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新しい世代の環境リサイクル手法を考える 株式会社北浜化学

2022年6月17日、東京都江東区のプレゼンテーションルームにて株式会社北浜化学の赤阪 靖之氏が講演を行った。
今回は同氏の語られた内容を元に、プラスチックのリサイクル手法についての沿革を記述する。
 

今そこにあるプラスチック問題と産業構造


 現在我々が常日頃から使用しているプラスチック。
その成形のしやすさ、素材による様々な性質の付与、そして均一な製品を大量生産できるというメリットから多くの業態でプラスチック製品が使われている。
周りを見渡してもプラスチック製品が無いという世帯はほぼ無いのではないかというレベルで、日常生活に浸透している。


 そんなプラスチックは大量に生産される一方でその廃棄にはやや手間が掛かっている。
生分解性が低い材質である為、ポイ捨てや不法投棄等の小さな行為が環境に大きな悪影響を及ぼしている。
影響の大きさはWWFが近年盛んに提唱する、太平洋ゴミベルトという海域へのプラスチックの漂着とそれへの対応の呼びかけを見ても明らかである。
東南アジア諸国等でもプラスチックの投棄問題は深刻化しており、マイクロプラスチック化する前に回収しリサイクルを行う事が急務とされている。


 回収されたプラスチックは日本国内では主にサーマルリサイクルという形で、燃料として扱われている。
一方で素材の再生利用という形のマテリアルリサイクルや、化学原料として再利用するケミカルリサイクルでの利用は今ひとつ伸び悩んでいる。
これは焼却してしまう方が現状ローコストに済む事も一因ではあるが、プラスチック製品そのものが複合材料として多くの素材がコンタミネーションされた状態である為分離が難しいという点も挙げられる。
そしてサーマルリサイクルというやり方は、特に海外においては行われている地域もあるもののプラスチックリサイクルの手法としては低評価であるとされている。



 

 プラスチックそのものを何らかの素材としてリサイクルする形を模索するべく、株式会社北浜化学は一つの手法を体系化しようとしている。


廃プラスチック油化技術という温故知新


 株式会社北浜化学は大阪府大阪市に本社を置く企業である。
一般社団法人アップサイクルマーケティングという企業を前身とし、環境リサイクル事業を中核に据えている。
そんな同社が今回プレゼンテーションを行ったのが、小型熱分解装置「化神(かしん)」である。


 これは粉砕された廃プラスチック原料を撹拌機に投入、そこをバーナーで高温になるまで加熱・気化させる。
気化した成分を蒸溜し液化させ、それをまた加熱し蒸留させるといった工程を繰り返す事でどんどんと成分を分離・凝縮させていく。
こうして廃プラスチックから炭化水素油を抽出する事が出来るのである。



 

 このソリューションを実行するメリットとして、まず廃プラスチック類から第2石油類としての保管が可能な燃料が調達出来る事にある。
もともと様々な成分が混合された炭化水素油を更に成分ごとに分溜した結果、ほぼ第2石油類(灯油や重油など)のみを抽出する事が出来たのである。
この内第2石油類は消防法で定められた「少量危険物」としての数量が第1石油類の5倍(非水溶性1000リットル、水溶性2000リットル)と多く、リサイクルが軌道に乗った場合でも多量に保管する事が可能である。



 

 次に投入できる廃プラスチック原料についても、多くの原料に対応している取り回しの良さが挙げられる。
ポリエチレンテレフタラート(PET)についても粉砕後撹拌された段階で、気化した際に除去することが可能であるとされている。
また海洋プラスチックとして問題になっている漁網についても破砕処理後に投入し炭化水素油として抽出出来ているのだ。
漁網の処理に関しては非常に労力とコストが掛かる物であるため、特に港湾の漁業者にとっては朗報となる可能性は大きい。



 

 ところでこの廃プラスチック油化技術に関しては、昨今新しく研究されている技術ではない。
1970年代に発生した2度のオイルショック(石油危機)に直面した日本は、エネルギー資源の殆どを輸入に頼っているという脆弱性を露呈。
その問題点の解消手段として、この廃プラスチック油化技術が研究されたのである。
しかしその後石油価格の下落に伴い採算性の観点から研究への熱が冷めていき、2000年代に石油と環境問題の因果関係が取り沙汰されるまで注目が薄れていたのである。

 もちろん2000年代に入って研究が再度なされたものの、当時中国を中心に廃プラスチックの輸入が盛んとなった結果、油化技術の研究は廃プラスチックの輸出と比べてコストが掛かるとして見送られる事となってしまう。
これを鑑みれば、昔から検討され続けてきたものの日の目を見るタイミングにことごとく恵まれて来なかった技術と言える。
昨今の石油価格の高騰を切っ掛けに見直される可能性が出てきたのは、経済の妙味だろう。


 株式会社北浜化学の取り組む古くも新しいソリューション。あらゆる技術水準が高まった現代でこそ、この古い研究成果が花開く可能性が出てくるのかもしれない。

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

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