タンタルニオブのTICの第62回総会 ジュネーヴで開幕!
タンタル・ニオブに関わる世界のステークホルダーが集結する第63回TIC一般総会が、17日から19日までスイス・ジュネーブで開催された。
ベルギーに拠点を置くTICは、タンタルとニオブに特化した業界団体というユニークな存在で、30カ国から約80名の会員を抱える。今年は、世界各国から130人を超える参加者を迎えた。ただ、中国における新型コロナ感染症の規制がまだ緩和されていないことから、例年では最多を数える同国からの参加者がまばらであった。業界セクターでは、採鉱・処理、トレーダー、試金、研究・開発、製造からリサイクルなど、サプライチェーン全体からステークホルダーが集まった。日本からは、メタルドゥー、三井金属鉱業、JX金属、アドバンスト・マテリアル・ジャパンなどの顔ぶれが見られた。
初日のオープニングでは、TICの新会員の紹介と、現在会長を務めるDaniel Persico博士が次期会長に再選されたことが発表された。
2日間にわたる会議は、プレゼンテーションやパネルディスカッションで構成され、タンタル・ニオブに関わる最新の研究・開発や今後の需要予測や期待されるセクターなどに焦点があてられた。また、放射能物質を含むタンタル・ニオブ鉱石の輸送規制である国連のClass7や、採鉱場における児童労働問題など、規制やSDGへの取り組みなどの議題も扱われた。
プレゼンテーションでは、 コンデンサ需要が50%を占めるタンタルの今後中期・長期的に需要が予測されるセクターとして、電子機器、EV、ITなどが挙げられた。研究開発では、タンタルのパウダーを使用した3Dプリントによる部品製造技術や、難しいとされているタンタルとニオブの新しい分離法などが紹介された。コンデンサは今後も引き続きタンタルの需要を牽引していくセクターとして認識されたが、先の技術開発や新しいアプリケーションの開発の必要性について議論された。タンタル需要のカギとなるセクターでは、半導体・4G/5G ・AIを使用した自動車・超電動性デバイスなどがあがっている。
加えて、EUにおける高融点金属の輸入依存削減プロジェクトTarantulaに関するワークショップも行われた。同プロジェクトは、EU支援により16のパートナーが集結、タンタル・ニオブ・タングステンのリサイクルによる原料回収率を引き上げる新技術の開発を手がけている。
2日目に行われたパネルディスカッションでは、将来的な市場の在り方や進化しつつある原料のアプリケーションが語られる一方で、現在の業界における問題として、タンタルの供給能力不足が指摘された。タンタル市場は、サプライチェーンを通じて、発注から納品まで非常に時間がかかることで知られ、ある業者によると平均18ヶ月だという。これには、サプライヤーの数が少ないことと、サプライチェーンが複雑なことが関連している。供給能力を拡大させるためには、先の投資が必要であるが、タンタル市場の価格変動が激しいことが、先の投資へのインセンティブを下げる要因になっているようだ。結果的に、現状ではタンタル需要が急上昇しても業界は敏速に対応することができない状況であるため、今後の供給能力拡大は、業界の大きな課題として認識された。
タンタル価格については、会議参加者から得た情報によると、現在鉱石価格が下がっており、相場は83ドルから85ドル/ポンドだという。価格低迷の原因には、現在も続く中国の新型コロナ感染症の規制により、中国市場が停滞していることがあるようだ。また、米の金利引き上げの影響が大きいという見方もある。加えて、新型コロナ感染症蔓延で在宅勤務が急増したことに伴い、コンピューターをはじめとする電子機器の需要が急上昇した背景もある。コンデンサ需要が大幅に増加し、タンタル価格が一時期急上昇した。これを受けて、トレーダーはタンタル在庫確保のため、一時
期買い占めに走ったが、その後、「コロナ需要」は続かず低下、在庫がダブついているという。現在トレーダーが抱えている在庫が処分できるまでに半年から一年かかるため、低価格はしばらく続くという予測もある。中国が動き出すまで待つか、更なる価格低下を見越して売るべきか、目下のところ様子見といったところのようだ。
最終日の19日は、欧州原子核研究機構(CERN)の施設見学が行われる。今回は、同施設のスーパーコンダクティング・マグネットにニオブを使用する研究開発施設を訪問する。ツアーの内容については追って報告する。
(Y.SCHANZ from Geneva, Switzeland)
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