Loading...

NPO法人日本環境倶楽部が開催する環境セミナーにて、経産省が「レアアース等重要鉱物の安定供給確保」について解説(前編)

2026/07/15 21:17
文字サイズ
NPO法人日本環境倶楽部が開催する環境セミナーにて、経産省が「レアアース等重要鉱物の安定供給確保」について解説(前編)

7月14日、特定非営利活動法人 日本環境倶楽部は環境セミナー「レアアース等重要鉱物の安定供給確保について」を開催。経済産業省 製造産業局 鉱物課の山本 真夢氏が講師を務めた。

前編である本報では、レアアースを取り巻く国際的な状況および日本と各国の取り組みについて紹介し、後編となる次報ではバッテリーメタルのリサイクルと銅資源確保および日本が進める重要鉱物戦略について紹介する。

重要鉱物が日本経済を支える理由

鉱物資源は自動車や家電、スマートフォン、半導体、発電設備など、あらゆる工業製品の原材料となる重要な資源である。日本の産業や国民生活を支える基盤であり、経済安全保障の観点からも重要性は年々高まっている。

日本で使用される鉱物資源には、鉄や銅、亜鉛などのベースメタルに加え、ニッケルやコバルト、リチウム、レアアースなどのレアメタル、さらには金や白金などの貴金属が含まれる。これらは鉱山から採掘された鉱石や、使用済み製品から回収されたリサイクル資源を原料として製錬され、さまざまな製品へと加工されている。しかし、日本は金を除く一次資源のほぼすべてを海外からの輸入に依存している。そのため、海外で供給障害や輸出規制が発生すれば、国内の製造業にも大きな影響が及ぶ構造となっている。特に、重要視されているのが「重要鉱物」である。これらは電気自動車のモーターや蓄電池、半導体、電子部品、生産工具など、グリーン化やデジタル化を支える先端産業に不可欠な資源である。

レアアースの需要は、世界的な脱炭素化やデジタル化の進展によって急増すると見込まれている。2040年にはリチウムの需要は現在の6倍以上、ニッケルは4倍以上、レアアースは2倍以上になるとの予測もあり、資源の確保競争はさらに激しくなると考えられている。こうした状況の中、単に資源を購入できればよい時代ではなく、安定して調達できる体制そのものを構築することが各国共通の課題となっている。

高まる中国依存リスクと輸出規制の影響

レアメタル・レアアース資源の最大の課題は、供給が特定国に集中していることである。特に、レアアースは採掘量の6割以上、製錬能力では約9割を中国が占めており、重希土類については、日本の輸入は実質的に中国へ100%依存している状況である。

そのほかの重要鉱物も偏在が顕著である。

・リチウム:採掘がオーストラリアとチリに集中し、製錬は中国が約6割を占める。

・コバルト:コンゴ民主共和国とオーストラリアで大半が採掘され、製錬では中国が約8割を占める。

・ニッケル:インドネシアとフィリピンで世界の約7割が採掘され、中国とロシアが製錬能力の約8割を占める。

また、アンチモンは中国とタジキスタン、タングステンは中国とベトナムに供給が集中している。このように採掘国と製錬国の偏在が進んでいるため、一国の政策変更が世界のサプライチェーン全体へ影響を及ぼすリスクが高い。その象徴が、近年の中国による輸出管理の強化である。

中国は2023年8月、ガリウムとゲルマニウムの輸出管理を開始した。その後も規制対象を拡大し、2025年4月には重希土7種類について輸出管理措置を実施した。さらに、2025年10月には中国産レアアースを微量でも含む製品の再輸出規制や、レアアース・電池の生産設備や材料、技術に関する輸出管理も発表した。現在は米中協議により一時停止されているものの、本規制は2026年11月から再開される予定となっている。加えて、2026年1月には日本向けのデュアルユース品目に対する輸出管理の強化も公表された。

これらの動きは重要鉱物が単なる資源ではなく、外交や安全保障上の戦略物資として扱われる時代に入ったことを示している。こうした状況を受け、日本政府は重要鉱物の安定供給を国家的課題と位置付け、総合的な対策を進めている。

