日本からのセレン輸出は、多くの輸出先において輸出量が減っている。しかし、インドだけは、別格で2021年7月の輸出量も前年同月実績を上回った。また、国内の輸出税関でも、門司からの輸出量が、これまで1位だった神戸の輸出量を上回った。
【1】セレン輸出概況
財務省貿易統計データによると、2021年7月の日本からのセレン輸出量は、前月比37.3%増加の71.7トンだった。4ヶ月ぶりの70トン台となった。また前年同月比52.8%増価し、4ヶ月ぶりにプラスに転じた。
7月の同輸出平均単価は、キロあたり1,781円、前月より610円安だった。3ヶ月ぶりに2千円を割り込んだ。
また今年1-7月の同累計輸出量は405トン、前年比2.1%減少した。1988年以降のセレンの輸出統計データで、過去最多の同累計輸出量だった昨年と同じように、今年も推移している。ただ、年間輸出量では2007年の668トンが最も多い。
【2】セレン輸出先
今年は、セレン輸出先の多くが、昨年よりも輸出量を減らしている。特に、昨年輸出量最多だった中国向けは、1-7月の累計を見る限り、昨年より4割減少ペースで推移している。また、セレンの輸出量が多い欧州のオランダ、英国、スペイン向けは、それぞれ昨年より減少している。同じ欧州だが、オランダなどの輸出量よりも少ないがドイツ向けは昨年の半分である。ベルギー向けだけは若干増加している。
大半の輸出先で輸出量が減少する中、インド向けだけは、7月も引き続き増加し、前年同月比5ヶ月連続のプラスとなっている。そのため、1-7月の累計輸出量のうち、3分の1がインド向けで占めている。
2021年7月のセレンの主な輸出先と輸出量とキロあたりの輸出平均単価は、以下の通りである。
韓国 1.0トン 2,144円
中国 12.6トン 1,510円
香港 11.2トン 1,285円
インド 23.1トン 2,219円
オランダ 7.7トン 1,512円
ベルギー 7.1トン 1,775円
スペイン 3.0トン 1.789円
【3】輸出税関別
税関別に見ると、輸出量の9割近くを神戸と門司で占めている。ただ、今年、神戸からの輸出量は減少傾向にあり、門司からの輸出量が増加していることから、1-7月の累計で見ると、ついに神戸と門司の輸出量が逆転した。2013年以降、神戸からの輸出量が他の税関を下回ったのは、初めてである。輸出平均単価は、門司の方が神戸よりも1割以上安く、この辺りも輸出量逆転の一因になっているのかも知れない。
2021年7月のセレンの主な輸出税関と輸出量とキロあたりの輸出平均単価は、以下の通りである。
神戸 27.2トン 1,883円
今治 7.2トン 944円
門司 36.9トン 1,558円
【セレン用途】
快削鋼としての金属添加、整流器などの電子部品、複写機の感光体や太陽光発電、顔料、ガラスなどの着色剤、健康食品と多岐にわたる。
(K.AKIYAMA)