山一電機の26/3Q3は、半導体向けの回復と光通信向けコネクタの伸長により、前年同期比50.2%増収、営業利益7.6倍と大幅増益で着地 。AIデータセンター向けなどの好調を受け、通期26/3期予想を再増額し、14.8%増収33.7%営業利益増予想で最高益更新予想も、さらなる上振れ期待。27/3期も推論データセンター向けAI半導体向けの本格拡大、エヌビディアの次世代GPU対応で800Gから1.6T光トランシーバ向けコネクタ伸長で収益の上伸続く見通しで、同業他社と比較し割安感からポジティブ評価を継続 。
26/3期光通信用コネクタがデータセンター向け増額で14.3%増収33.7%営利増に再増額
株価8090円(3/23) 時価総額1766億円 発行済株21,829千株
PER(26/3期DO予17.2X)PBR(3.38X) 配当(26/3DO予)140円 配当利回り:1.7%
要約

26/3Q3半導体向け回復、光通信向けコネクタ伸長し50.2%増収、営利7.6倍と上伸
26/3Q3決算が2/4に発表され、同日WEB説明会が実施され、その後3/16にWEB取材を行った。26/3Q3は売上高128.57億円(同期比50.2%増)、営業利益28.93億円(同7.6倍)、経常利益31.31億円(同3.0倍)と上伸して着地した。

事業別にテストソリューション事業(TS)は売上高62.18億円(59.9%増)、営利16.27億円(5.1倍)となった。全体の4割弱を占めるとみられるテスト用ソケットはクアルコム向けが新モデル向けの前倒しもあり上伸、加えてアップル向けが追加増産で2.3倍増となった。バーンインソケットも全体で4割の伸び。メモリではDRAM向けが5割弱の伸び、ロジック向けでは車載用がクアルコム向けの伸長で5割強の伸び、非車載はウエラブルなどの伸びで2割弱の伸びに。利益面ではテストソケットの伸長で増収効果に加えMIX良化から利益が上伸した。


コネクタソリューション事業(CS)は売上高63.08億円(38.6%増)、営利12.44億円(19.1倍)に。テレコム向けがAIデータセンター向けの上伸から、同期比2.5倍となった。CS事業の構成比では2割から4割へ倍増、特にデータセンター向けが3倍増となった模様。なお収益性の高い基幹系も倍近い伸びとなっている。FA関連はシーメンス向けが工作機械やロボット、FA制御向けが在庫調整一巡、省人化需要など3割の伸びとなった。一方、車載向けはテスラ向けの伸び悩みで10%弱の減少となった。利益面では高採算の基幹系の伸び加え、AIのデータセンター向けが上伸し、営業利益率は18.2ポイントアップし19.7%となった。営業利益率は2四半期連続で最高営利率となり、営業利益の絶対額では4四半期連続で最高益更新となっている。


全体を通じCS部門が高採算の基幹系通信向けで上伸、TS部門がテストソケットの伸びで利益急回復、全体として第3四半期として過去最高営業利益となった。なお為替がQ2に対し円安に推移も、同期比では営業外では為替差益が2.21億円(同期比2.26億円減)と半減したため、伸び率は3.0倍にとどまった。
26/3期通信向け光通信コネクタ増額で14.8%増収33.7%営利増に再増額も更に上振れも
26/3期予想は高採算の通信向けコネクタの好調を受け、11/5増額修正予想を再増額、売上高520億円(期初計画比46億円増額、11/5予想比43億円増額、14.8%増)、営業利益110億円(同25億円増額、同17億円増額、33.7%増)、経常利益111.50億円(同32.5億円増額、同20.50億円増額、45.0%増)、最高益更新予想とした。

