Tokyo Battery & Critical Materials Summit開催を前に、MIRUでは登壇者への事前インタビューを実施ししている。第3回である本報では、SungEel HiTech(ソンイルハイテック)グローバルソーシング&パートナーシップ担当であるJeong Su Jin氏にインタビュー。本インタビューでは「Closed Loopの守護者として」— グローバル循環を支えるソンイルハイテックの戦略について伺った。
- 第一回:【インタビュー】Battery Summit登壇者 Volodymyr (Vol) Berezhniy氏「ウクライナのレアアースを日本へ」―強靭なレアアース磁石サプライチェーンの構築に向けて
- 第二回:【インタビュー】Battery Summit登壇者:インドネシア・ニッケル鉱業協会(APNI)事務局長Meidy Katrin Lengkey氏に聞く「インドネシアのニッケル生産状況」
Q1. SungEel HiTechでのご役職について簡単にご紹介ください。
私は2015年にSungEel HiTechに入社しました。現在は、バッテリーリサイクル原料のグローバル調達を担当するとともに、国際パートナーシップの管理および拡大において中心的な役割を担っています。
特に日本市場を重点領域としており、バッテリーバリューチェーン全体にわたる主要ステークホルダーと緊密に連携しています。
Q2. 今回のBattery Summitではどのような内容を発表されますか?
本講演では、主に以下の3つのテーマについてお話しする予定です。
- バッテリーリサイクル市場の世界的な展望
- グローバル・バッテリーサプライチェーンにおけるSungEel HiTechの位置づけ
- バッテリーエコシステムにおける日韓関係の進展と今後の方向性
Q3. 最近のグローバル事業の状況について教えてください。
過去2年間、バッテリーリサイクル業界は極めて厳しい環境に直面してきました。金属価格の急落と市場全体の減速により、多くの企業やプロジェクトが破産、投資中止、あるいは2030年以降への計画延期を余儀なくされました。業界全体にとって大きな試練の時期だったと言えます。
当社はこの状況に対応するため、事業基盤の強化を迅速に進めました。収益性重視のオペレーション最適化戦略を導入し、年間処理能力2万トンを有する第3工場に生産を集約。その結果、稼働率を約90%まで高めることができました。
同時に、設備の改修を実施し、固定費および運営コストの構造的な削減にも取り組みました。短期的な拡張よりも、効率性と財務安定性を優先し、業績回復に向けた基盤を整えました。
現在は回復段階を超え、次の成長フェーズに向けた準備を進めています。LFPや全固体電池(ASB)など次世代電池のリサイクル技術の開発を積極的に進めるとともに、多様な電池組成に対応可能なマルチケミストリー型リサイクルプラットフォームの構築を進めています。
また、AIデータセンターやエネルギー貯蔵システム(ESS)など新興分野での需要拡大を見据え、これらの用途から発生する電池のリサイクルにも対応できる体制を強化しています。
世界No.1のバッテリーリサイクラーとして、当社は日本、欧州、米国、アジアに拠点を持つ強固なグローバルリサイクルネットワークを構築しています。回収・前処理から湿式製錬、電池グレード材料の供給まで、包括的なソリューションを提供するとともに、クローズドループ体制の強化を継続しています。
今後も、独自技術とグローバルネットワークを活かし、業界の中核でイノベーションを牽引するとともに、「クローズドループの守護者」として、持続可能なバッテリー循環型エコシステムの構築に貢献していきます。
Q4. リサイクルによってどのような材料を生産していますか?
当社では、ニッケルやリチウム化合物などの高品質な回収金属を生産しています。
電池グレードの炭酸リチウム(純度99.5%)の生産能力も有していますが、現在の市場では工業グレード(約99%)の需要がより強いため、こちらが主力製品となっています。なお、要望に応じて電池グレードの供給も可能です。
当社はセルメーカーへの直接供給は行っておらず、前駆体メーカーおよび正極材メーカーに材料を提供しています。これらの企業が電池メーカーへの直接供給を担っています。
過去には前駆体生産の検討も行いましたが、現在は機械破砕および湿式精錬といったコアとなるリサイクル技術に注力する戦略を採用しています。
Q5. リチウムイオン電池リサイクル市場において、中国向けの特別な戦略はありますか?
現時点で「中国特化型」の戦略はありません。
価格変動の激しい金属市場において短期的な価格競争に対応するのではなく、OEM、電池メーカー、材料メーカーとの長期的なパートナーシップ構築に重点を置いています。
当社の主な強みは以下の通りです。
- 複数の下流顧客(前駆体・正極材メーカー)への供給体制
- リサイクル材料の完全なトレーサビリティ
- OEMスクラップおよび使用済み電池に対する透明性の高いリサイクルプロセス
こうした信頼重視のアプローチが、「クローズドループの守護者」としての役割を支えています。
Q6. パートナーシップ戦略の具体例を教えてください。
グローバルでは、米国や中国を含む主要な自動車OEMおよびバッテリー関連企業と連携しています。
日本市場では、オープン市場での取引よりも、クローズドループ型のパートナーシップへとシフトが進んでいます。例えば、パナソニックなどとの連携モデルが一般化しつつあります。
今後、バッテリースクラップやブラックマスの量が増加する中で、競争よりも協働の重要性はさらに高まると考えています。また、日本のOEM、セルメーカー、材料メーカーとの新たな協業機会の拡大も期待しています。
日本はSungEel HiTechにとって重要な戦略市場です。今後も日本のパートナーとの協力関係を強化し、持続可能で透明性の高いバッテリーリサイクルエコシステムの構築に貢献していきたいと考えています。
Related Articles:
- 第13回 Tokyo Battery Summit ~各国の資源政策とクリティカルマテリアルの今~
- The 13th Tokyo Battery Summit in March 2026 -The Present Outlook for Critical Materials and National Resource Policies-
- The 13th Battery Summit Keynote Speaker: SungEel HiTech - Jeong Su Jin
(IRuniverse R.S. & YT)
