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阪和ベトナムのASEAN戦略:鉄鋼・資源・食品で事業を拡大

2026/05/22 18:28
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阪和ベトナムのASEAN戦略:鉄鋼・資源・食品で事業を拡大

IRuniverse取材チームは5月8日、「第3回中国金属リサイクル春季会議2026」に参加するため、ベトナム・ハノイに到着。8日はホテル到着後、阪和興業のベトナム・ハノイのオフィスを訪問し、阪和ベトナムのASEAN戦略やベトナム市場における鉄鋼・食品・資源分野での取り組みについてヒアリングを行った。

 

阪和興業のグローバル展開とベトナム事業の位置づけ

阪和興業は東京本社を中心に、単体で約1,800名、グループ連結で約6,000名を有する総合商社で、日本国内17拠点、海外44拠点を展開している。

同社は特にASEAN地域を重点市場として位置づけており、ベトナムには2005年に連絡事務所を開設。2011年にホーチミンをヘッドオフィスに現地法人を設立し、2012年にはハノイの拠点を支店化したという。ベトナム拠点は約80名体制で運営されており、そのうち約30名が鉄鋼関連業務に従事していることから、ベトナムにおける鉄鋼ビジネスの重要性がうかがえる。

阪和ベトナムにおいて、鉄鋼分野が売上の約半数を占める中核事業となる。一方、ベトナム国内における市場シェアでは食品分野、特に水産物事業の存在感が大きい。主にサーモン等を取り扱っており、特に銀鮭については ベトナム国内のマーケットの約30%のシェアを占めるという。これまで、ベトナムでは魚を生で食べる文化はなかったが、近年ブームになっており、特にサーモンが人気を博しているという。

加えて、エネルギー分野ではウッドチップやタイヤリサイクル事業、ケミカル分野、さらには小売向け生活資材(レジ袋等)まで幅広く展開しており、ベトナム市場における事業ポートフォリオは極めて多角化されている。

第3回中国金属リサイクル春季会議2026の会場であるJWマリオットホテルの晩餐会では、サーモンなどの海鮮が多く並んでおり、その人気ぶりが窺えた

 

ベトナムにおける外資系企業の競争構造

ベトナムは日系企業が多く進出している国として知られているが、実際の市場は韓国企業および中国系資本の存在感が非常に大きい。特に、韓国企業はSamsung ElectronicsやLG Electronicsを中心に早期から大型投資を実施してきた。かつては「ベトナムGDPの4割をSamsungが稼いでいる」と言われたほど、同国経済への影響力が大きかったとされる。

LGも大規模な生産拠点群を形成しており、現地では「LG村」と呼ばれるほどの産業集積を構築している。韓国企業は現地化戦略やサプライチェーン構築に長けており、ベトナム経済への浸透度が高い。

人口規模でも差は顕著であり、ベトナム在住の日本人が約1万6,000人であるのに対し、韓国系駐在員・関係者はその約10倍規模に達するとされる。さらに、中国系駐在員・関係者は韓国の10倍、日本の100倍となる約100万人規模になるという。中国系企業・投資家は短期ビザを繰り返し利用しながら現地ビジネスを実質的にコントロールするケースも多く、特にベトナム北部では中国資本のプレゼンスが急速に拡大している。

こうした状況下で、日本企業は品質・信用・長期関係構築を強みに競争しているが、価格競争力やスピード感では韓国・中国勢との厳しい競争に直面している。

 

ベトナム鉄鋼業界の構造変化

現在、ベトナムにおける高炉メーカーは実質的にHoa Phat、Formosa Ha Tinh Steelの2社に集約される。特に、Hoa Phatは100%ローカル資本企業でありながら、2025年売上規模は約9,000億円に達する 。会長はベトナム有数の富豪として知られ、同国財界でも強い影響力を持つ。

