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ドクターE 江守哲の投資必勝法 なぜ今、金を買うべきなのか? その1

2020.07.03 09:49

 私はこの数年間、「投資家は金を買うべきである」といい続けてきた。幸い、金価格はここにきて8年ぶりの高値圏に上昇してきた。今後も上昇が期待できる状況にあると考えているが、それ以上に重要なことは、「なぜ今、金を買うべきなのか?」ということである。そこには確固たる理由がある。

 

 

NY金相場の推移(USD/tryoz)10年

グラフ

 

 

NY原油相場の推移(USD/Barell)10年

グラフ

 

 

 まず、現状の金市場を解説しよう。金価格は7月1日に一時1788.96ドルまで上昇し、2012年10月以来の高値を付けた。金価格の史上最高値は、2011年9月につけた1930.30ドルだが、これも視野に入っている。

 

 また、2020年前半の主要資産の騰落率を見ると、金は17.4%上昇と、主要資産の中でトップの上昇率である。米国株も堅調なように見えるが、ハイテク株中心のナスダック総合指数の上昇率は12.1%であり、金を5%ポイントも下回っている。また、S&P500はマイナス4.0%、日経平均株価はマイナス5.8%であり、ダウ工業株30種平均に至っては9.6%のマイナスである。いかに金が突出して堅調に推移しているかがわかるだろう。ちなみに、原油も年初来では大きく下げており、WTI原油はマイナス36.7%、世界の原油市場の指標価格であるブレント原油はマイナス37.7%と落ち込んでいる。

 

 

*2020年の主要資産のパフォーマンス(6月30日まで)

グラフ

 

 

 今年の前半といえば、言うまでもなく新型コロナウイルスの影響で市場が大きく荒れた期間である。2月後半から株式市場は急激に変調をきたし、3月後半には安値を付けるなど、極めて短期間で株価は急落した。しかし、その後の「V字回復」も見事なもので、ナスダック指数は7月1日の市場で再び史上最高値を更新している。新型コロナにより経済活動が停止し、その影響が懸念される中で株価が売られたが、見事な戻り方である。しかし、それでも金価格の上昇には及ばないのである。これが「現実」である。

 

 

では、なぜ金価格はいまになって高値を付けてきているのだろうか。

 その背景には様々な要因がある。前述のように、新型コロナの影響による経済活動の停止や感染第2波への懸念から、金を安全資産として買う動きが強まったことが挙げられよう。また、経済の落ち込みや企業の資金繰りを支えるため、さらに雇用を守るために政府や中央銀行がきわめて短期間に大量の資金供給を行ったことで株価が戻したが、その一方で金利も低下し、これが金利のつかない金に恩恵をもたらしたといえる。つまり、投資家の不安心理と低金利という金融事象の両面で価格が押し上げられたといえるのである。

 

 このような背景もあり、投資家行動は明らかに変化してきているようである。前述のように、株式市場はコロナ危機を受けた暴落から急速に持ち直しているものの、世界の富裕層に投資助言するプライベートバンク(PB)は、投資家に金の持ち高をもっと増やすよう勧めているという。というのも、現在の株高基調が続くのか、さらにその株高を支えている世界の中央銀行による資金供給が今後も継続されるのかついて、懐疑的なためである。コロナ危機の以前は、大半のPBが顧客に推奨する金の保有比率はゼロか、ほんのわずかだった。筆者の知り合いのスイス在の富裕層向けのPBに以前、投資家に勧める金の保有比率を聞いたところ、「5%前後」という答えが返ってきた。当時筆者は「かなり少ない」という印象を持ったものである。というのも、筆者は金市場を20数年間見続けており、保有しておく意義を誰よりも理解していたからである。

 

 しかし、昨今の情勢の変化を受けて、一部のPBに変化が見られ始めているという。それらのPBは、顧客のポートフォリオの最大10%を金に向かわせているとのである。中銀の大規模な資金供給やそれに伴う債券利回りの低下により、金とともに安全資産といわれる債券のリターンが今後期待できなくなってきている。

 

 事実、今年前半の米国債のリターンは8.4%に達したが、それでも金を下回っている。金利の低下により、利息を生まない金の魅力が相対的に向上しているのである。また、PBの中には、中銀の資金供給が将来のインフレリスクにつながるとみているようである。インフレ率が高まれば、金以外の資産や通貨の価値が低下し、逆に金の価値が上昇することになる。この構図を理解しているからこそ、PBたちは富裕層に対して、金の保有量を増やすように勧めているのである。

 

