2020年のオリンピックメダルを都市鉱山から NIMS原田幸明氏
原田氏は昨年の年末に行われたIRRSG例会においても2020年の東京オリンピックのメダルを都市鉱山から作るという試みを訴えていた。
そして2020年の東京オリンピック専門委員会における街作り持続可能委員会で、都市鉱山の活用における大会メダルの製造検討という文字を、中間報告書に入れることができたと話した。これにより、オリンピック組織委員会が東京オリンピックで使用するメダルは基本リサイクル由来のものを使おうという動きになっていると話した。これについて原田氏は大変喜ばしい報告を皆様にできたと話した。
過去のオリンピックメダルで使われた様々な材料
原田氏は、過去の大会でメダルを製造するに当たって、様々な原料が使われた事を説明した。
長野オリンピックでは漆と七宝を使用し、2008年の北京オリンピックでは、メダルにヒスイを埋め込んだ。そして2016年のリオ・オリンピックでは金銀銅に廃電子機器(E-SCRAP)由来の金銀銅を含有したメダルを製造するということも明かした(*しかしどのくらいの含有成分かは公表されていない)。先のロンドンオリンピックでは資源メジャーのリオティントが原料を供給したという。
またオリンピック、パラリンピックで必要なすべてのメダルに必要な材料の数量をロンドンオリンピックのデータで照らし合わせた数字を紹介。
ロンドンオリンピック、パラリンピックでの金銀銅メダルの合計がオリンピックで2010個、パラリンピックでは2032個が製造され、必要素材の量に換算すると、金は9.6kg、銀は1.210kg、銅は700kgが必要だと想定されるという。
この量を現在の日本の小型家電リサイクル法に基づくリサイクル量で比較すると、十分に賄えることを示した。2014年では小型家電リサイクルで回収された金が143k、銀が1566kg、銅が1,112トン。
原田氏によると、この中で必要数と比べ、銀が少しタイトだが、小型家電だけでなく銀のリサイクルで一番大きいものはX線フィルムであり、これらのすべてのリサイクル由来を含めた場合、銀は643トンがリサイクルされているので、ここもクリアできると話した。
原田氏はこうして集まったリサイクル由来の原料でメダルを製造するという工程に入る前に、どこがメダルを作るかという点にも言及。
基本的にメダルは造幣局が作るが、長野オリンピックのときは、デザインの関係もあり外部委託していたという。そして外部委託先が造幣局に完成したメダルを受け取り、メダルの品質保証をしてからオリンピック運営委員会に渡すという流れになる。その時、原材料としての金は入札で買い取るが、入札された金がリサイクル由来であるという説明が盛り込まれ、買い手側からどのような答えが返ってくるかが焦点になるという。
このように、原田氏が昨年末から今年初めにかけて、アピールしてきた、小型家電からメダルを作ろうという動きは、確実に近づいてきていると言える。
また原田氏は、これらの活動は、EUに対抗できるリサイクル認証を打ち出す機会であるとも語った。
原田氏が掲げた、家電からメダルを作るという動きは有言実行になりつつあり、日本のリサイクル技術が、2020年に大きなアピールされる可能性を生み出している。
(IRUNIVERSE Hatayama)
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