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レアアース市場近況2021特別編 日立金属の最終的な去就が日本の希土類文化にも影響?

2021.05.12 18:58

 業界関係者周知のように日立製作所は4月末に米投資ファンドに日立金属を8000億円以上で売却した。

 

 日立金属には電線、特殊鋼、磁石などの事業があり、今後はセットで転売されるのか、事業ごとでの売却となるのかが注目されている。

 

→(関連記事)日立金属売却でベイン連合が優先交渉権、売却額8000億円超

 

 とりわけ、かつては日本のレアアース磁石業界をけん引した磁石事業の去就は

 「日本のレアアースの歴史、文化を守る意味でもきわめて重要だ」(レアアース業界関係筋)。

 

 日立製作所からすると、身もふたもない言い方をすれば、8000億円以上で売れたのだからあとはどうなろうと知ったことではない、となろうが、前述した日本のレアアース業界に長らく携わってきた方々からすると、安易な米ファンドの選択は日本のみならず米国にもその脅威は及ぶと警告している。

 

 

どういうことか?

 「例えば磁石研磨粉の処理、これは旧三徳の溶融塩電解設備があることで成り立っており、もしもこの研磨粉の処理を海外(たとえば中国)に委託するということになれば、この電解設備は不要となり、その時点で日本のレアアース文化が途絶えてしまう。経産省にはこの重要性を理解してもらいたい」と切に語る。

 

 旧三徳の敦賀の電解設備は研磨粉の処理のみならず酸化物を金属にするために使われている。例えば酸化ネオジムを金属ネオジムにするなど。

 

 実際、研磨粉のリサイクル処理はコストがかかる。電力コスト含めて。したがって信越はベトナムで、TDK、昭和電工は多くは海外にて処理されている、と聞く。したがって溶融塩電解設備を保有しているのは旧三徳の神戸と敦賀の2か所しかない。神戸はリサイクルのみ。

 

 米ファンドがどういう結論を導きだすのかわからないが、彼ら側とすれば「(買った日立金属が)高く売れればそれで良い」という発想であるため、別段中国が買うことになっても躊躇はしないだろう。経産省が止めるかどうかは別問題として。ファンドには日本のレアアース文化の継続には興味はないだろう。ゆえにコストのかかる研磨粉の処理は海外で、というシンプルな解に至る可能性は少なくない。

 

 また国内のレアアース業界関係者でも

 「日本のレアアース文化、情緒的には大事とは思うが、産業的にはもう終わっているので必要ないのでは?」

というスーパードライな意見もあることも記しておきたい。

 

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日立金属の磁石事業丸ごと売却は?

 「今のところ、国内外でどこも手を挙げていないようだ」

 

中国は興味あるのでは?

 「いや、もうすでに日本の技術は持ち得ているので今更買う気はないだろう。ロイヤリティを支払うことも馬鹿らしい、となるだろう」

とは希土類磁石ベテラン筋との一問一答。そう、中国ですら日立の磁石事業に興味をもっていない。

 

 最も良いのは日本国内の磁石企業、例えば信越やTDK、大同特殊、などが日立の磁石事業を取り込むのが日本的には最も美しい、と思われるが、単にメリットだけ考えれば、これは難しい。だからこそ日本のレアアース文化、歴史を守る、という観点でいえば国の差配が必要になってくる。

 

 レベルは違うが、台湾のTSMCを中国の半導体メーカーが買収する、となれば台湾政府は間違いなくそれを停止させるだろう。同じく米のマイクロソフトを中国企業が買収しようとしたら米政府も間違いなく止めにはいったうえで中国との貿易戦争は激化することになろう。

 

 日立金属の磁石事業はさまざまなヒストリーが重なっており、そこにはネオジム磁石発明者の佐川氏が在籍していた住友特殊金属も入っている。そしてレアアース黎明期から存在していた三徳の歴史も。。三徳も日立製作所に売却して3年で今のような事態になるとは予想もしなかっただろう。誠に経営者の判断というのは間違うと取り返しのつかないことになる反面教師的な好例である。

