自動車資源回収の実証(主にNi)に係るニーズ例〜レアメタルリサイクル環境合同会社(後)
「自動車資源回収の実証(主にNi)に係るニーズ例〜レアメタルリサイクル環境合同会社(前)」からの続き。
レアメタルリサイクル環境合同会社 永渕弘人氏からの報告。
ロンドン金属取引所(LME)でのニッケル(1トン当たり)の3カ月先物取引価格の終値
・3月7日には、ニッケル1トン当たりの取引価格(終値)が4万8,078ドルまで急騰。LMEでは、翌8日から15日までニッケル取引を停止した。
・16日以降はニッケル取引を再開し、価格は落ち着きを見せてはている。
・それでも、4月25日の終値は3万2,636ドル。2022年の取引開始時(1月4日時点で2万1,137万ドル)に比べ約1.5倍の水準となっている。
・EVの需要拡大などを受けて従来も、ニッケルの取引価格は上昇傾向にあった。ただし、比較的緩やかな値動きあった。
ロンドン金属取引所(LME)でのニッケルの3カ月先物取引の終値推移をみると、2021年は1万5,000~2万ドル、2022年に入ってからは、2月中旬までは2万~2万5,000ドルの間で推移いていた。しかし、2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まると、天然ガスなどさまざまな品目について、欧米を中心とする多国が取引制限を含めた対ロシア経済制裁を科した。
ニッケルスクラップのからニッケルの回収について
ニッケルの用途は様々で、日常で使用されているニッケルでは、各種ステンレス始め、ニッケル含有合金、ニッケル電池関連およびニッケルメッキ等など数千種類スクラップがある。そのためニッケルスクラップも同数以上あり、全てのニッケルスクラップを回収出来るわけではない。よって、ニッケルリサイクルを行うには、ニッケルスクラップの選定が必要であり、その条件は以下のようになる。
ニッケルスクラップの回収条件
1,採算性の高いニッケルスクラップ。
2,定期購入可能なニッケルスクラップ。
3,工程が少なく作業しやすいニッケルスクラップ。
4,ニッケル以外の廃棄物の処理が可能で簡単なもの。
5,ニッケル以外の含有物に価値があり回収が可能なもの。
ニッケルスクラップからの回収例(前述5)〜〈ニッケル基超合金スクラップからレニウムをリサイクルする新技術の開発〉
ニッケル (Ni) 基超合金は、航空機のジェットエンジンや発電タービンなどに用いられており、高温強度を向上させるため、最新のNi基超合金にはレニウム (Re) やタンタル (Ta)、 タングステン (W) などのレアメタルが添加されている。現在、Ni基超硬合金からのニッケルや他のレアメタルの分離・回収は、主に湿式処理により行われているが、長時間で多段の工程を要し、多量の廃液が発生することが問題となっている。
本研究では、溶融金属を抽出剤として用いた高温乾式プロセスにより、NiとReを分離し、廃液を排出しない環境調和型の新しいリサイクルプロセスの開発を目指した。
ニッケルに対して化学的な親和力が大きい亜鉛 (Zn) を溶融金属として用いた結果、Ni基超硬合金スクラップからNiをZn-Ni合金として分離・回収し、ReやTa、Wなどの高価なレアメタルを残渣として濃縮することに成功した。また、得られたZn-Ni合金からZnを揮発分離した結果、高濃度のニッケルが得られた。ちなみみに価格比は、Ni:W:Ta:Re=1:4:20:200と他のメタルはニッケルよりも遥かに高付加価値で分離抽出できれば利益増となる。
上記例は、東京大学生産技術研究所レアメタル研究会で、Y研究員が博士号を取るための研究課題として、Ni基超硬合金からのレニウムの回収技術が世界中の文献を調査しても判明できなかったものを弊社K氏がアドバイスをして開発した内容になる。
繰り返しになるが、MLCCは今後、一層排出が増えると思われるがニッケル回収は現状ほとんど行われていない。使用済みEVからの排出品を始め、製造工程での不要材料なども、自社工場で焼結処理してしまっているケースも多い。こうしたものを回収し、なるべくコスト、GHG排出を抑えながらリサイクルしていく流れを構築すべく、弊社では努力している。
ニッケルスクラップからのニッケル回収はコストと品位の兼ね合い
MLCC用や電子部品からのニッケル回収はほとんど実施されていない。電池用で検討はなされているものの、現時点では、日本リサイクルセンターからの情報では電池からのニッケル等のレアメタルは大手製錬メーカーで始まっている。
レアメタルリサイクル環境では、大手製鉄メーカーとニッケルスクラップからの回収を試験計画立案中であるが、スクラップ市場も相場が上がっておりLMEプラスでなければ手に入らない。ニッケル品位の高いもの98%程度でも、かなり高くて手に入れられない。従って電子部品の工程スクラップや製品からの回収を強化していくことが、今後肝要になる。
自動車に数千個あるMLCC材はニッケル内部電極の多いため、見逃せないターゲットになる。に焦点を当てている。
(IRuniverse kaneshige)
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