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プラスチック諸問題解決に正答はない‥のか?⑥生分解性プラの光陰

プラスチック諸問題解決に正答はない‥のか?⑤欧州で増える都市ごみ焼却(ER)」からの続き。

 

 生分解性プラスチック。自然界で、微生物(バクテリア類)により分解され、多くは水とCO2になる。いま、海に漂うプラが大問題になっているが、これからも世界的に使用量が増えると考えられるプラスチックが、これ以上環境に対して負荷を与えないよう、その廃棄後、自然界で分解されるよう設計された素材だ。今回はこの素材界のニューカマー?に焦点を当てる。

 

 

植物由来バイオプラ≠生分解性プラ

 生分解性プラスチックは、ときにバイオプラスチックと呼称されたりするが、「バイオプラスチック」とは、植物(バイオ)から作った(原料とした)プラスチックと、前記の生分解性プラスチックの総称で「バイオ由来であれば自然界で分解する」ものでは決っしてないので、そこは留意が必要だ。さらに生分解性プラも、バイオ由来のもの、バイオ+石油由来、さらに石油のみを由来とするものがあり、少々分類は複雑だ。以下は、日本バイオプラスチック協会が公開している一覧表なので参照頂きたい。


http://www.jbpaweb.net/gp/

 

 

図

 

 

 今回は生分解性プラをテーマにするが、植物由来のバイオプラについて簡単に説明しておくと、これは主に石油(ナフサ)ではなく植物を原料にしたプラスチックをいう。植物(バイオマス)は、その育成過程でCO2を吸収するため、脱炭素において意味を持つ。バイオ燃料が同じ理由で引き合いが強いのと同じ理屈だ。

 

 このバイオマスプラの原料として代表的なものはトウモロコシやサトウキビが挙げられる。しかし、トウモロコシやサトウキビは食料であるので世界の食糧事情を考えれば、それを原料にすることは非常にネガティブな行為になる。だが、実際に原料とするのは食用にしない部分(非可食部)であり、これまで廃棄されていた葉や茎などを原料にすることから、ナフサ由来のプラスチックに比べ、環境負荷低減に貢献すると考えられている。

 

 

実は生分解性プラには、たくさんの疑問符???

 さて、それでは生分解性プラスチックであるが、これは、前記のように自然界で分解されるもので、品種からしても、その原料は石油由来のものも多い。筆者が調べたところでは、もともと生分解性プラは1990年代くらいから製品として市場に投入され始めた。その性質の発見は1920年頃にまで遡るという。つまり最近、殊にプラスチックごみが問題視され始めたことで、同品は熱視線を浴びるようになったわけで、特別ニューカマーというわけでもないのだ。

 

 生分解性プラの代名詞に「ポリ乳酸」がある。この開発が進んだのは、やはり高度経済成長に伴い大量発生したプラごみによる環境汚染が発端で、これを抑制する目的で、主に陸上(土中)で分解する製品の開発が急がれた。改良が進んだ結果、現在ではポリ袋やボトル製品などに用いられている。EUでのコンポストにこのポリ袋が活躍していることは、前回記した通りだ。また国内では農業用マルチシートとしても多く利用されている。

 

図 しかし、今日的な問題でいえば、プラスチックの自然界での分解は、どちらかといえば海洋において促進されるべきで、土中ばかりでなく海水中でも分解される生分解性プラも開発されている。右図は、その代表的な海洋生分解性プラ「PHBH」である(資料=カネカHP)。このプラスチックは、微生物がプラ製品製造に寄与しているという点がひとつの特徴だ。

 

 しかし、これら生分解性プラスチックだが、いくつかアキレス腱もあるのだ。東京大学 中谷隼氏は以下のように語る。

 

 「実は生分解性プラも、海洋での生分解性が確認されているもの以外は、海洋プラ問題の解決策としては疑問視されています。広く“生分解性”と呼ばれるプラスチックの中には“堆肥化可能”に限定されているものもあり、それが十分に分解するのは、産業化された堆肥化施設といった特定の条件下に限られ、そうした条件は自然環境(特に海洋)中に見出すことは困難なのです。また生分解性プラが従来のプラ(PEなど)と混合しリサイクルプロセスに投入された場合、それは阻害要因にしかなりません。そのため生分解性プラは、堆肥化を前提とした生ごみの収集袋などの用途に限定されるといわれています。欧州と比べ堆肥化が一般的ではない我が国では、生分解性プラの役割は限定的になるでしょう」

 

 生分解性プラは、条件が整わないと分解されない‥これは由々しき問題である。プラが環境に悪影響を及ぼすことに心痛し、消費者がわざわざ選択し購入したものが(誤解を恐れずにいえば)国内的には結果的になんの実効性も持たない‥。しかも、生分解性プラは「自然界で分解されるんでしょ?」との認識から、逆に「ポイ捨て」を助長することにもなりかねない。

 

図 一般的なバイオマスプラだが、Nature系列の国際ジャーナルに掲載された2019年の論文によれば、トウモロコシやサトウキビを原料としても、CO2などのGHG(温室効果ガス)の排出がゼロになるわけではなく、ライフサイクル全体(グラフ中の各原料の右端の棒)では化石資源を原料とした場合の6割から8割程度のGHG排出量になる。

 

 また、バイオマスプラは原料となる植物が生育する際に吸収したCO2と、それが燃焼する際に排出されるCO2がバランスすることから「カーボンニュートラル」と見なされるが、そのことが「バイオマスプラならリサイクルせずに燃やしても良い」としばしば曲解されていると中谷氏は指摘する。

 

 原料が化石由来でもバイオマス由来でも、プラスチックを再生利用すれば、焼却するよりもGHG排出量は減る。ポリ袋を考えた場合、材質が化石由来であろうとバイオであろうと、日本流の焼却処理であれば結果的にGHGは排出される(リサイクルすればその一部を取り返せる)。つまり材質はどちらでも、根本的に何かが変わるわけではない。バイオがカーボンニュートラルと認められるのは、燃料利用された場合の話だ。

 

 さらに、バイオマスプラ原料のなかには「パーム椰子油」もあるという。ご存知かもしれないが、パーム椰子は東南アジアの国々で熱帯雨林を切り開いてプランテーション栽培されている。熱帯雨林は、いうまでもなく大規模なCO2の吸収源であり、ここでパーム椰子を栽培したところで、いくら石油に由来せず、また植物ゆえにカーボンオフセットになるといってもその効果はいかほどか?また、熱帯雨林を切り開いた土壌は、泥炭地といわれ、この地表からはGHGが多量に排出されるといわれている。

 

 生分解性プラは、基本的に高価格であるが、企業としては環境貢献のコマーシャルとして用いたいのか、旺盛な需要を示しているという。オフィシャルな環境認証を受けたバイオプラであれば、なおさら供給量は少なく、また高価になるという。しかし、これもまた引き合いが強いというのだ。

 

 国内では、沿岸部の住民からは「漂着ごみに泣かされている」という話はよく聞くが、現状は仕方ないが(多くは国外からの漂着、また災害時流出という)、今後のプラごみのすべてが生分解性に代替されるとは考えられない。また環境条件により分解性も変わるとのことから「まだまだ懐疑的な代物だな」とは、筆者は思う。むしろ環境を悪くしているのは、使った後の人の処分が問題なのだ。

 

 コンポストの文化がない日本人にとっては、生分解性プラというものの存在が、肌感覚で分からない。どちらかというと「環境保護」との観点だけが独り歩きしているきらいがある。イメージに左右されず、慎重に向き合うべきプロダクトではないかと、思う。

 

 

(IRuniverse kaneshige)

 

 

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