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日本電線工業会、2026年度事業計画を発表 AI・再エネ・電力インフラ需要を背景に電線需要拡大へ

2026/06/05 21:02 FREE
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日本電線工業会、2026年度事業計画を発表 AI・再エネ・電力インフラ需要を背景に電線需要拡大へ

住友電工社長の井上治氏が会長に就任、理事・副会長を経て再び会長に

一般社団法人日本電線工業会は6月5日、コートヤード・マリオット銀座東武ホテルで第72回定時総会後の記者会見を開き、2026年度事業計画を発表した。2026年度は、生成AIの拡大に伴うデータセンター需要、再生可能エネルギー電源の拡大、電力系統の整備、自動車の電動化・高機能化などを背景に、電線・ケーブル需要の伸長が期待されるとした。

同日発表された2026年度の新役員体制では、住友電気工業代表取締役社長の井上治氏が会長に就任した。井上氏は令和2年6月にも同工業会会長を務めており、理事、副会長を経て、令和8年6月に再び会長に就いた。副会長には岡田直樹氏、岡田永信氏、石橋栄子氏が就任し、専務理事には横井清則氏、常務理事には中島安史氏が就いた。理事は26名、監事は2名となる。

国内銅電線需要は減少、光ケーブルはデータセンター需要で増加

2025年度の日本経済については、インバウンド需要の継続や大阪・関西万博の成功、企業業績の改善などを背景に、回復基調を維持したと分析した。日経平均株価が5万円を突破し、春闘の賃上げ率も5%超となるなど、デフレ脱却と正常化が進みつつあるとの認識を示した。

一方、国内の電線需要は、建設・電販部門における資材高騰や人手不足による工事遅延の影響を受けた。2025年度の銅電線需要は583千トンとなり、前年比2.0%減少した。50万トン台となるのは1968年度以来。一方、海外現地法人の銅電線出荷量は、コロナ前の2019年度比10%増の470千トンまで増加した。国内外を合わせた需要は1,000千トン規模を維持したものの、ピーク時の1990年度の1,200千トンからは約2割低い水準となっている。

光ケーブルについては、DX化やデータセンター需要を背景に、2025年度は前年比3.9%増の531万kmcとなった。外需は2024年8月に底を打って以降、前期比プラスを継続している。生成AIの拡大を背景に、世界的な通信需要の増加傾向は続いており、GAFAM等による海底通信ケーブル敷設も継続すると見込んだ。

2026年度は環境対応、中小企業支援、商慣習改善を重点に

2026年度の重点活動テーマには、環境問題への対応、中堅・中小企業の経営基盤強化、商慣習の改善、海外情勢および技術動向の把握を掲げた。

井上会長は記者会見および懇親会で、環境問題への対応について、電線業界のカーボンニュートラル行動計画で掲げる2030年度目標に言及した。CO2排出量を2030年度に2013年度比37.4%削減し、60.2万トンとする目標の達成に向け、化学物質規制や規格標準化などの技術課題にも対応しながら、電線産業全体の環境対応力向上につながる活動を推進していくと述べた。

また、政府の2050年カーボンニュートラル方針を踏まえ、温室効果ガスについては2030年度に2013年度比46%削減、さらに50%削減への挑戦、2050年カーボンニュートラル実現を見据えた取り組みを進める。技術検討事業では、RoHS指令、REACH規制、PFAS等の高懸念物質に関する動向調査を行い、会員企業へ情報提供する。また、会員企業がLCAでCO2排出量を算出できるよう、電線・ケーブルのLCA-CO2排出量算出ガイドラインの作成を進める。

中堅・中小企業への支援について、井上会長は「会員の約8割を占める中堅・中小企業の経営基盤強化支援は、工業会の重要な責任」と強調した。関係行政機関と緊密に連携し、外国人材を含む人材確保、教育・育成支援、製造現場における技術継承のための業界共通テキスト整備に取り組む方針を示した。さらに、電線総合技術センターとの協業による人材育成支援も進める。

人材面では、業界共通の新人向け教育テキストの作成や、技術研修会・セミナーの開催を通じ、技術継承と人材育成を支援する。外国人材制度については、育成就労制度および特定技能制度において、電線・ケーブル製造の業種追加が2026年1月に正式決定された。記者会見で井上会長は、2027年4月からの制度運用開始を目指し、会員企業の協力を得ながら育成就労評価試験のプレテストや試験問題作成を進めていると説明した。特定技能制度についても、2026年度中の運用開始を見据え、試験実施体制の整備、試験問題の検討、会員企業への制度周知を進める。

