ドイツ・ハンブルグで始まった国際自動車リサイクル会議(IARC)2日目のセッションの議題は、新ELV規則の下今後のELV管理がどのように行われていくのかに焦点が当てられた。
新ELV規則がもたらす大きな変化
ELV規則は、自動車の循環性を推進するツールとなる規則であり、自動車バリューチェーン全体において、この循環性への取り組みが必要となる。自動車OEMには、トレーサビリティ、原材料・炭素排出データ公開などをはじめとする情報収集が義務化され、これにはバリューチェン全体のプレーヤーの協調が不可欠となる。この「必要不可欠な協力体制」は、従来の自動車産業の構図に大きな変化をもたらすことになる。伝統的に自動車OEMと解体業者間のつながりは薄いと言われてきた。しかし、循環経済の時代において、2者間の密接なダイアローグと協力なしでは、自動車循環性の推進は不可能だと言われる。IARC会議は、自動車OEMと解体業者が本音で議論を交わせる貴重な場所でもある。
だが協調が必要と言われる一方で、現在欧州ではOEMによるELVの囲い込みが始まると同時に、解体業者を傘下に置き、ELVを管理しようとする動きも見られる。朝のセッションで登壇した仏・解体大手インドラのCEOカウフマン氏は、実際、解体業者とOEM間の緊張が高まっていることに触れた。特にフランスでは、自動車の拡大生産者責任制度(EPR)が強化され、これまで存在しなかった生産者責任者組織(PRO)が最近設立されたたことから、その傾向が強くなったようである。
ELV規則でもEPRが強化されることになっており、これまで曖昧だった生産者(自動車メーカー)に対するEPRにおける経済上の負担に関して複雑な料金の算出法も設定される。規制レベルではEPR制度の大きな改善が期待されているが、解体業者の懸念は拭われていない。OEMにとっても新しい料金制度は経済的な負担となることから、使用済自動車の在庫を自社で管理しようという動きがEU全体に広まりつつありことも否めない。またその反動として、少数派である解体大手が伝統的に小企業が多数を占める解体業者を買収する動きも見られる。新規則は、EUにおける使用済自動車管理のマッピングを変えることになるようだ。
循環性が柱に
自動車の循環経済への取り組みに関しても、現在横たわる様々な障壁や懸念がプレゼンテーションのなかで挙げられた。プラスチック再生材使用に関しては、自動車OEMの懸念は、十分な供給量に加えて自動車グレードの再生材が必要だという点だ。しかしプラスチックリサイクラー側は、再生材の生産は可能だが、問題はOEMによる需要だと主張する。バージン材が石油価格に左右されることも安定した二次市場の構築における障壁でもある。リサイクラーはOEMからの安定した需要が保証されるなら、設備投資やスケール化も可能だとする。
ELV規則下の再生材使用に関する目標値設定はプラスチックのみであるが、スチールやアルミおよびその他の金属についても近い将来目標値の導入が検討されることになっている。特にスチールとアルミについては、目標数値導入に向けた具体的なスケジュールが規制のなかで言及されている。こうした背景を鑑み、今回の会議では自動車に使用される二次スチールおよびグリーンスチールの生産プロジェクトなども紹介された。加えて、リサイクルと二次原料の使用を容易にするエコデザイン分野の重要性も強調された。
日本からはデンソー加藤氏が、自動車の精密解体ロボットプロジェクトBlue Rebirthの紹介を行った。2024年に日本政府の支援により発足した同プロジェクトは、AIを駆使した自動車解体の高度なオートメーション化を目指す。質の高いリサイクルには手解体が必要なのは目下の常識だが、手解体と同レベルの精密な作業を、手解体に必要な動きおよび作業員の思考をロボットに学習させることによって実現する。オートメーションプロセスには、解体から破砕・材料回収まで含まれ、顧客のニーズに沿ってラインは「モジュール式」で対応可能。同ソリューションは、国内での商業化は2028年、海外では2030年を見込んでいる。自動車リサイクルにおけるのロボット化の必要性は、ここ欧州でもかねてより議論されており、特にEV時代の到来に際し、必然的であると考えられている。一方で、非常に複雑な過程もある解体を一貫してオートメーション化するには様々な課題がる。デンソーのプロジェクトはこれを一挙に解決しようというもので、商業化が進めば、自動車リサイクルへの大きな貢献となるのではないか。
デンソーに加え、今回のIARCは日本からの登壇者が3人となり、過去最高となった。野村総研から樹世中氏が日本における日本政府が牽引するプロジェクトの紹介、RCWSからは佐藤勇氏による日本およびアジアにおけるEPRの現状を報告した。日本勢のプレゼンテーション詳細は追って報告する。
最後のセッションでは、仏・サン・セクリットから自動車由来のガラスのリサイクルに関するプレゼンテーションがあった。これまでガラスのリサイクル率は経済性の問題から非常に低かった。しかし、ガラスのリサイクルを促進するため、新規制の下では解体時の取り外し義務として自動車ガラスの70%を取り外すことが義務付けられている。
今年夏までには発効が予定されるELV規則への対応は実際には2年後となるが、多数の要件への対応は短期間では難しい。パネルディカッションの中で、仏シンクタンク・エルミン氏は、規制の適用に先駆けて、可能な限り「自主的」な取り組みを開始するべきだと述べた。
25回を迎えた国際自動車会議はステアリングコミッティー会長フランソワ氏の閉会挨拶でセッションは幕を閉じた。27日はEMR、Aurubis、TSR、 KIESOWの施設見学が予定されている。
By Y.SCAHNZ from Hamburg, Germany