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日本の産業未来図その④ 世界の命を救う「魔法の光」深紫外LED

2015.08.17 07:57

 深紫外線(Deep Ultraviolet: DUV)は200~350nmの短い波長を持つ紫外線の一種。

 今、深紫外領域でのDUV-LED実用化が複数の日本企業によって実現しつつある。

 具体的に紫外線はUV-A,UV-B,UV-Cに分類できる。UV-Aは地上に降りそそぐ光で、波長的には300nm~350nmの領域。UV-Bは280nm~300nmでオゾン層によって地上に降りてくる光の強度が変化する領域。そして地上に降り注がない280nmより短い領域をUV-Cと呼ぶ。

 

 青色LEDより短波長を発するDUV-LEDの実現には、大きなエネルギーバンドギャップを有するワイドギャップ半導体を用いる必要がある。具体的には直接遷移型の窒化物半導体AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)が使われるが、結晶成長させるのが難しく、高出力化の方法論も確立されずにいた。

 

図

 

 

 しかし2006年頃に理化学研究所が結晶成長構造で技術スルーを起こし、産学官の協力もあり先陣を切っていた米国の技術水準を追い抜いた。

 その後、問題とされた極めて低い光取出し効率と電子注入効率を向上させる為のアイデアが次々に出され、日本での実用化が進んだ。

 

 なお現在、DUV-LED はAlN(窒化アルミニウム)とGaN(窒化ガリウム)の混晶組成比を変えることで発光波長をDUV 領域のほぼ全域で連続的に変えることが可能で、UV-A、B、C全ての領域を出力できる。

 

 UV-Aでは樹脂硬化、接着、印刷、分析、光触媒と併用による空気清浄、UV-Bでは皮膚病治療やDNA解析などに利用が期待される。そして最も期待されているのがUV-C領域。

 

 この領域はオゾン層ですべて吸収されるため、ソーラーブラインド領域と呼ばれ、小型光源が開発されれば、殺菌から通信、医療など様々な分野で技術革新が期待される。中でも波長帯260nm~280nmはDNAを破壊する性質を持ち、殺菌、皮膚治療といった医療分野で注目度が高い。

 

 殺菌に最も効果的な260nm周辺DUV-LEDは薬品を使わず、環境にやさしい殺菌が手軽にでき、今後、飲料水や食品、空気など幅広い分野での使用が期待されている。特に発展途上国では、汚水処理施設の未整備による水の汚染が伝染病の蔓延の温床となっており、太陽光発電と組み合わせて利用すれば、泥水でも浄化して使えるなど、世界の命を救う「魔法の光」として期待が高まる。

 

 なお、従来紫外線殺菌などの用途では水銀ランプ(発行波長254nm)が広く用いられてきた。しかしガス光源は寿命が短く、発光波長がガスの輝線のみで限定され、水銀などの人体・環境に有害な物質を含み、光源サイズ、消費電力が大きく利用範囲は限定的だった。加えて2013年10月「水銀に関する水俣条約」が採択され、水銀などの人体・環境に有害な物質の削減・廃絶に向け、2020年以降、水銀を含む製品の輸出入が原則禁止される。

 

 このため既存のガス光源を置き換える新たな光源の開発実現が急務で、省スペース、省エネ、長寿命で電力コストも抑えられ、水銀フリーである深紫外LEDへの代替技術実現への要請が高まることも追い風となる。

 

 現在、日系企業でDUV-LEDの実用化発表が相次いでいる。

 具体的に 2014年11月、旭化成のグループ会社である米Crystal IS, Incが、富士支社内で、原料から一貫製造する窒化アルミニウム(AlN)の単結晶基板上に薄膜形成した構造の65mWを超える高輝度深紫外(250~280nm)LEDの初期量産ラインで生産を開始、水質検査・管理等に用いられる分析・計測機器向けの深紫外LED「Optan」を発売した。

 同社では水や空気の殺菌等に効果のある製品開発も進める。

 

 また日機装は、青色LED開発でノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇氏と天野浩氏の指導のもと、約10年にわたって深紫外LEDを研究、2014年10月に石川県白山市で初期量産を始め、2015年5月には検査装置用に加え、殺菌や樹脂の硬化にも使える製品の本格量産(年産100万個目標)をスタートさせた。現在255nm~350nmをカバー、ニーズの多い265nm、280nm、300nmを標準品として提供している。

 

 さらにトクヤマは2015年4月、情報通信研究機構(NICT)と共同で最も殺菌性の高い波長265nmで世界最高出力となる90mW超のAlGaN系深紫外LED開発に成功した。AlGaNでの光取出し効率が極めて低い問題に対して、光取出し面のAlN基板表面に2次元フォトニック結晶とサブ波長ナノ構造とを組み合わせたハイブリッド光取出し構造を作製、全反射を抑制し光取出し効率の向上に成功した。

 

 用途は既存光源市場の置き換えに加え、持ち運び可能なウィルス殺菌システムやポイントオブケア型の医療診断・分析など、様々な新規市場の創出も期待している。

 

 このほかパナソニックは理化学研究所と2007年から開発、2014年6月にはAlGaN深紫外LEDで10mW以上の出力で発光する殺菌効果のもっとも高い270nmUV-LEDモジュールを開発した。防滴仕様(IPX4相当)設計で、狭い空間や水まわりへの取り付けが可能で、小型家電製品のほか、住宅設備の水回り機器など向けに発売している。

 

 またDOWAエレクトロニクスは2015年3月に300nm帯LEDの実用化に成功、3,000時間を越す通電でもほぼ劣化せず、長寿命なLEDを商品化した。また200nm帯LEDも開発し、従来よりも高効率を実現。製造子会社のDOWA セミコンダクター秋田で一貫生産し、300nm帯LEDでは医療、光触媒などの用途、200nm帯LEDでは殺菌、分析、センサなどの用途を期待している。

 

 今後のDUV-LED 市場は、青色LED の歴史と同様の展開が見込まれる。

 青色LED は1993 年に商品化され、その効率は2000 年頃10 % を超え、その後70 % 以上に向上、効率向上に伴い2008〜2010 年頃までに照明用途として市場が大きく開花した。

 

 DUV-LED の効率は2010年に1 % 程度、2014 年現在では5 〜14 % 程度と急速に向上、今後、光取出し効率の向上とともに飛躍的な効率向上が期待される。また韓中台にマーケットを奪われつつある青色LEDと比べ,はるかに量産しにくく、材料開発や製造にブラックボックス的要素も多い。深紫外LEDの潜在市場は巨大で、水の浄化だけで5億ドルに達するといわれるが、従来に無い高効率なDUV小型光源の開発が実現されれば、巨大な市場潜在力から新産業が創出されることは間違いないだけに、今後の日本企業の活躍に期待が膨らむ。

 

(H.Mirai)

 

⇒ 産業未来図シリーズ

2015/07/31   日本の産業未来図その③ カーボンナノチューブの発展拡大がITO市場にも影響

2015/07/14   日本の産業未来図その② 注目高まる次世代パワー半導体

2015/06/26   日本の産業未来図 その① 水素社会の到来

 

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