 このような状況にあることは、当然のように富裕層も理解しているようで、PBは金についての顧客からの問い合わせが増えているという。あるPBは「以前であれば、金に資金を大きく動かすことを求める顧客はきわめて少なかった」とし、「実際にそのような行動に出ようとする顧客がいれば、やめるように助言していただろう」としている。

 

 しかし、PBによると、年配の顧客ほどインフレリスクの懸念が強い傾向があるようである。1970年代後半から80年代のインフレが悲惨な状況をもたらすことを理解しているからであろう。

 

 事実、金価格は1980年に1トロイオンス=835ドルまで上昇し、当時の最高値を付けている。ちなみに、この水準は2007年のコモディティバブルに影響され、金価格が高騰するまで史上最高値だったのである。それだけ当時はインフレが強く、その結果、金が買われていたのである。

 

 これらの顧客は、資産保全に強い関心を持っている。つまり、増やすよりも減らさないことに関心がある。そして、より長期的な視点でかつ歴史的な見地から投資を考えている。その結果、彼らが懸念するのは「インフレ」となるのである。現在の各国政府や主要中銀が行っている政策は、市場に大量の資金供給を行うものだが、この政策を最も大規模で行っているのは米国である。そのため、最終的にドルは下落すると考えられている。このような背景が、金価格を堅調に推移させることになる。

 

 このような富裕層が資金を金に移す際に、どのような方法で行うのだろうか。一般的に考えられる方法として、次の4つの選択肢が考えられる。

 

 ひとつ目は産金会社の株式の購入である。金価格が上昇すれば、産金会社の収益が増加し、それにより株価も上昇するという考え方である。しかし、この方法では、金価格が上昇しても、企業経営がうまくいかなければ株価の上昇が見込めず、思った収益を得られないリスクがある。

 

 2つ目は金の現物価格に連動する上場投資信託(ETF)を購入する方法である。多くの投資家はこの方法で金に投資をしている。この方法であれば、証券市場でいつでも金を疑似的に売買できる。この方法が富裕層にとって最も現実的な方法であろう。そのほかには、金の先物取引やオプション取引、さらに金地金や金貨などの現物への投資がある。しかし、利便性を考慮すれば、金ETFへの投資がもっとも現実的である。もっとも、PBには金地金を保管するサービスもある。事実、スイスやシンガポールでは、金地金の保管需要が高まっているようである。それだけ、富裕層が金を買っているということである。

 

 金ETFあるいはそれに類似した金融商品の残高は過去最高水準に積み上がっている。特に新型コロナウイルスの影響で市場が混乱した今年第1四半期の残高が急激に伸びている。これは、富裕層を含めた多くの投資家が、株式市場が混乱する中で金を買ったことを意味する。また、世界最大の金ETFである「SPDRゴールド・トラスト」の保有残高は、7月1日時点で1182.11トンとなり、2013年4月以来の高水準に達している。

 

 つまり、株価がV字回復に入った第2四半期以降も、投資家は金を購入し続けているのである。株式と債券の市場規模は合わせて最大200兆ドルと推定されているが、これらの資金の一部が金市場に流入すれば、相対的に市場規模が小さい金市場にとっては大きな影響が出る。つまり、金価格が上がりやすくなるということである。

 

 ちなみに、金市場の規模は推計で5兆ドルとみられており、資金流入その影響は大きいといわざるを得ない。

 

 

*金価格とSPDRゴールドの保有高の推移

グラフ

(SPDRゴールドは世界最大の金上場投資信託(ETF)の銘柄)

 

 

*S&P500と金上場投資信託(ETF)および類似商品への資金フローの推移

グラフ

 

 

 この傾向が続くことはほぼ間違いはないだろう。米国の金融政策をつかさどる米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、「2022年まで低金利政策を継続する」とし、将来において低金利状態を維持することをコミットしている。また、経済が悪化すれば、追加的な資金供給策の導入も辞さないとしている。このような後ろ盾がある中、金価格には上昇する材料が目白押しであり、売り材料が見当たらない状況にある。巨額の資金を保有する富裕層が資金を金に逃避させ始めたという事実は、金市場にとって新たな材料である。無論、この行為が金価格を押し上げることは言うまでもない。世界的に金への関心がこれまでにないほど高まっていることを理解し、いち早く行動に移した投資家だけが、今後の金価格の上昇の恩恵を受けることができるだろう。(その2に続く)

 

 

(ドクターE 江守哲 編集IRUNIVERSE YT)

 

 

 

図

 

 

 

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