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【INTERVIEW】レアメタル供給危機の最深部:西側の精錬設備不足と、スクラップ依存という過酷な現実

2026/03/02 00:54
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【INTERVIEW】レアメタル供給危機の最深部:西側の精錬設備不足と、スクラップ依存という過酷な現実

――タングステンやガリウムをはじめとするクリティカルメタルの価格高騰と供給不安が、かつてない異常事態に突入しています。中国の動向のみならず、西側諸国の構造的な弱点が浮き彫りになる中、業界の最前線を知る専門家にお話を伺いました。 

 

バージン原料の枯渇と「3000ドル」を視野に入れるタングステン市場 

聞き手(棚町): 

最近のレアメタル市場、特にタングステンなどのクリティカルな鉱種において、供給不足が極めて深刻なフェーズに入っています。現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。 

専門家(ベテランのメタルトレーダー氏): 

状況は昨年から確実に悪化しており、いよいよ「モノが作れない」という現実的な局面に直面しています。 

価格面で見ても、タングステンの指標となるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)はすでに2000ドルも目前となっており、現在の需給バランスの崩れ方を考慮すれば、もはや3000ドルも視野に入ってくる異次元の相場展開です。 

(史上最高値を更新し続けているタングステンAPT相場) 

 

聞き手: 背景には何があるのでしょうか。 

専門家: 最大の問題は、バージン原料が絶望的に入手できなくなっていることです。 

かつては「世界のタングステン資源埋蔵量の7〜8割を占める」と言われた中国でさえ、タングステン鉱石の品位低下が進んでおり、ここ数年は貿易統計を見てもタングステンスクラップの輸入国に転じています。結果として、バージン原料ではなくスクラップ原料を元に精錬しなければならないアイテムがタングステンはじめ、増えてきているのが実情です。 

聞き手: 日本国内でも超硬工具などのスクラップ回収は進んでいますが、それだけでは足りないということですか。 

専門家: 国内のスクラップ回収は停滞していますね。相場高で出し渋りが生じています。さらに、メーカー側も自社のリターン材の回収を強化しているため、独立系の専門回収業者(レアメタル系リサイクラー)のところへはモノが集まらなくなっています。市中からの発生量には自ずと限界があり、世界的なスクラップの争奪戦によって価格が跳ね上がっているのです。 

 聞き手: 超硬スクラップ相場はすでにキロ当たり1万円も超えています 

専門家: いや~もう今は18,000円とかそういう相場ですね。青天井。 

相場高がわかっているから、鉄、非鉄スクラップの問屋もモノを出さない。レアメタル系スクラップ専業の会社での回収はきわめて厳しい状況と聞いています。 

これはタングステンに限らずガリウムでも同様の出し渋りがみられます。これまでスムーズに出してきていたところが急に出なくなりました(苦笑) 

 聞き手: なるほど、わかりやすいですね。ところで、このテリブルにタイトな状況はいつになったら改善されるのでしょうか? 

専門家: いや~しばらく難しいんではないでしょうか?タングステンスクラップ精錬できるところも米国、ドイツ、ベトナム、チェコ、と限られています。いまはもう彼らのところは新規の話は全て断っている。従来からの顧客に供給するまでで一杯一杯。この夏あたりには本格的にタングステンのスタート原料不足は表面化するでしょう。 

すでに半導体業界向けに供給するタングステンパウダーは不足しています。 

精錬設備がない、という文脈でいえば焼結の設備も国内は不足していますね。どうにもなりません。 

1990年代までは国内には存在しましたが中国から安価なAPTを輸入したほうがはるかに合理的で、大幅なコスト削減にもなったわけです。なのでほとんどの一貫型の超硬合金メーカーは精錬、焼結の設備は廃棄していったのですが、今になってその設備の重要性に気づいても遅い。これはレアアースなどでも同じです。精錬設備がない。 

これは日本だけではなく、西側諸国はすべて同じ。決定的に生産設備が不足している。 

 

西側諸国から消えた「精錬設備」と致命的なタイムラグ 

 

聞き手: ガリウムやゲルマニウムなども歴史的な高値をつけていますね。 

専門家: ガリウムの価格は1600ドルに達し、最高値を更新し続けています。金属ゲルマニウムに至っては中国国内で7000ドルを超えています。インジウムやタンタルなども含め、軒並み相場は上昇している。タンタライトも過去最高値をつけている(US$140/lb)。 

(ガリウムも過去最高値を更新) 

 

(中国の金属ゲルマニウム相場の推移) 

 聞き手: 西側諸国も経済安全保障の観点から「脱中国」を掲げ、サプライチェーンの再構築を急いでいますが、足元の供給不安は拭えません。 

専門家: ここに、市場が抱える最大のボトルネックがあります。それは先ほども言いましたように「西側諸国にはもはや精錬設備が残されていない」という残酷な現実です。 

これまで中国の安価な製品に依存しきった結果、西側の精錬インフラは淘汰されてしまいました。現在、ガリウムに関しては西側で11のプロジェクトが立ち上がってきていますが、実際に生産が稼働し供給されるまでには1〜2年後のタイムラグがあります。他の鉱種に関しても、これから慌てて精錬設備を新設したところで、実際にモノが出てくるのは2〜3年後です。 

その空白期間をどう乗り切るのか、全く見通しが立っていません。 

 

長期契約の崩壊と、問われる日本の購買方針 

 

聞き手: 中国側の真の狙いはどこにあると見ていますか。 

専門家: 中国は単なる「資源の出し惜しみ」をしているわけではありません。彼らは国内外で資源の権益を取り、それを自国内(あるいは中国企業)で超硬工具や磁石、あるいはステンレスといった最終製品に変えて、その最終製品の段階で圧倒的な利益を出すエコシステムを完成させようとしています。原料から最終製品までを一貫して囲い込む戦略です。 

聞き手: そうした厳しい現実の中で、日本のメーカーの調達方針に課題はありますか。 

専門家: 正直に申し上げて、長期的な購買方針に基づいた戦略が決定的に不足していると言わざるを得ません。 

かつては「総固定価格で1年間」といった長期契約の概念がありましたが、今はスポット市場で「3ヶ月後にしかモノが出ない」と言われれば、売り手の言い値で買うしかない世界です。バージン原料から契約するという概念自体が、すでに意味を持たなくなっています。 

それにもかかわらず、ニュースの表面的な観測に左右されて調達方針がブレたり、「中国からまた安いモノが出てくるかもしれない」と期待して、結果出なくなったらSPOTで高値掴みをする、ということの繰り返しです。学習していないですね。はっきり言って。 

 聞き手: 今後の市場はどうなっていくと予想されますか。 

専門家: 今後はあらゆる鉱種で「テリブル(恐るべき)」な供給不足の波が来る可能性があります。タングステン、ガリウム、ゲルマニウムはその第一弾に過ぎません。 

政府の音頭取りだけでなく、現場の企業がこの「2〜3年の致命的な空白期間」をどうサバイブするのか。業界全体で、建前ではないリアルなクリティカル・ポイントを共有し、対策を講じる必要があります。 

 (IRUNIVERSE YT)

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