新使用済自動車規則(ELVR)は多数の新要件を設定しており、対応が必要な自動車業界へ大きな影響を及ぼすことになる。規則発効を目前にした自動車OEMの反応は?欧州自動車工業会のVecchione氏は、Linkedinへのポストのなかで、自動車業界の規則に対するリアクションは大きく変化したと記した。新規則の焦点である自動車の循環性に関する議論はすでに終了し、今は実践段階に入り、その焦点は「意図」から「遂行」へ移っていることを強調した。IARCのセッションにおける登壇で同氏は、自動車業界の変化と規制要件の実践への準備状況について語った。その内容を2回に分けて報告する。
BMWグループ、ステランティス、フォルクスワーゲン・グループ、メルセデス・ベンツ、トヨタ、ボルボなど17社の主要自動車メーカーを代表する欧州自動車工業会(ACEA)は、新ELV規則の実効性確保に向けた主要なプレーヤーだ。
自動車産業は新ELV規則にどう対応していくのか
EUの新たな使用済み自動車規則(End‑of‑Life Vehicles Regulation, ELVR)は、自動車分野における循環性における大きな「転換点」となる規則である。 本規則は、設計段階から材料選定、使用済み段階での処理、EU域外への輸出管理に至るまで、車両ライフサイクルのあらゆる段階を対象とする調和的な枠組みを提供するものとなる。 欧州の乗用車・ヴァン・トラック・バスメーカーにとって、それは新たな事業機会であると同時に、高度なコンプライアンス対応を要する課題でもある。
循環性に向けた大きな一歩
ELVRは「EUにとって大きな一歩」と位置付けられており、これは何よりも、単一市場の機能に不可欠な、加盟国を横断する一貫した規則体系を初めて提供する点に由来する。 本規則は、各国ごとに異なるアプローチが併存してきたこれまでの状況を改め、統計上「行方不明」となる車両、違法解体、運用慣行の不整合、登録・報告システムのデジタル化の遅れといった長年の問題を解消することを狙いとしている。
重要なのは、ELVRが末端での処理要件を微修正するにとどまらず、車両ライフサイクル全体の設計を組み替えることである。 本規則は、車両の設計や材料の選択、使用済み段階での処理基準、使用済み車両の輸出条件などに新たなルールを導入する。 欧州委員会は、リサイクル性・回収性の算定および検証に関する新たな法的拘束力を持つ手法を採択する義務を負い、これによりEU全体で性能評価の共通基盤が提供されることとなる。
本規則の下で、自動車メーカーは再生材の使用を段階的に拡大することが求められる。まずプラスチックから始まり、その後鋼、アルミニウム、マグネシウムおよび重要原材料へと対象が広がることになっている。 特定の部品については、リユースやリサイクルを簡易化するため、取り外しが容易であることが求められる。 また、使用済み自動車は、従来存在していた抜け穴を塞ぐ、より厳格なルールの下で適切に回収・処理されなければならない。 さらに、バリューチェーン全体の透明性を高めるため、デジタル・ビークル・パスポートの導入も予定されている。
一定の循環性からの出発
ACEAは、自動車産業がゼロから出発するわけではないことを強調する。 車両に用いられる金属は既に非常に高い割合でリサイクルされており、欧州全域に確立された解体ネットワークと高い回収率が存在する。 産業界は国際解体情報システム(IDIS)を構築しており、これは車両の詳細な解体情報を提供する、全世界で統一された最初のプラットフォームとして、自動車産業を他分野に先行させている。
また、再生部品やリマニュファクチャリング部品の利用には長い歴史があり、これにより原材料需要の抑制と部品寿命の延長が図られてきた。 メーカーはすでに、電池規則、REACH規則、POPs規則、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)など、多数の環境・サステナビリティ関連規制の適用を受けており、高度なコンプライアンス経験を有している。 こうした経験は、ELVRの新要件を統合する上での強固な基盤となる。
産業界が評価するELVRの要素
規則においてメーカーが望んでいるのは、現実的なステップを踏んだ目標設定と、実務経験や技術進歩を踏まえて後日調整し得る見直し条項の設定である。 また、EU全体を統一する枠組みは、複数の加盟国で事業を展開する企業にとって、行政的な複雑性を低減し、公平な競争条件を確保するものとして評価されている。
重量車両(HDV)の段階的な対象化も重要である。 「フェーズド・アプローチ」をとることで、現時点で不足しているデータの収集が可能となり、過度な負担を回避しつつ、トラックやバスにもサーキュラリティの恩恵を拡大できる。 さらに、行方不明車両、走行不能な中古車の輸出、国境を越える情報交換をめぐる規定が強化されることで、違法解体とそれに伴う資源流出を抑制できると期待されている。
加えて、登録・報告システムのEU全域でのデジタル化・相互接続を含むデジタル化の重視も歓迎されている。 これらのツールは、デジタル・ビークル・パスポートの有効な運用を支えるとともに、当局や事業者に対する透明性を向上させるものとなる。
アーカイブ/Archive:2026年国際自動車リサイクル会議/International Automotive Recycling Congress (IARC) 2026