スマートエネルギーWeek 資源が限られる日本で、環境配慮型エネルギーシステムへの変換はできるのか?
3月16日(水)〜18日(金)にかけて、東京ビックサイトにてスマートエネルギーWeekが開催された。「国際水素・燃料電池店」「国際太陽光発電展」「国際二次電池展」をはじめとしたジャンルごとに9件の展示会が開催され、1,110社が出展した(2月9日時点での登録社数)。
主催者発表の来場者数は、3日間合計で41,751名に及んだ。報道関係者の来場も、計350名とのこと。世界的に環境配慮型のエネルギーシステムを再構築することが求められている中、この分野への関心が高いことが伺える結果である。
かつて菅総理が、2020年10月の臨時国会において「2050年カーボンニュートラル宣言」を行った。
温暖化対策の一環として、「我が国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル脱酸素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と、表明。
日本の目指すカーボンニュートラルはCO2だけに限定せず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む温室効果ガスを対象にするとしている。
温室効果ガスは排出そのものを完全にゼロにすることは難しいため、”排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計で、差し引きゼロにする”ことを目指す。
この、合計をするとゼロになる部分が、カーボンニュートラル(炭素を中立に)という意味だ。
ロシアのウクライナ侵攻により、EUはロシアの天然ガスへの依存を減らしグリーンシフトを進めることを公表。ロシアからの天然ガス輸入量を2021年の70%近くまで削減する見込みだ。
今後も国際的にさまざまなエネルギー資源の供給が不安定になる可能性が高いなか、日本も持続可能なエネルギー構造を国として模索していく事になる。
■各企業が実現化を目指す、二次電池・大型蓄電装置
企業各社が今後の構想として力を入れて展示していた機材のひとつが、発電後の電力を維持する装置だった。
この機器について、中国企業大手のGOTION(国軒高科) 日本研究所副所長に話を聞いた。
GOTIONはEV搭載用のリチウムイオン電池を独自に開発し、生産、販売するサプライヤーである。主力の事業はリチウム電池と、送配電設備の二部門。
リン酸鉄リチウム電池の国内シェアは第3位、パワーバッテリーの同シェアは5位に位置する企業で、今後は日本での展開を目指している、
日本市場における展開としては、現在開発しているパワーバッテリーや大型蓄電装置のシェアを得ていきたいとの意向であった。
各ブースを巡り担当者から話を聞くなかで、印象に残ったのは「どうやって、システムを設営する地元の理解を得ていくかが重要である」という内容だった。
世界的なムーブメントに背中を押されて、国や地方自治体、大企業の施策としてプランニングし物を作るまではできるだろう。
しかし設営する地元の共感が得られなければ、事業の継続が難しくなる。
エネルギー改革がいかに身近な問題であるか、個人やその子ども達の未来にとって重要な施策であるかを、どこまで理解してもらえるかにかかっている。
■日本で安定した電力維持は、本当に可能?停電リスクをどう捉えるのか
3月22日、東京都に「電力需要逼迫警報」が出された。
当日は季節外れの雪がちらつき、場所によっては咲き始めた桜と雪が同時に見られる例年に比べて気温が低い一日だった。
東京電力は電力供給の逼迫により、東北電力など7社から午前と午後の2回にわたり電力の融通を受けた。
東京電力管内の、1時間平均の電力使用率は以下。
09時台:97%
10時台:101%
11時台:103%
12時台:102%
13時台:106%
14時台:107%
15時台:98%
東京電力は揚水発電を併用して電力需要が多い時間をカバーしているが、最も電力使用量が多かった14時台の発電可能量は残り59%だった。
経団連からも加盟企業に「10%の電力削減要請」が出されたことにより、スカイツリー等の夜間ライトアップや一部商業施などで設看板等の点灯中止。デパートやコンビニエンスストアでの店内暖房や照明使用の抑制、製造業では使用電力を自家発電に切り替える動きも見られた。
一時は揚水発電の運転が停止する20時以降に、200 万〜300万軒規模に及ぶ大規模停電の可能性まで通知されたが、実際に停電には至らず21時頃には危機を回避した。
警報解除は翌日まで持ち越され、23日の11時頃ようやく解除となった。
今回の電力逼迫は3月16日に発生した福島県沖地震の影響で、火力発電所が停止している時期と急な冷え込みが重なったことで起きた。
しかしこれは今後、まさにカーボンニュートラルを目指していく中で、我々が直面せざるを得ない問題でもある。
四季があり起伏に富んだ地形で、島国のため電力融通のできる他国が存在しない日本において、ストックが難しい電力をクリーンな手法で作り続けることは至難の技だ。
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小松田久美 Komatsuda Kumi
ライター/PR・広報 (フリーランス)
ライター/KADOKAWA、日経BP、東洋経済新報社、朝日新聞などで執筆。
原稿作成、児童書の英→日翻訳アシスタントなどを担当。
PR・広報/プレスリリース発行や企業広報の代行を行い、ニュース番組やドラマのロケ地採用、女性誌、新聞、ビジネス誌への掲載を得る。
フィリピン/セブ・マニラに半年程、ほか台湾、韓国、タイに滞在経験あり。
コロナ禍が落ち着いた後は、日本とセブに拠点を構えての活動を検討中。
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