取引慣行の改善については、2015年度末に策定したガイドラインを活用し、取引適正化に向けた活動を継続する。価格転嫁や支払サイト短縮などについて関係省庁と連携しながら推進し、その効果を定量的に把握するため、会員企業へのアンケートも実施する方針だ。井上会長は、競争法コンプライアンスに十分配慮しつつ、持続可能な電線産業の構築に向けた環境整備に努めるとした。

規格整備、海外情勢把握、広報・出版事業も推進

技術・規格面では、JCS、JIS、IECなど国内外の規格制定・改正を進める。電線・ケーブル製品の安全性、利便性、品質評価方法の整備を通じ、需要家が用途に応じて適切な製品を選定できる環境づくりを図る。2026年度は、IEC 60364施工に対応した電線・ケーブル規格の改正や、JIS C 3010の改正規格発行への対応などを進める方針。

海外情勢については、米国の関税措置、為替動向、国際情勢の不安定化などにより、グローバル市場の先行きは不透明な状況が続くと指摘した。同工業会は、輸出入の実態把握、海外市場・電線産業の情報収集、海外日系電線メーカーの概況調査を行うほか、EPA、FTA、WTO交渉に関わる関税問題や安全保障貿易管理への対応について、関係行政機関との連携を強化する。井上会長は、欧州電線工業会との技術交流を通じ、欧州の電線業界や技術動向を把握し、国際規格の制定・改定にも対応していく考えを示した。

広報活動では、同工業会ウェブサイトの運営、報道機関への発表、パンフレット作成、「電線アンバサダー」の活動などを通じ、電線産業の社会的認知度向上を図る。特に、若年層の認知向上を目的に、「11月18日は電線の日」の浸透を図るイベントや、Instagramを中心としたSNS施策を実施する。2026年度もオフライン型イベントの開催を予定している。

出版事業では、「電線要覧」「日本電線工業会規格(JCS)」「技術資料」「電線の知識」「電線統計年報」などの出版を継続する。2025年7月から出版物の対面販売を取り止め、ウェブサイトからの申し込みに一本化した。2026年7月からは「日本電線工業会規格(JCS)」と「技術資料」について、外部委託によるPDF販売を開始する予定。

また、競争法コンプライアンスの徹底、品質保証体制の強化、会員企業との意見交換、関係団体との連携にも取り組む。表彰制度では、2024年度に創設した「日本電線工業会賞」、2025年度に創設した「委員会活動貢献賞」を継続する。同日には、第2回委員会活動貢献賞および第3回日本電線工業会賞の表彰式も行われ、受賞者に対し井上会長から賞状が、電線アンバサダーの石山蓮華氏から副賞が贈られた。

懇親会では経産省・畑田審議官が電線産業の重要性を強調

記者会見後の懇親会では、来賓を代表して経済産業省製造産業局の畑田裕之審議官が挨拶した。畑田氏は、電線産業について「電力分野にとどまらず、建設、通信、自動車などあらゆる産業を支える基礎素材であり、我が国の産業活動と国民生活を根底から支える重要な存在」と述べた。中東情勢をはじめとする国際情勢の不安定化に触れ、エネルギーや原材料の安定供給、価格転嫁、人材不足への対応を政府としても支援していく考えを示した。

さらに畑田氏は、外国人材に関して、育成就労制度および特定技能制度において「電線・ケーブル製造」のカテゴリーが新たに追加されたことに言及し、各社の生産体制の維持・強化につながることへの期待を表明した。

石山蓮華氏が第3期電線アンバサダーに就任

懇親会では、2023年度以降に入会した5社の紹介に加え、石山蓮華氏の第3期電線アンバサダー就任式も行われた。石山氏は、全国の工場取材を通じて感じた電線産業の魅力について語り、「一本一本の電線の背景には、会員企業の皆さま一人ひとりの日々の仕事がある」と述べた。AIの発展やデータセンター需要の拡大により電線産業の重要性が一段と高まる中、今後も現場の声を伝え、電線の魅力を広く発信していく意欲を示した。

電線産業の発展を通じ社会貢献へ

同工業会は、電線を電力・通信をはじめとする社会インフラを支える「血管および神経」と位置付ける一方、一般社会での業界認知度は必ずしも高くないと指摘した。2026年度は、会員サービスの維持・向上を図りながら、電線産業の存在感を高め、持続可能な社会の実現と日本経済の発展に貢献していく考えを示した。

井上会長は最後に、「電線産業の発展を通じて、広く社会に貢献するという基本理念に基づき、事業計画を推進していく」と述べ、関係者に対し忌憚のない意見と協力を呼びかけた。

なお、7月7日15時から住友電気工業東京本社において、井上会長の就任インタビューが予定されている。

(IRUNIVERSE AstridoJI)

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