事業別にTS事業は売上高257億円(期初計画比6億円減額、8/5修正予想比23億円増額、11/5修正予想比23億円増額、前期比2.3%増)、営利65.0億円(同4.50億円減額、同5.60億円増額、同5.60億円増額、8.6%減)予想。TS事業はバーンインソケットがメモリについてDRAM向けがQ2まで緩慢な動きも、Q3でAIサーバーだけでなく汎用サーバー向けに大容量DDR5の本格回復やモジュールレベルの帯域幅拡大(大容量MRDIMM:DDR5の発展形として開発された新メモリモジュール)などが出始めた。しかしQ2までの回復の遅れが影響し、前年比では2ケタ減予想。バーンインロジック向けは、車載向けでクアルコムがマーケットシェア拡大からクアルコム向けの伸長が寄与している。クアルコムは次世代車両に必要な「常時接続性」「OTA(空中ダウンロード)更新」「V2X(車と外界の通信)」を強力にサポート、SoCだけでなく、ADAS、車載通信を一貫してサポートしている。Snapdragon Digital Chassisとして、Snapdragon Ride (自動運転/ADAS)、Snapdragon Cockpit (インフォテインメント)、Snapdragon Auto Connectivity (5G/C-V2X通信)、Snapdragon Ride Flex (上記を1チップに統合)などの拡大が寄与している模様。ただし、欧州勢、ルネサスなどクアルコム以外は低調で車載全体では緩やかな拡大予想。全体ではQ1で大幅減額もQ3で増額、前期比15%減予想。テストソケットはクアルコムの26年度スマホ新モデルの拡大、アップルの追加発注などが寄与した。加えてクアルコムの車載バーンインテスト後のテストソケット、ウエラブル(MetaのRVグラス向けなど)向けのテストソケットなども加わった。期初計画の10%増程度の見通しをQ3で大幅に増額、24%増予想とした。利益面ではQ4にテストソケットのQ3前倒しの反動減を見ており、8/5の大幅減額に対し、5.6億円上振れ予想としたものの、前期比では減益予想に。ただしQ4について、売上高53.11億円(同期比30.5%増、Q3比14.6%減)、営業利益5.04億円(同21.1%増、同69.0%減)予想となっており、Q3比較で極端な利益減予想としている。現状、DRAM向けが価格高騰もあり、マイクロン向けが急拡大している。またテストソケットも想定ほど落ちないとみられる。しかも為替が円安に推移、このため同部門はさらに収益の上振れが見込まれる。
コネクタ事業は通信向けが牽引し、売上高248億円(期初計画比51億円増額、8/5修正予想比23億円増額、11/5予想比20億円増額、30.9%増)、営利43.2億円(同28.2億円増額、同19.2億円増額、同11.2億円増額、3.6倍)予想とした。データセンター向けに800G対応構成比も4割弱、25%から大幅増予想、データセンター向けは6割を占める見通し。FAも工作機械向けなどの拡大で順調な伸び、車載向けは低迷続く見通しに。利益面では収益性の高い通信向けの上伸で過去最高益大幅更新予想。こちらはQ4予想が売上高67.42億円(同期比48.2%増、Q3比6.9%増)、営業利益12.07億円(3.0%減)予想となっている。利益率についてはQ3比1.8ポイント低下し17.9%予想としている。ただし通信についてはQ4がQ3比5%程度の増加を想定しており、構成比もほとんど変化しない見通しから、Q4で利益率が維持されるとみられ、しかも為替が円安に推移しており、同部門も収益の上振れが見込まれる。
全体としてTS、CS事業ともに収益の再増額が見込まれる。

