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【台湾プラント視察ツアーDay2】TSUとTSRを訪問:世界トップクラスの電炉ダスト&スラグ・リサイクルの最前線

2026/07/31 12:27
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【台湾プラント視察ツアーDay2】TSUとTSRを訪問:世界トップクラスの電炉ダスト&スラグ・リサイクルの最前線

Day 1(7月29日)での台湾南部・高雄の老舗電炉メーカー「海光鋼鐵」とステンレスメーカー「唐榮鉄工」の製鋼現場レポートに続き本稿では台湾プラント視察ツアー「Day 2」の模様をお届けする。
【台湾プラント視察ツアーDay1】海光鋼鐵・唐栄鉄工に見る台湾電炉・ステンレス業界の現在

Day 2では、台湾唯一の電炉ダストリサイクル事業者であり、電炉ダスト・製鋼スラグの資源循環を担う中核企業であるTSU(Taiwan Steel Union Corporation/台灣鋼聯股份有限公司)と、そのグループ会社でスラグの高度リサイクルを手掛けるTSR(Taiwan Steel Resources/台鋼資源股份有限公司)を訪問した。

今回の視察ツアー実現のきっかけとなったのは、約1か月前に実施したTSU・TSRの董事長であるSean Lin氏へのオンラインインタビューである。台湾の電炉ダストリサイクル事業の現状や今後の展望について話を伺う中で、MIRU取材チームからの実際に現場を見させていただきたいとの要望に応えていただき、今回の視察が実現した。
関連記事:台湾唯一の電炉ダストリサイクル企業 TSU(台灣鋼聯) Sean Lin社長に聞く

■ 訪問先①:TSU 〜台湾No.1、世界第3位の電炉ダストリサイクル企業〜

午前中は、台湾最大の電炉ダストリサイクル企業であるTSU(Taiwan Steel Union Corporation:台湾鋼聯股份有限公司)を訪問した。
同社は、台湾の主要電炉メーカー12社が共同出資し、製鋼プロセスで発生する電炉ダスト(EAFD)の適正処理を通じて、大気・水質汚染などの環境負荷低減と資源循環の推進を目的として1999年に設立された企業である。電炉業界が共同で環境保全と社会的責任を果たすために設立した、世界でも先進的なリサイクル事業会社といえる。
現在、台湾国内で発生する電炉ダストの約90%を受け入れており、年間20万トンの処理能力を有する。単一工場としては世界第3位の電炉ダスト処理能力を誇る、世界有数のメガリサイクラーである。
創業以来、累計約290万トンの電炉ダストを回収・処理し、その中から約106万トンの粗酸化亜鉛(Crude Zinc Oxide)を回収・生産してきた実績を持つ。電炉ダストを有価資源へと転換する循環型ビジネスモデルを確立し、台湾における鉄鋼業の資源循環を支える中核企業として重要な役割を担っている。

会社概要を丁寧に説明する董事長Sean氏と日本ツアーメンバー

ーー高品位の粗酸化亜鉛を世界へ供給
TSUが生産する粗酸化亜鉛は、亜鉛含有率56%超という極めて高い品位を誇り、天然亜鉛鉱石に代わるリサイクル原料として世界の亜鉛製錬メーカーから高く評価されている。
生産量の約90%は海外へ輸出されており、最大の輸出先は日本である。さらにベルギーやポーランドなどの欧州、タイや韓国をはじめとするアジア各国にも供給され、TSUの粗酸化亜鉛は世界の亜鉛資源循環を支える重要なリサイクル原料として活用されている。一方、残り約10%は台湾国内向けに供給され、自動車用タイヤなどに使用される酸化亜鉛の原料として利用されている。
また、リサイクル工程で発生する回転窯(ロータリーキルン)スラグについても廃棄されることはない。TSUグループ会社であるTSRにおいて再資源化され、土木・建設分野のコンクリート骨材などとして有効利用されている。電炉ダストから亜鉛を回収するだけでなく、副産物まで無駄なく活用することで、100%資源循環を実現するゼロエミッション型リサイクルシステムを構築している点も、TSUグループの大きな特徴である(TSRについては後述)。

粗酸化亜鉛の在庫室で説明をする副総支配人Jackie氏と通訳するFSH(福晟行有限公司)のFoo氏

ーー徹底した環境対策と品質管理体制 ― 日本企業との共通する価値観
同社が掲げるスローガンは「道徳倫理を重んじた経営」である。電炉ダストの発生源である電炉メーカー自らが適正処理コストを負担し、リサイクルを実施するという「社会的責任(ESG・倫理観)」と「都市鉱山(Urban Mining)」の理念を体現している。
環境対策にも極めて厳格に取り組んでおり、100%の資源回収によるゼロエミッションと埋立処分ゼロを実現している。特筆すべきは、飛散しやすい粉末状の電炉ダストを扱うにもかかわらず、受入れから処理、製品化までの全工程を建屋内で完結させている点である。AIoTを活用した管理システムに加え、自動搬送設備や密閉配管を採用することで粉塵の飛散を徹底的に防止し、リアルタイム監視による高度な操業管理を行っている。実際に工場内では粉塵をほとんど感じることがなく、非常にクリーンな作業環境が維持されていた。
品質・環境管理においても、日本との共通点が多い。同社では台湾の有害廃棄物判定基準および製品基準(日本の環境省やバーゼル条約の考え方を概ね踏襲)に基づき、鉛、カドミウム、水銀、ヒ素、六価クロム、銅、バリウム、セレンなど八大重金属について、溶出量・含有量を厳格に管理している。また、現地経営陣との意見交換では、日本企業や日本人に対する深い敬意が繰り返し語られた。特に初代工場長は、日本企業の品質への徹底したこだわりに強い感銘を受け、工場設計や品質管理体制を構築する際にも日本企業を大いに参考にしたという。単なる技術面だけでなく、「品質を妥協しない姿勢」や「社会的責任を果たす経営」といった価値観にも強い共感があり、日本企業との間にはビジネスの根底にある倫理観を共有していることが印象的であった。

