これからは、既存の製造・リサイクル事業の安定収益をベースに、蓄電所という新たなインフラビジネスを組み合わせることで、時代のニーズに合った筋肉質な経営を目指していきます。
(IRuniverse N.Oshiro)