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損害車買取り大手のTAU(タウ)、市場価値の開きに着目し大きく伸長

写真 「事故車買取りのタウ」。CMなどで耳にしたことのある向きも多いのではないだろうか。株式会社タウ(TAU)(本社:埼玉県さいたま市)は、事故や災害などにより損傷を受けた車両の買取り企業としては国内最大手になる。損害車の価値最大化を標榜する、タウ。本社にて、代表取締役の宮本明岳社長にお話を伺った。

 

 

海外の旺盛な損害車需要に着目

 タウの事業内容は、大まかにいうと、自動車・トラック、自動車パーツ、オイルなどの買取り、販売、輸出、そしてオークション事業となる。創業は1996年8月。支店・営業所は北海道から沖縄まで25拠点にもおよび、ブリスベン(オーストラリア)、ウラジオストク(ロシア)、マニラ(フィリピン)など海外にも支店を持つ。従業員数は474名。

 

 創業の名誉会長 原田眞氏はもともと石油卸企業に勤務しており、1980年代、当時駐在していたアメリカやオーストラリアで盛んなレストア(修理)カルチャーに触れ、現在のビジネスモデルを発想したのだという。

 

 当時の日本では、古いクルマや壊れたクルマの処理は所有者が自己負担で行うことが当たり前だった。同氏は、このような日本と諸外国のクルマに対する価値観の差に着目、1996年、損害車の売買仲介を行う株式会社タウを創業した。1998年には、いち早くインターネットを導入し、国内および海外にも広く流通を拡げる、独自の販売サイトも構築。

 

 「壊れたクルマ、つまり損害車のリユースはクルマの寿命を伸ばすだけでなく、事故や風水害により被災した方々の経済的負担の軽減、またCO2の排出抑制や、修理に伴う雇用を創出するなど、非常に社会貢献性の高いビジネスなのです」。そう宮本社長は語る。

 

 しかし、その存在価値は、日本ではまだあまり知られていない。

 

 損害車はオセアニア、ロシア、南米での需要が特に高く、今後はその他の新興国でも需要の拡大が見込まれている。これらの国々では損害車を元の姿に修復し、再び「クルマ」として徹底的に再利用している。

 

 こうした市場に向け、損害車を「ネットオークション」により販売することで、その価値は最大化される。すなわち、損害車となってしまったクルマのオーナーに対して、最大の経済的還元を行うことができるのだ。

 

 現在では販売マーケットは110ヵ国以上に広がり、地球規模での「循環型社会」の実現を目指しているという同社。また、英語、ロシア語、スペイン語など17ヵ国に対応した言語や、時差を考慮した24時間販売体制を導入し、顧客満足の向上に努めているという。

 

 

不屈の10年があればこそ、いまの成功が

 2019年9月期に於けるタウの業績は売上高280億円強(見込み)。取扱い台数は約10万台になる。仕入れチャネルは、損保会社が36.2%、リース会社21.4%、カーディーラー19.7%、他となっている。

 

写真 「私は創業翌年の1997年に入社しましたが、当時は8名ほどの体制で営業していました。インターネットも早期から導入していましたが、まだまだ扱いの多くは対面での対応。損害車の売買となると、どこかしらイメージが悪いらしく、いぶかしい目で見られることも多かったですね」(宮本氏)

 

 例えば、保険金目当てでクルマを損害車にするなど、悪だくみをする業者も実在していた。そんなことから「損害車のディーラー」となると、カーディーラーはもちろん損保会社からも敬遠されたという。

 

 しかし、創業者の原田氏はあくまで前向き、開業から3年目の1999年には、名古屋、大阪に、2000年には福岡、広島、仙台にそれぞれ支店を開設している。その後もかなり早いペースで日本各地に支店を置いて行く。

 

 「攻めの営業で先行投資を積極的に進めましたが、数年間は赤字続き。しかし徐々に利益が出るようになり、負債の埋め合わせも進んでいきました。補填完了までに8年くらいはかかりましたね」(同氏)

 

 創業から10年もすると、確固とした信頼、つまり「タウ•ブランド」が構築され、各ディーラー、損保会社とも取引きが持てるようになったという。信念に基づき決してあきらめない姿勢。それが今日のタウを築き上げたのだ。

 

 現在では、インターネットで世界がつながりグローバルなオークションが展開されるようになった。創業時、原田氏が見込んだ通り、海外の旺盛な需要を取り込んで、損害車マーケットは活況を呈している。ディーラーであるタウだが、いまやポジションとしてはプロバイダー、あるいは持たざる経営を推し進めるプラットフォーマーでもある。

 

 

社内外に行き渡る、進取の気風と先見性

 タウはCSR活動についても積極的に取り組んでいる。現在、新興国は教育・食料・医療・健康など、さまざまなな社会課題を抱えているが、同社では事業で培ってきたリソースを活用し、学用品や子ども服、おもちゃなどの寄付をはじめとする支援活動を継続的に行っている。

 

 また、国内における活動としては、ターミナルケアを受けている人々を対象に、その方が希望する場所へ無料でお連れするボランティア活動「願いのくるま」を始めている。日本では前例のない取組みだが終末期医療におけるQOL向上への寄与を目指し、全社的に取組んでいる。

 

 さらに同社では「See You Again Project」も実施している。これは〝クルマの売却者〟と〝購入者〟の想いをつなぐプロジェクトで、クルマを売却する際に想いをメッセージカードに綴り、これをタウが購入者に届ける。それとともに、また購入者から返事を受け取り、売却者に渡すというものだ。

 

 「人にとって家とクルマは、特別思い入れの強い買い物だと思います。ですから、そうした愛着のあるモノへの想いを購入者に伝え、また次に利用する購入者の気持ちも、タウが責任を持って受け取ってくる。大切な愛車を手放すことになった方の心の痛み、そして日本車を手にする購入者の感謝・喜びの気持ちを共有することで、クルマの売買だけにとどまらない価値が生まれるものと思っています」(同氏)

 

photo タウでは従業員に対しても、経済的な豊かさのみならず、心の豊かさを実感できる職場環境の構築に努めている。性別、年齢、国籍、思想信条、肌の色、学歴、婚姻、障害の有無などによる一切の差別を行なわず、やりがいを持って働くことのできる環境づくりを推進しているという。

 

 事業においては「透明性」がなによりも大事、と語る宮本氏だが、過去の苦労話を聞くと、その重みに頷かざるを得ない。先見性に溢れる同社のアクションにこれからも注目だ。

 

 

(IRuniverse kaneshige)

 

 

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