2022年国際電池リサイクル会議ICBR② 「欧州新電池規則法案、最新情報」
新電池規則は、単一製品のライフサイクル全体を焦点に入れたEU初の規制となるが、今後同規則に続く同様の規制設置も広く検討されていることから、現在調整が実施されている法案の行方には大きな関心が集まっている。また、電池規則が施行されれば、日本をはじめとする電池生産国であるアジア諸国の電池業界も影響を受けることになる。
今回の会議でも例年通り、欧州委員会・環境総局の担当者から、新規則案調整作業における進捗報告があった。9月14日初日のプレゼンテーションでは、これまでに提案・修正を経た以下の主要項目が紹介された。
「第2章サステナビリティと安全基準」
●電池物質関する制限
●カーボンフットプリント
●再生材の使用
●性能と耐久性
●脱着性
●安全性
「第3章廃電池の管理」
●拡大生産者責任(EPR)の強化
●リサイクル効率ターゲット
●原料回収ターゲット
●EU域外への廃電池輸送
●報告義務
上記項目の中から、業界の関心および懸念が特に高い再生材使用・廃電池の回収ターゲット・リサイクル効率と原料回収ターゲット・デジタルパスポートに関する具体措置について説明があった。
●再生材の使用
産業用・自動車用・EV用電池が対象となり、段階的に内容が強化される。
2025年12月までに計算法と立証基準が確立され、2027年から報告が義務化される。2030年からコバルト(12%)・ニッケル(4%)・リチウム(4%)・鉛(85%)におけるターゲットを設置。2035年からコバルト(20%)
・リチウム(10%)・ニッケル(12%)・鉛(85%)となる。「再生材」の対象となるのは、使用済み電池由来の再生材のみ。
●廃電池の回収ターゲット
EU市場に出荷する電池の生産者は、電池が廃電池となった際の回収の義務付けの徹底。産業・自動車・EV用電池については現行の100%ターゲットを維持。ポータブルおよび軽輸送手段用の電池については、現行の「市場に出回った数量に対する」算出法を改め、「回収可能な数量」に対する算出法となる。現在ポータブルと軽輸送手段用電池の回収ターゲットの別途設定が検討されており、その場合は軽輸送手段用電池ターゲットは2031年までに54%。廃ポータブル電池は2025年までに65%、その後2030年までに70%。
●リサイクル効率と原料回収ターゲット
◆リサイクル効率(平均重量による)
鉛蓄電池:2025年に75%(2030年には80%)
リチウム電池:2025年に65%(2030年には70%)
ニッケル・カドミウム2025年に電池:75%
その他の廃電池2025年に50%
◆原料回収ターゲット
コバルト:2026年に90%(2030年に95%)
カッパー:2026年に90%(2030年に95%)
鉛:2026年に90%(2030年に95%)
リチウム:2026年に35%(2030年に70%)
ニッケル:2026年90%(2030年に95%)
●デジタルパスポート
対象とされるのは、軽輸送手段用・EV用・2k Wh以上の産業用電池。それぞれの電池データは単一のIDでアクセス可能とする。システム構造・データフォーマット・データアクセス・使用に関する規定などは二次規制によって設置される。保存されるデータの詳細に関しては、欧州委員会の報告書(プロポーザル)の付属書XIIIへ記載。
今回の報告では、調整内容が大量にあるため当初の予定を大きく上回る時間を要しており、最終採択は早くて2023年の春、あるいは2023年末になる可能性も示唆された。今後も欧州委員会・欧州議会・閣僚理事会による協議が続くため、今回の発表内容も確定ではない。しかしながら、欧州委員会に近い業界団体によると、今後大きく内容が覆される可能性はないだろうとのことだった。
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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