先日公表された経済産業省による「サーキュラーパートナーズ(CPs)」の新しい推進体制を拝見して、一つ大きな変化があったことに気が付きました。それは、これまでそれぞれ活動してきたワーキンググループ(WG)の上位に「CE戦略推進コミッティ」が置かれ、CPs全体を統括する体制へと再編されたことです。
公表資料によると、このコミッティは単なる会議体ではありません。各WGの進捗を確認し、目指す姿とのギャップを整理したうえで、CPs全体として優先的に取り組むべき課題や方向性を議論する企画・調整機能を担うものと位置付けられています。また、WG同士の連携によって見えてきた課題についても集約し、CPs全体の戦略として整理してゆくことが期待されています。さらに年度末には総会を開催し、成果報告や次年度の方向性を共有することも予定されているようです。
私はこの方向性について、おおむね望ましいものであると評価しています。というのも、サーキュラーエコノミーという世界は、一つの企業、一つの業界だけで完成するものではないからです。資源を循環させるためには、素材メーカーも、製造業も、流通も、リサイクル事業者も、それぞれが異なる立場から参加しなければなりません。その意味で、個々のWGが成果を積み上げるだけではなく、それらを横断的につなぐ役割はこれまで以上に重要になってくると思います。
私自身、企業の皆様と技術開発や循環経済の仕事をご一緒していて強く感じることがあります。それは、「良い技術」があっても、それだけでは社会実装には至らないということです。
技術を生かすビジネスモデルが必要であり、それを支える制度が必要であり、さらに情報共有や標準化、評価指標まで含めて初めて市場が動き始めます。つまり個別最適だけではなく、全体最適を考える場が必要になるわけです。
そう考えると、今回コミッティが担う企画機能や調整機能は、まさにそのための役割なのだろうと思います。
一方で、少し気になる点もあります。組織は一般に大きくなればなるほど、調整そのものが目的になってしまうことがあります。本来は新しい価値を生み出すための議論だったはずが、「誰も反対しない結論」を探すことに時間を使うようになってしまうことは、どのような組織でも起こり得ることです。
サーキュラーエコノミーはまだ発展途上の分野です。だからこそ、多少意見がぶつかるくらいのほうが健全なのではないか、と私は思っています。たとえば製鉄一つをとっても、高炉と電炉の立場ではサーキュラーエコノミーへの期待も大きく異なります。
このように企業ごとに立場も違えば、業界ごとに課題も違います。情報流通を重視する企業もあれば、地域循環モデルを重視する企業もあるでしょう。標準化を急ぎたい企業もあれば、まずは実証を重ねたい企業もあります。それぞれに正しさがありますから、全員が最初から同じ方向を向くことはありません。
だからこそコミッティには、意見をまとめることだけではなく、多様な考え方を尊重しながら全体の方向性を示すリーダーシップが求められるのではないでしょうか。
もう一つ感じたのは、「誰が戦略を作るのか」という点です。もちろんコミッティは戦略を議論する場ですが、本当に重要なのは現場との距離感です。WGで日々活動している方々が感じている課題や、新しく生まれたアイデアが十分に吸い上げられなければ、どんなに立派な戦略も現実との間に段差が生まれてしまいます。
私はこれまで、「現場には現場にしか見えない景色がある」ということを何度も経験してきました。逆に言えば、その景色を戦略へと翻訳することが、コミッティの最も重要な仕事なのかもしれません。
さらに今後期待したいのは、WG同士から新しいプロジェクトが自然発生的に生まれることです。例えば情報流通と標準化が結び付けば、新しい認証制度につながるかもしれません。地域循環モデルと国際連携が結び付けば、日本発のビジネスモデルが海外へ展開される可能性もあります。異なる分野が交わるところには、新しい市場が生まれやすいというのは、これまで数多くの事例が示してきたところです。
そう考えると、今回の新体制は組織変更そのものに意味があるのではなく、新しい組み合わせを生み出すための土台づくりなのだと理解できます。
もちろん、この仕組みが成功するかどうかは、まだ誰にも分かりません。しかし、サーキュラーエコノミーが「個社の努力」から「社会全体の仕組み」へと進化していくためには、このような横断的なマネジメント機能は避けて通れない段階に来ているようにも感じます。
CPsがこれから目指すべき姿は、WGを管理する組織ではなく、多様なプレーヤーが安心して挑戦できる舞台を整える組織なのではないでしょうか。
今回の新体制が、その第一歩になることを期待するとともに、今後どのような成果が積み重ねられていくのかを、一人の実務家として楽しみに見守っていきたいと思っています。