REMAREの100%再生板材を手にする間瀬代表
廃プラスチックは、海洋汚染や温室効果ガスの排出など深刻な地球規模の課題といえる。また、処理方法の大前提が「焼却」となっていることもあり、資源循環の観点からもロスが大きく、早急な対応を求められている。廃棄プラスチックからできた100%再生板材のメーカーであるREMARE(リマーレ、愛知県名古屋市)の間瀬雅介代表に、廃プラ処理の現状や解決策などについて尋ねた。
現在、日本国内で排出される廃プラスチックの多くが直面している課題は、その処理方法の約60%が「焼却」に依存しているという現実である。間瀬雅介代表は、この背景には廃棄物の多くが複数の素材から構成される「複合プラスチック」であることが大きく影響していると指摘する。異なる素材が混ざり合った複合プラスチックは、分離して再利用するために多大なコストがかかり、経済的な合理性が保てないために焼却や埋め立てを選択せざるを得ない構造となっている。
こうした現状に対し、間瀬氏は日本国内の企業管理体制にもメスを入れる必要があると考えている。多くの企業において、プラスチックは「燃やすもの」という前提で管理されており、いかに効率的にRPF(固形燃料)化するか、あるいは単に処分するかという流度感でしか扱われてこなかった。特に大規模な組織では分業化が進んでいるため、自社からどのようなプラスチックが排出されているのかという詳細な把握すら、経営層やサステナブル推進部ができていないケースが少なくないと間瀬氏は分析する。
さらに、国際的な規制の動きも無視できない状況にある。欧州を中心にサーマルリサイクル(熱回収)をリサイクルとして認めない方針が加速しており、熱エネルギーへの変換に依存する日本の手法は限界を指摘され始めている。間瀬氏は、GHG(温室効果ガス)排出量の開示義務化やScope3の削減に向けた対応が迫られる中で、従来の「燃やす前提」の構造を抜本的に変えていくことが、現代の企業にとって避けては通れない経営課題であると強調した。
廃プラ処理問題への解決策―REMAREの100%再生板材

こうした困難な課題を解決するための一手として、REMAREはこれまで焼却するしかなかった複合プラスチックを、再び資源として循環させる独自の技術を開発した。その中核となるのが、融点の異なる材料を「加熱圧縮」によって一体成形する技術である。通常、融点が異なる樹脂を混ぜようとすると、融点が低いものが気化してしまったり、収縮率の違いから割れが生じたりといった成形上の大きな壁にぶつかるが、間瀬氏は独自の検証を重ねることで、これらを強固な板材へと変換することに成功したのである。
このプロセスを経て誕生する100%再生板材は、バージン材や着色用のマスターバッチを一切使用せず、廃棄プラスチックそのものの色や質感を活かした高い意匠性を備えている。間瀬氏はプラスチックを単なる「ゴミ」ではなく「エネルギーの塊」として捉えており、石油から作られたこの素材を安易に燃やすのではなく、建築資材や家具として活用することで、社会の中にエネルギーを「貯蔵」するという独自の概念を提唱している。
また、単なる素材提供に留まらない点も同社の特徴である。間瀬氏は、排出元企業の課題を可視化するためのDXツール「プラスチックストック」の提供を通じて、企業の資源循環を包括的に支援している。これは、企業が排出したプラスチックの組成データを集約し、同社の成形データと照合することで、最適なリサイクル手法や出口戦略を提示する仕組みである。排出物の現状把握からマテリアルリサイクルへの転換、そして実際の空間実装までを一気通貫でサポートすることで、一過性のCSR活動に終わらない持続可能なモデルの構築を目指していると間瀬氏は語る。
“出口”を創出するネットワークと実績