TSUで処理されている各種スラッジ・ダストなどのサンプル

■ 訪問先②:TSR 〜特許申請中の加圧蒸気技術でスラグを建材へ再生〜

昼食後、TSU(台湾鋼鐵)の製鋼工場に隣接するTSR(Taiwan Steel Resources/台鋼資源股份有限公司)を訪問した。TSRはTSU(Taiwan Steel Union Corporation:台湾鋼聯股份有限公司)が100%出資する子会社で、電炉メーカーから発生する鉄鋼スラグの回収・再資源化を主力事業としている。今回の視察では、電炉スラグを建設資材へと再生する最新技術や工場設備について説明を受けるとともに、実際の製造ラインを見学した。

ーー特許申請中の「高圧蒸気養生」が最大の見どころ
今回の視察で最も注目を集めたのが、TSR独自の高圧蒸気養生(オートクレーブ)によるスラグ安定化技術である。
電炉スラグ、特に還元スラグには、活性酸化カルシウム(CaO)や酸化マグネシウム(MgO)が含まれており、水分と反応すると膨張する性質がある。この膨張は道路舗装の波打ちやコンクリートの浮き・剥離などの原因となるため、建設資材として利用する上で最大の課題となってきた。
従来は散水しながら長期間屋外に堆積させる「自然エージング」が一般的であったが、広大な用地と長い処理期間を必要とし、品質にもばらつきが生じやすいという課題があった。
これに対しTSRでは、飽和蒸気圧による高温高圧環境でスラグを強制的に水和・固化させる独自プロセスを採用。残留膨張率を台湾の品質基準(0.5以下)まで低減し、短期間で安定した品質を実現している。
いわば、高圧水蒸気による人工的な「エージング処理」を施すことで、電炉スラグをコンクリートやセメント代替材として利用可能な建設資材へと生まれ変わらせる技術であり、この加圧蒸気プロセスは現在特許を申請中とのことであった。
同工場は2018年に建設を開始し、2019年10月から本格稼働。当初は3ラインで操業を開始したが、需要増加を受けて2021年に2ラインを増設し、現在では5ライン・年間約17万トンの安定化処理能力を有している。また、年間約20立方メートル規模の生コンクリート試作設備も備え、新たな用途開発にも取り組んでいる。

TSR 総経理(最高経営責任者) 蔡文博氏

ーー自動化と省エネを両立した最新プラント
工場内はTSU同様、全工程が屋内化されており、破砕、磁選、ふるい分け、蒸気養生、保管まで一貫して建屋内で行われている。粉じんの飛散を防止するとともに、天候に左右されない安定操業を実現していた。
印象的だったのは、その高い自動化レベルである。建屋や設備への初期投資は大きいものの、自動搬送やPLCによる集中制御を導入することで、プラント全体をわずか2名で運転できる体制を構築している。これは人件費削減だけでなく、近年深刻化する人手不足への有効な対応策にもなっている。
一方で、完全無人化にはせず、危険防止や最終確認のためには制御室での監視と現場確認を組み合わせる運用としており、安全性と生産性を両立させている点も印象的だった。

鉄鋼スラグに加圧蒸気を加える加える工程の施設

ーー建設資材として用途を拡大
安定化処理されたスラグは、主に台湾国内のインフラ・建設市場で利用されている。
代表的な用途は、CLSM(Controlled Low Strength Material:制御性低強度材料)である。これは配管埋め戻しや狭隘部の充填材として使用される流動性の高い材料で、将来的な再掘削を考慮した適度な強度設計が特徴となっている。
また、非構造用コンクリートや埋め戻し材としても活用され、スラグ特有の高い比重(土砂:約1.5~1.6に対し約2.2~2.3)を活かし、重量が求められる基礎材や転倒防止用途にも採用されている。
さらに、同社製品は台湾内政部建築研究所の「グリーン建材認証(緑建材標章)」を取得しており、2024年には公共建築物の基礎・地盤材料として正式採用された。
従来は処分対象とされてきた電炉スラグを、高付加価値な建設資材へと転換するTSRの取り組みは、循環型社会の実現に向けた台湾の先進事例として大いに注目される。特に、CLSMなど新たな用途開発を積極的に進める姿勢からは、「廃棄物を資源へ変える」という循環型産業の将来像が強く感じられた。

■ 視察を終えて:「資源有限創意無限!」

視察の最後、来客者が記帳するメッセージノートに、日本を代表してMIRUの棚町社長が一言コメントを残した。日本人としての執筆者は、なんと今回が初めてだという。
記した言葉は「資源有限創意無限!(資源は有限、創意は無限!)」。
台湾リサイクル産業の最前線で、環境への高い倫理観と飽くなき技術探求を目の当たりにし、まさにこの言葉を体現する現場であったと実感した。
謝謝大家!

TSUの董事長Sean氏(左)と来客用記念ノートにメッセージを残した棚町社長(右)


 【アーカイブ】台湾鉄鋼・リサイクル産業視察ツアー

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