具体的には海外資源権益の確保、国家備蓄の強化、省資源化や代替材料の開発、リサイクルの推進、・国産海洋資源の開発といった複数の政策を組み合わせ、供給リスクの低減を目指している。このように、単に輸入先を増やすだけではなく、資源開発から備蓄、リサイクルまで含めたサプライチェーン全体を強靱化することが、日本の産業競争力を維持するために不可欠となっている。

日本が進める重要鉱物の安定供給対策

重要鉱物を巡る供給リスクが高まる中、日本政府は資源の安定確保に向けた総合的な政策を進めている。その中心的な役割を担うのが、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)である。

日本の取り組みは、大きく二つの柱から成る。

一つは供給源の多角化である。中国など特定国への依存を減らすため、海外の鉱山開発や製錬事業へ出資し、新たな供給ルートを確保している。レアアースでは、JOGMECを通じてオーストラリアとフランスでプロジェクトを形成し、ガリウムについてもオーストラリアで新たな供給案件を支援している。これらは需要拡大や輸出規制への対応を見据え、民間企業による鉱山開発や製錬事業を後押しするものである。

もう一つの柱が国家備蓄の強化である。万が一、海外からの供給が途絶えた場合でも国内産業への影響を最小限に抑えるため、重要鉱物の備蓄量を拡充している。備蓄は市場価格の急騰や供給不足への緩衝材として機能し、国内サプライチェーンの安定に大きく寄与する。

また、省資源化や代替材料の研究開発、使用済み製品からのリサイクル促進、さらには海洋資源の開発なども進められており、資源確保を多面的に進める姿勢が特徴である。

国際連携で進む供給網強化と今後の展望

日本は資源外交にも積極的に取り組んでおり、その代表例がオーストラリアのライナス社との協力である。2011年には約200億円の出融資を行い、日本向けに年間最大9,000トンの軽希土供給体制を確保した。その後も2022年にはマウントウェルド鉱山の追加探鉱、2023年には約180億円を追加出資し、ジスプロシウムやテルビウムなど重希土類を生産する施設の拡張を進めている。

このプロジェクトは、中国以外では世界初となる重希土の一貫生産体制を実現するものであり、日本国内需要の約3割に相当する供給権の確保が期待されている。

さらに、フランスのCaremag SAS社が進める重希土精製事業に岩谷産業とJOGMECが参画した。日本政府は約1億ユーロを出資し、フランス政府も補助金や税制支援など約1億600万ユーロを投入している。この事業ではリサイクル磁石と鉱石の双方から重希土を精製し、日本需要の約2割を長期的に供給する計画である。日仏両国による象徴的な資源協力として注目されている。

アメリカの国内のレアアース開発企業に対しては、出資や融資、価格保証、磁石購入保証など大規模な金融支援を実施している。また、防衛向け備蓄の拡充や官民共同基金の設立も進めている。EUも2025年にサプライチェーン強靱化政策を公表し、JOGMECをモデルとした「欧州重要原材料センター」を2026年に設立する方針を示した。今後1年間で最大30億ユーロを動員し、代替供給源の形成を支援する計画である。

国際協力も一段と進展している。2025年には、G7にて重要鉱物サプライチェーン確保に関する首脳声明が発表され、単一供給国への依存度を2030年までに60%未満へ引き下げる目標が掲げられた。また、日米両国は「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」に基づき、鉱山開発や加工、リサイクル、備蓄、研究開発など幅広い分野で協力を進めている。共同ファクトシートでは、アメリカ国内の銅やレアアース事業に加え、オーストラリアでの日米豪共同プロジェクトなど具体的な案件も公表された。

重要鉱物は今後の脱炭素社会やデジタル社会を支える基盤である一方、その供給は地政学的な影響を受けやすい戦略物資でもある。日本は資源外交や国際協力、海外投資、国家備蓄、リサイクルなど多角的な取り組みを進め、安定したサプライチェーンの構築を目指している。今後も官民が連携しながら供給源の分散と強靱化を進めることが、日本の産業競争力と経済安全保障を支える重要な鍵となる。

 

 

後編へ続く

 

(IRuniverse Midori Fushimi)

Midori Fushimi

関連記事

新着記事

ランキング