27/3期はCSが通信向け伸長継続、半導体向けもAI半導体向け本格拡大で収益上伸続く
27/3期はTS事業でバーンインでは、メモリについて主力需要先のマイクロン向けが大幅拡大となる模様。マイクロンは8月決算であるが、24/8期からHBM投資に注力、25/8期は24/8期比3倍の投資額となり、一方でDRAM投資は24/8期比横ばいにとどまっていた。これが26/8期はHBMが高水準を維持する中で、DRAM投資が倍増予想となっており、同社にとっては26/3Q3からの受注急拡大に繋がっている。しかもAIサーバー向けで従来スマホ向けが中心だったLPDDR5Xなどが、サーバーの省電力化、高性能化の鍵として、注目されて始めた。これはGPUの発熱量の増大、冷却電力の削減が急務となっているため、LPDDR5XなどはDDR5と比較して消費電力が低く、電力使用効率(PUF)を大幅に改善できることも追い風となっている。そしてDDR5については大容量MRDIMMとしてモジュール化して数量増加となっている。しかもマイクロンは初めてEUV露光を採用、従来の1ベータ(1β)EUV非採用のDDR5から1ガンマ(1Y)世代を適用し、大容量16GbDDR5チップなどを順次投入、今後128GBや256GBなどの大容量RRDIMMも増やし高付加価値化も進む見通し。スマホやノートPCでは9.6Gbp超の省電力LPDDR5Xや、LPCAMM2(従来比約6割省スペースで低電力性能を実現)が、普及が高まりつつあるAI対応スマホ、AIPC(Copilot+PC)などに納入増加が見込める。さらに次世代ゲーム機用途ではGDDR7が、GDDR6比で帯域幅と電力効率が大幅アップし、次世代の標準規格として市場投入が開始された。また一部では、自動運転向けなどのエッジ端末用にも供給が見込まれている。このように、26/8期はマイクロンのHBM投資が高水準横ばいの中でDRAM投資が倍増する見通しから、27/3期はDRAM向けで7割程度の伸びが見込める。なおNAND向けは、マイクロンがデータセンター向けに2025年7月に発表したSSDモデル(PCle GEN6対応の第9世代NAND)「Micron9650」は低レイテンシーと高電力効率を実現している。また122Tバイト大容量モデル「Micron7600」も投入開始、推論型データセンターの設備増強とともに本格的な採用が見込まれる。キオクシアもPCl5.0対応の高速モデルが2025年秋より岩手県の北上工場(K2棟)で本格稼働、2026年度半ばには第10世代のサンプル出荷を計画するなど、300層超クラスの次世代品の投入が始まる予定。同じくPCIe Gen6対応製品の市場投入に向け、広帯域・大容量ストレージ(E3.Sフォームファクタ等)の提供ラインナップを強化する見通し。このように、27/3期後半にはNAND向けも本格回復してこよう。全体としてメモリバーンインソケットは5割弱の伸びが期待される。

