日本からのタングステン製錬後の棒板などの輸出は、2019年以降、輸出量全体が大きく減少したが、高品位なものに限って輸出が続きそうだ。そのため、輸出平均単価の上昇傾向が止まらない。また、今年1-5月の累計輸出量が5年ぶりに増加に転じた。
【1】タングステン棒板など輸出概況
2021年5月の日本のタングステン棒板などの輸出量は前月比1.7%減少の4.1トンだった。また、前年同月の実績とほぼ同じだったが、それでも僅かに下回り、3ヶ月連続のマイナスとなった。
それでも1-5月の同累計の輸出量は、22.4トン、前年比13.1%増加した。2016年をピークに毎年輸出量が減少してきた。特に2019年以降一段と輸出量が減り、昨年まで4年間、同累計輸出量は減少し続けていた。しかし、今年5年ぶりに増加に転じた。
またタングステン棒板などの輸出平均単価が急騰傾向にある。5月の同平均単価は、キロあたり3万9,001円、前月より5,020円高だつた。輸出量がピークだった2016年の同月の同単価が1万4千円台だったから、この5年間で2倍以上の高値になっている。
【2】タングステン棒板など輸出先
タングステン棒板などの最大輸出先は、やはり中国である。今年1-5月の累計を見ても輸出量全体の4割を中国向けが占めている。また、昨年からインド向けの輸出量が増え始めて、今年に入ると中国に次ぐ2位の輸出量にまで成長した。そのため昨年第2位の輸出量だった米国向けは4位に落ちた。
なお、2019年の同輸出量の減少は、中国向けの輸出が減ったことが大きい。ただ、2019年以降輸出量を減らし続けていた中国向けだが、今年は久々に増加に転じている。これが5年ぶりの同輸出量増加につながっている。
先ほども述べたように、2019年以降輸出量が特に大きく減ったが、それでも日本からのタングステンの棒板などの輸出は、高品位なもの、つまり単価が高いものを中心に継続している。それは、各輸出先の輸出平均単価の推移にも表れている。
特に2016年以降の輸出量が急激に減らした韓国向けの単価上昇が大きい。単価の高さでは、他の輸出先の値を1桁近く上回っている。
さらに最大輸出先である中国向けを見ても、緩やかながら同様の傾向が見られる。一方、昨年、今年と輸出量が急増したインド向けは、逆に安価なタングステン棒板の購入が増えているようだ。ちなみに5月はインドからの輸出がほとんどなかった。
5月のタングステン棒板などの主な輸出先と輸出量とキロあたりの輸出平均単価は以下の通りである。
韓国 0.1トン40万8千円
中国 2.5トン 3万5千円
台湾 0.3トン 2万1千円
タイ 0.1トン 1万6千円
フィリピン 0.3トン 1万5千円
米国 0.6トン 1万1千円
(K.AKIYAMA)