MIRUはスペイン・マラガで開催されたBIR世界リサイクリング大会の展示会場を訪れた。今回は、中国の黄銅棒メーカーである台州新宇銅業有限公司(Taizhou Xinyu Copper Co., Ltd.)を紹介する。同社は国際取引ではShiny Copperの名称を使用し、欧州からリサイクル黄銅や銅スクラップを購入している。MIRUは同社代表の息子で、ゼネラルマネージャーを務めるBen Wu氏に、同社の事業と、中国の買い手から見た銅市場について話を聞いた。
Shiny Copperは家族経営の企業だ。Wu氏によると、父親が20代でこの業界に入って以来、家族は約30年にわたり同分野で事業を続けてきた。同社は黄銅や銅のスクラップを購入し、中国国内の鋳造工場で欧州規格に準拠した黄銅棒を生産している。生産品の大半を欧州に輸出しているため、原料も欧州から調達している。
欧州市場に注力するため、Wu氏はラトビアに法人を設立した。外国人による会社設立に有利な政策が、同国を選んだ理由だという。同グループはタイにも鋳造工場を運営している。
BIR参加の目的は、スクラップヤードとの直接取引
Wu氏は、BIRへの参加で最も重視しているのは、スクラップヤードやサプライヤーと直接的な関係を築くことだと語った。同社は毎日原料を必要としているが、取引相手のことをよく知らない商社から購入すると、品質が安定しないという。
そのため、業界イベントでサプライヤーと面会し、実際にスクラップヤードを訪問して品質を確認したうえで、取引を開始するのが同氏の基本的なやり方だ。それでも、リサイクル黄銅や銅が低品質の状態で届くことはあり、対応が難しいと話した。
EUの廃棄物輸出規制、影響は限定的か
EUが廃棄物の輸出規制を強化していることについて、Wu氏は、主な影響を受けるのは廃棄物だと指摘した。同社が購入しているのは廃棄物ではなく、廃棄物としての規制対象から外れた原料(end-of-waste material)であるため、現時点では影響は限定的だと考えている。
ただし、タイの鋳造工場では廃棄物に分類される原料も購入しているため、規制が欧州のサプライヤーにとって問題になる可能性はある。また、同社は米国にもサプライヤーを持っているが、今後政策がどのように展開するかは、まだ判断できないと述べた。
輸出規制への対応、EU域内の問題と捉える
規制による障壁が中国の買い手に悪影響を及ぼす可能性について尋ねると、Wu氏は、問題は同社よりもEU域内にあると考えていると答えた。
欧州で直接購入できなくなった場合でも、寧波の商社から調達する方法があるという。こうした商社は、欧州由来の原料を取り扱っており、その多くはすでに通関手続きを済ませている。
Wu氏は、輸出を希望する欧州のスクラップヤードは、原料の品質を向上させる必要があると指摘した。輸出できなくなった場合、EU域内だけでそれほど大量の黄銅や銅を消費できるのか、同氏は疑問を呈した。また、低品質の原料が問題になり始めれば、欧州市場そのものも変化する可能性があると付け加えた。
米中貿易摩擦を教訓に、タイ工場を設立
Wu氏は、企業が市場環境の変化に適応した過去の事例として、2018~2019年を挙げた。当時は米中間の緊張により、米国産原料が中国に流入しなくなり、中国もリサイクル原料を全面的には輸入していなかった。
同社はこの状況に対応するため、タイに鋳造工場を設立した。同工場は世界各地から原料を購入し、黄銅棒を生産して中国に出荷している。
第三国を経由する新たな調達ルートが再び生まれる可能性について、Wu氏は、その可能性はあるものの、現時点では何とも言えないと述べた。
スペイン産スクラップの存在感が拡大
中国の税関統計をまとめるSMMによると、中国のスペイン産銅スクラップ輸入量は9月に1万3,700トンとなり、前年同月比110.74%増加した。
Wu氏によると、同社もスペイン産原料を大量に使用している。その背景には、スペインの人件費が比較的安く、スクラップヤードで原料をある程度選別・清浄化できることがあるという。
ただし、同氏は欧州産スクラップが全般的に他地域より競争力が高いとは考えていない。鋳造工場によって米国産、日本産、欧州産のどの黄銅を好むかは異なり、スクラップの処理能力によっても適した原料は変わると説明した。同社が生産する欧州規格の製品には、欧州産原料がより適しているという。
中国国内では銅スクラップの供給が逼迫
中国全体でも、銅スクラップの供給は逼迫している。SMMによると、中国の9月の銅スクラップ輸入量は、金属含有量ベースで23万6,600トンとなり、前年同月比28.54%増加した。
Wu氏は、銅の重要性が高まるなか、誰もが銅を求めていると指摘した。品質が許容範囲内であれば調達上の問題はないと見ている一方、今後は低品質の原料が課題になると予想している。
銅価格の上昇がサプライチェーン全体を圧迫
もう一つの圧力となっているのが価格だ。LME現物銅価格は10月23日、1トン当たり1万4,415ドルで取引を終えた。
Wu氏によると、価格上昇は大きく、同じ予算で購入できる原料の量は明らかに減っている。一方で、利益率は価格上昇に追いついていない。中国製品の販売価格に対して欧州産原料が高すぎる場合、利益が失われることもあるという。
同氏は、この問題はサプライチェーン全体に及んでいると説明した。同社の顧客はバルブや継手のメーカーであり、注文を受けた時点で販売価格を固定する。そのため、LME価格が上昇しても製品価格に転嫁できず、高値で原料を購入することも難しい。
その結果、価格上昇による圧力が徐々にスクラップの購入を抑制しているという。顧客が値上げを受け入れる限り、Shiny Copperもより高い価格で原料を購入できる。そうした状況のなか、同社は今後も欧州で安定的に取引できるサプライヤーを探し続ける方針だ。