Loading...

貿易統計ゲルマニウム輸入Report#3 中国からのゲルマニウム単結晶などの輸入増加

2021/09/14 15:15

 日本へのゲルマニウム輸入は、昨年に続き今年も中国依存の高い単結晶レンズや化合物など先端技術に使われる材料の輸入量が増加している。ただ、輸入平均単価は低く抑えられている。

 

 

グラフ【1】ゲルマニウム塊・粉・くずなどの輸入概況

 財務省貿易統計データによると、2021年7月の日本のゲルマニウム塊粉くずなどの輸入量は前月比14.6%増加の376キロだった。

 

 また7月の同輸入平均単価は、キロあたり10万3千円、前月より8千円安かった。引き続き10万円台を中心に小刻みに上下しながらも横這いが続いている。

 

 今年1-7月の同累計輸入量は2.7トン、前年比8.2%減少だった。2016年以来の少ない累計輸入量である。

 

 今年、米国からの輸入量が大きく減り、代わって中国からの輸入量が増えている。そのため、中国からの輸入量は、1-7月の累計で見ると、全体の8割以上を占めている。8割を超えるのは、2016年以降の過去5年間を見ても、2018年と昨年以外3回あった。

 

※注意※

 ここに示すゲルマニウムの塊・粉・くずの輸入には、それ以外の金属としてベリリウム、クロム、バナジウム、ガリウム、ハフニウム、インジウム、ニオブ、レニウム、タリウムも含まれている。

 

 

グラフ【2】二酸化ゲルマニウム輸入概況

 7月の二酸化ゲルマニウムの輸入量は、前月比67.6%減少の330キロだった。前月、今年1月以来の1トン超えとなったが、再び1トンを大きく下回っている。前年同月比76.8%減少し、今年1月から7ヶ月連続のマイナスとなっている。月によって輸入量が増減するため、あまり前年同月の実績値と比較は意味がなかったが、それでも7ヶ月連続のマイナスは、過去2014年の8ヶ月連続マイナス以来のことである。

 

 7月の同輸入平均単価は、キロあたり8万9千円、前月より1万2千円高だった。2019年10月以来の高値となった。ただ、2018年には、10万円を超えたこともあったから、まだ高値の域と言えない。

 

 今年1-7月の同累計輸入量は4.9トン、前年比52.0%減少した。昨年も僅かに前年の輸入量を下回ったが、それでもここまで輸入量が減ったことは、最近なかった。1988年以降、同累計量の過去最低記録は、2015年の7,6トンだった。今年は、6年ぶりに記録更新となったが、それにしても少なすぎる。

 

 日本の二酸化ゲルマニウムの最大輸入先はカナダで、今年も輸入量全体の3分の2近くを占めている。ただ、そのカナダからの輸入量が昨年の半分以下で推移している。

 

 今年、中国からの輸入量も全体の2割を占めており大きい。また、今年ロシアからの輸入量だけが昨年より増加し、輸入量全体の1割以上を占めている。

 

 一方、同輸入量の多い国内の輸入税関は、東京、成田、大阪、関西空港の4税関に分かれていることは前回も報告した。ただ、このうち、昨年よりも輸入量を増やしている税関はない。全て昨年より4割から6割減らしている。特に最大輸入税関の大阪の減少率が高い。

 

 

グラフ【3】ゲルマニウムその他もの輸入概況(化合物、ゲルマニウム単結晶レンズを含む)

 7月のゲルマニウムその他ものの輸入量は、前月比3.9倍増加の818キロだった。また前年同月比576%増加した。4ヶ月連続のプラスとなった。同輸入量は、増加基調を継続している。
 

 7月の輸入平均単価は、キロあたり16万9,688円、前月より1,743円安だった。今回、輸入量が増え始めた2019年以降で見ると、比較的安値である。

 

 今年1-7月の累計輸入量は、2.6トン、前年比137%増加した。これは、昨年の年間輸入量2.7トンにあと一歩のところまで迫ったことになる。また昨年以前の10年間の年間輸入量は既に超えている。

 

 ゲルマニウムその他ものの輸入は、中国依存度が非常に高い。2016年以降、毎年、同輸入量全体の9割以上が中国からのもので占められている。特に、今回輸入量が増加基調に転じた2019年以降は、毎年95%以上を中国からの輸入である。

 

 現在、中国からのゲルマニウムその他ものの輸入平均単価は、下落基調にある。昨年来、相場を上げることが好きな中国にしては、珍しく単価を上げない。昨年、今年と輸入量が増加していることから、中国の金属ゲルマニウム相場は上昇しており、今後、単価が上がるかもしれない。注目して行きたい。

 

 

(K.AKIYAMA)

 

 

関連記事

新着記事

ランキング