 

 もしも、三徳がそのまま単独で存続していれば、その企業価値と重要性はかなり大きくなっていたのではないか。レアアース流通の橋頭保としての存在。。

 

 が改めて問われるのは、やはり中国という希土類で圧倒的優位に立つ巨人がさらに強くなっていることがある。

 

 中国が今年1月に発表した貿易管理法および希土類管理法の草案は衝撃的であった。これはいまなお草案のままではあるが、ほぼ草案のまま実施されるはず。その内容は、きわめてシンプルにいうと、中国側が気に入らなければ希土類原料も製品も売りませんよ、といういわば伝家の宝刀。。

 

→(関連記事)レアアース市場近況2021#2 中国希土類管理強化、その裏で動きをみせるアフリカ大陸採掘地拡大

 

 この伝家の宝刀でキーになるのは希土類業界のビッグスターであるネオジム、ジスプロシウム、テルビウム、といったアイテムではなくサマリウムメタルだという指摘がある。

 

なぜに?

 「サマリウムメタルはいまや中国しか作っていない。かつては日本も酸化サマリウムから金属サマリウムを生産していたがコスト合わずで20年前にほぼ撤退。結果、中国のみとなり、全世界で年間1000トンほどあるサマリウムコバルト磁石のサマリウム原料はすべて中国。もしも中国がこのサマリウムの輸出を止める、となれば、はっきりいうと米の軍事産業はもたない。だから日米同盟の意味でも、いまのうちに日本は国防策としてサマリウムメタルの備蓄を行うべき」と希土類研究の第一人者は強く主張する。

 

 米国にもサマコバ磁石を生産している企業はあるが、原料はやはり中国から。。

 

 中国は現時点では、米中政府の睨みあいが続いているなかでもレアアースの貿易に関しては全く影響はないように見える。

 

 むしろ貿易量は増えているほど。米のレアアース鉱石を中国に輸出して同国で分離精製し、レアアース酸化物で米国に返す(中国からの輸出)量も、中国から米へのレアアース磁石輸出量もきわめて順調に推移している。

 

 中国の21年3月のレアアース鉱石(HS:25309020)輸入量は全量米国からで10,783トン。昨年9月は2240トンだった。

 

 また中国からのレアアース磁石の輸出量は21年3月がトータル3212トン、うち米国向けは411トンでドイツ向け(415トン)に次いで2位。昨年10月では合計3201トン、うち最大は米国向けで461トン、と磁石の貿易もきわめて安定している。

 

→(関連記事)2020年の中国希土類磁石輸出概況 前年比2%の微増

 

 しかしこれが米を油断させ、まったく問題ない、と安心させるための「恣意的な」微笑みレアアース外交ではないか?とスパイ小説的な見方をする関係者もいる。米もまだ中国のレアアース供給に頼らなければならないのが実情。豪ライナスとの共同プロジェクト(米テキサスでの)は進んでいるものの、もしもいきなり中国の供給が途絶えたらたちまち困るのは米国。米がひそかにレアアースや磁石を備蓄しているのなら問題ないが。

 

 そして米にサマコバ磁石を供給しているのは日本。日本もまたサマリウムメタルは中国から輸入。中国が日本へサマリウムメタルを輸出す際に含有する製品(つまりサマコバ磁石)を米国へ輸出することは禁ずる、などと条件付きとなれば日本もまた困窮する。だからこそサマリウムメタルの備蓄を!と呼びかける識者の方々がいる。

 

 「サマリウムメタルの備蓄なんか安いもの。今の相場なら2億もあれば10年分くらい備蓄できるはず。今のうちだ」と。

 

 サマリウムメタル相場は現在キロ当たり13ドル前後で推移している。

 

 

サマリウムメタル相場の推移(99.5%min USD/kg FOBChina)3年

グラフ

 

 

(IRUNIVERSE YT)

 

 

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