近年、再生材に対する市場の需要は確実な高まりを見せている。間瀬氏は、国際情勢の不安定化に伴う石油価格の変動や、各国の資源自給率向上の動きから、再生ペレットの価値が再認識されていると分析する。国内でも、特に建築・内装領域において「環境価値、デザイン性、加工性」を兼ね備えた素材へのニーズが急増しており、同社の再生板材はオフィスや商業施設などの空間づくりにおいて新しい選択肢として受け入れられている。
具体的な実績として同社が挙げたのは、ある自動車メーカーのサプライチェーンで発生する複合廃プラスチックを回収し、板材に再生して再びチェーン内に戻すという、新たなリサイクルインフラの構築プロジェクトである。また、製薬企業や食品メーカーから排出される、分離が困難なアルミ蒸着フィルムなどの包装資材を再生し、早稲田大学内の什器として実装する産学連携の取り組みも実施している。
間瀬氏は、自社の最大の強みを「出口を創出できること」だと断言する。単に素材を開発して終わりにするのではなく、設計士やデザイナーとの広範なネットワークを活かし、開発したマテリアルを実際のプロダクトや空間へと確実に落とし込んでいく。さらに、その結果としてどれだけのCO2排出量を削減できたか、リサイクル率がどれほど向上したかを数値化してフィードバックすることで、環境配慮が企業の利益構造や持続性と直結する仕組みを整えているのである。
再生プラの可能性を提案する展示会を開催―REMARE Plastic SUMMIT 2026

再生プラスチックを「代替品」ではなく、未来のスタンダード、すなわち「選ばれる素材」へと昇華させるための取り組みとして、間瀬氏は「REMARE Plastic SUMMIT」というカンファレンスを主宰している。2026年10月にコクヨの品川オフィス「THE CAMPUS」で開催される第2回展示会では、日本のものづくり企業7社と気鋭のデザイナーがタッグを組み、廃材のストーリーを汲み取った独創的なプロダクトを発表する予定である。
前回のデザイナー主導の場から一歩踏み出し、より「ビジネスパーソン」に向けた発信を強化。コクヨや三菱電機、デンソーといった大手企業が参画しており、業界や企業の垣根を超えてサーキュラーエコノミーの社会実装を共に模索する場となるという。自社だけでは解決が困難な廃プラの「出口」を、スタートアップであるREMAREや外部のクリエイター、あるいは参加企業同士の共創によって見出していくことが狙いだ。
リサイクルプラスチックは、熱履歴によって品質が不安定になりやすいという特性を持つが、はそれを「マテリアルとしての個性」としてポジティブに捉えている。天然の木材や石材が一点ごとに異なる表情を持つのと同様に、再生材にも固有の美しさがあると考えているからだ。この展示会を通じて、単なる環境配慮の枠を超えた、リサイクルマテリアル独自の価値と可能性を社会に広く提案していきたいという。
南極の海洋調査からの気づき
間瀬氏がこの革新的な事業を立ち上げるに至った背景には、前職である南極での海洋調査における経験が深く根ざしている。間瀬氏は当時、船の機関士としてエンジンルームの内部設計や保守に携わっていたが、南極という極限環境で、限られた資源とエネルギーをやりくりする生活を送る中で、いかにエネルギーを有効利用して目的を達成するかという「資源自給率」の概念を痛感したという。その視点で現代社会を見渡したとき、石油資源の有効利用や最適化が不十分であることに間瀬氏は強い問題意識を抱いた。地球という巨大な系において、最も身近にありながら大きな課題を抱えていたのがプラスチックであり、自身のエンジニアとしての技術をこの領域に転用すれば、未解決の社会課題を解決できるのではないかと考えたのが創業の原点である。
また、間瀬氏には「冒険家になりたい」という壮大な個人的夢があることも明かしている。その実現には莫大な資金が必要となるが、大きな夢を叶えるためには同時に社会の大きな課題を解決し、事業として成立させなければならないというのが間瀬氏の信念である。自身のリサーチと情熱、そして地球規模の資源循環という課題が重なり合った場所にあるのがREMAREという事業なのである。
間瀬氏が率いるREMAREの取り組みは、単なる廃プラスチックのリサイクルという枠を超え、企業の「経営課題」としての資源循環をデザインしている。廃プラスチックが「厄介なゴミ」ではなく、100年後の文化を形作る「価値ある資源」として選ばれる時代へ。REMAREが切り拓くその航路は、持続可能な社会の実現に向けた、確かな一歩となるに違いない。