同社の現在の実質粗鋼生産能力は約950万トンで、日本の神戸製鋼所と同等以上規模にある。既に新設高炉2基を稼働させ、また2029年にはベトナム南部にも新設製鉄所の計画が発表されており、最終約2,000万トン規模となる見込みで、これはJFEスチールクラスに匹敵する水準となる。

背景には、ベトナム国内の旺盛な建設需要がある。インフラ整備や不動産開発需要が高水準で推移しており、Hoa Phatは現在もフル稼働状態が続いている。

阪和興業は、Hoa Phat向けにHBI(Hot Briquetted Iron:熱間成形還元鉄)などの鉄鋼原料を供給している。HBIは高品位な直接還元鉄であり、鉄スクラップとの併用によって燃料効率改善やCO2排出削減に寄与することから、Scope3排出量削減の観点でも注目されている。

ベトナムでは鉄スクラップ輸入にライセンス制度が導入されており、自社処理能力に応じた数量しか輸入申請できない。このため、単純なトレーディング目的での輸入は困難であり、実需を持つメーカーのみが輸入可能となっているという。スクラップ輸入には政府の許認可が必要であり、単純な売買目的ではなく、「自社工場で原料として使用する事業者」であることが重視される。輸入事業者には環境許可、保管設備、処理能力、不純物管理体制などが求められ、実際の設備能力に応じて輸入可能量も制限される。

特徴的なのは、輸入量が処理能力と連動している点である。例えば年間1万トンの処理能力を持つ事業者であれば、輸入可能量は概ね1万~1.2万トン程度に制限されるケースが多い。これは、過剰輸入や港湾でのスクラップ滞留、環境汚染リスクを防止する目的によるものだ。

このため、ベトナムでは単純なトレーディングモデルが成立しにくい。輸入したスクラップを単に転売するビジネスではなく、実際の処理設備や消費能力を持つ企業との連携が不可欠となる。実務上は、現地でライセンスを保有するリサイクル企業や製錬企業との協業、HSコード設計、不純物管理、水分率分析、環境当局との事前協議などが重要な要素となっている。結果として、ベトナム市場では「商流のみ」を担うトレーダーよりも、実際のリサイクル処理能力や製造機能を持つプレイヤーが優位となる構造が形成されている。

その点でもHoa Phat向けは圧倒的な処理能力を持ち、原料調達面でも優位性を確立している。

 

ベトナムの資源政策と外交戦略

ベトナムはアルミやレアメタル分野でも一定の資源ポテンシャルを持つ。

アルミ分野では高度加工産業がまだ十分に発展していないことから、UBC(アルミ缶スクラップ)などの半製品輸出が成立する数少ない市場となっている。

一方、タングステン等のレアメタルについては、過去に中国系資本による権益取得が進んだ反省から、現在は国家管理が大幅に強化されている。外資による鉱山権益取得は難しく、政府主導によるコントロールが徹底されている状況である。

外交面でベトナムは、日本・米国・韓国・中国・ロシア・インドなど各国と「包括的戦略パートナーシップ」を締結し、バランス外交を展開している。また、現政権下では汚職摘発が強化されており、従来型の非公式交渉が通用しにくくなっているとの指摘もある。日系企業にとっては、コンプライアンス対応や行政手続きの透明性確保がより重要となっている。

現在のベトナムは製造業集積と外資導入によって急速な経済成長を遂げている一方、自国独自のコア産業・技術の育成という課題を抱えている。

その中で、阪和興業は鉄鋼・食品・エネルギー・資源分野を横断する多角的事業モデルを通じ、ベトナム市場に深く根差した事業基盤を構築している。特に、脱炭素対応を見据えたHBI供給戦略や、ASEAN域内サプライチェーン構築は、今後の成長余地を示す重要な取り組みといえる。

今後は、ベトナムの産業高度化政策、外資規制、資源ナショナリズム、脱炭素政策などを踏まえながら、現地パートナーとの関係構築と安定供給体制の確保が、日系商社にとって重要な競争要因となるだろう。

 

 

 

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

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