バーンインロジック向けは26/3期にクアルコム向けの車載(ADASやセンサ)用の投資が一巡、クアルコム以外の伸び悩みが継続するため、車載向けは横ばい基調となろう。ただし、クアルコムは2026年に「エージェンティックAI(自律的にタスクをこなす生成AI)」を車内アシスタントや自動運転システムに深く統合するロードマップを推し進める計画で、27/3期後半には再度売上拡大が見込まれる。非車載ではSnapdragon W5 / W5+ Gen 2 (スマートウォッチ用)、Snapdragon XR2 Gen 2 / XR2+ Gen 2 (MR/VRヘッドセット用)、Snapdragon AR2 Gen 1 (軽量ARグラス用)などが緩やかに増加する見通し。
テストソケットも次世代スマホ向けで主力のクアルコムの拡大、アップル向けの伸びも期待される。加えてクアルコムがAIPC用に供給するテストソケットの拡大も期待される。クアルコムのPC向けチップは、単なるモバイル用チップの流用ではなく、独自設計されたCPUアーキテクチャを採用している。Snapdragon X シリーズとしてSnapdragon X Elite (ハイエンド向け)、Snapdragon X Plus (ミドル~普及帯向け)を投入、これらの心臓部には、買収したNuvia社の技術をベースに独自開発された「Qualcomm Oryon(オライオン) CPU」が搭載されている。このCPUは圧倒的なNPU性能(AIの推論処理に特化し、ニューラルネットワークに特化した性能)をもつ。具体的には性能指標としてTOPS(1秒間に1兆回の演算性能)がマイクロソフトの提唱する「Copilot+ PC」の要件(40 TOPS以上)をいち早くクリアする45TOPSを実現、デバイス側での生成AI処理をリードしている。このQualcomm Oryon CPUをスマートフォン(Snapdragon 8シリーズ)にも広げていく方向もあり、ハイエンドAIスマホ、AIPC向けのテストソケット拡大を推進する。さらに同社はクアルコムが提唱するデータセンターエッジ向けAI推論用のQualcomm Cloud AI 100のテストソケット受注を視野に入れている。現在、学習向けAIデータセンターではエヌビディアの独壇場であり、エヌビディア向けのテストソケットは台湾WIN WAYが圧倒的にシェアを持ち、そこに検査ピンとして特殊なバレル加工などが必要で、ヨコオが独占的に納入している。しかし推論型AIデータセンターにおいてはグーグルのTPUなどに代表されるAI推論向けの特定用途向け(ASIC)が加速度的に採用拡大している。同分野はエヌビディアGPU独特の検査ソケットではなく、従来のテストソケットで対応が可能であり、高周波対応のノウハウがある英スミスインターコネクト、韓国リノ工業(Leeno Industrial)などがテストソケットの競合企業として挙げられる。同社はまず既存最大ユーザーであるクアルコム向けのテストソケットから販路を広げる計画。なおクアルコムは、過去に汎用サーバー向けCPU(Centriq)の開発から撤退しており、現在のデータセンター戦略は「電力効率に優れたAI推論」に特化している。さらに同社はフル生産が続いているWIN-WAYの生産能力がエヌビディアの要求に追いつかない場合、セカンドベンダーとして特殊加工のテストソケット製作も可能とのこと。いずれにしても、テストソケットにおいても27/3期は25%程度の伸びが期待される。
全体を通じ、27/3期のテストソリューション事業は、メモリ向けの本格回復、テストソケットの継続的な拡大で30%程度の増収が期待される。利益においては収益性で同部門中最も低いバーンインメモリ向けの拡大、高採算のテストソケットの構成比が落ちるために、大幅増収ながら総利益の伸びはMIX悪化から増収率には達しないとみられるが、増収効果が大きく、営業利益率は更に高まろう。
CS事業では通信向け、とりわけデータセンター向けの伸長が本格化しよう。同社のデータセンター向けは大半がNVIDIA Israel(旧Mellanox)向けである。現在、NVIDIA向け800G対応ネットワークで実質的に NVIDIA Israelが独占的に納入している。これはQuantum-X800 InfiniBand、Spectrum-X Ethernet、ConnectX-8 SuperNIC など、いずれもMellanox起源の製品群の延長線上にあり、NVIDIA自身も800Gb/s世代の中核として位置づけている。このような中で、同社は800G対応で100%シェアを獲得している。しかも同社は25年12月に1.6T対応のCN176スタックタイプを拡充、次世代ルービン対応で1.6T仕様の製品投入が27/3期下半期には四半期ベースで3~4億円程度が上乗せされてくる見通しとしている。このため28/3期には1.6T対応がメインとなる見通し。さらにその後も3.2T対応の規格がソケット対応で可能となっているとのことで、本格化してくる。なおデータセンター内部に注目すると、IPトラフィック(一定時間内にネットワーク上で転送されるデータ量)の飛躍的な増大の要請から、ここ数年間でサーバーラックの上部まで光配線技術が導入され、電気配線から光配線へと一気に置き換わった。現在、メガデータセンターの消費電力の問題からデータセンター内通信に係わる電力削減のため、光通信の範囲がさらに拡大し、ラック間、ラック内の短距離データ転送にも光通信技術の導入が加速している。同社はデータセンターにおける高速化、高密度化のボトルネックになっていたASICと光トランシーバI/Oの距離を解決するために、Nubisと共同で業界初の垂直型OSFP(VLC)を発表、ASICと光トランシーバI/Oの距離を3~4インチ内に抑え込んだ。配線距離短縮×冷却効率向上で高密度化・低消費電力に寄与する提案型に対し、すでに複数ユーザーから高評価を得られている。なおNubis社は、AIワークロード向けに超高密度・低消費電力の光インターコネクト技術を開発する企業で、2025年にCienaによって買収された。Nubisの「XT1600」は、1.6Tbpsの帯域幅を持つコンパクトで業界最高密度を誇る光エンジンのため、データセンター内のAIサーバー間の通信高速化に大きく寄与している。通信キャリア網やクラウド・プロバイダー網向け光伝送システムで高いシェアを持つリーディングベンダーであるCienaの傘下となったNubisとの共同開発であり、デファクトスタンダード化するようなこととなれば、同社への収益寄与がさらに高まろう。

全体を通じ、27/3期はTS、CSともに収益上伸が見込まれ、連続最高益更新で収益上伸が期待される。
同社株価は11/5の26/3期増額修正、大幅増配発表で上伸、さらに2/4の再増額からジャンプアップし3/11には9640円の高値をつけたあと、全体相場下落もあり、8000円付近まで下落している。現在、26/3期会社修正予想EPS437.01円に対し、PER18.5倍はプライム電機平均27.9倍に対し割安、また類似事業を行うヨコオPER22.4倍、エンプラスの26.3倍、日本マイクロニクス28.6倍と比較しても割安感がある。今後、再増額修正が期待されること、さらに先端半導体、AIデータセンター関連銘柄として評価が高まるとみられ、ポジティブ継続とする。
(*図表については決算説明会資料、ニュースリリース、写真はHPなどから添付、チャートはヤフーから添付)



*エンプラス(6961)、ヨコオ(6800)、日本マイクロニクス6871)との比較
