創業100周年を経てさらに進化するクロダリサイクル
株式会社クロダリサイクル(函館 奈良浩二社長)は今年で創業100年という節目を迎えた。2年前にもMIRU取材班は訪れているが、今回2年ぶりに現場を訪問し、昨年7月に代表に就任した奈良社長に今後のクロダリサイクルの在り方について聞いた。
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前回はASR処理から木くず、風力発電設備のリサイクルまで、文字通りリサイクルのデパートともいうべきクロダリサイクルの現場を徹底的に取材したのだが、今回は、創業100周年の節目を経てさらに進化している同社の最新の取り組みについて報告したい。
まず昨年、2021年9月に建設業特定解体工事業の許可を取得。これまで同社が行ってきた一般家庭や事業所からの不用品回収サービス「かたづけ隊」をより発展させ、かたづけから解体までをワンストップにて大型物件等でも対応可能、とした。
また、クロダリサイクルは焼却灰(落じん灰)からの貴金属回収を強化するために今年2022年11月に設備を更新した。落じん灰は焼却灰の中でも貴金属の含有率が高いと言われている灰。自治体の焼却炉、ストーカー炉でごみを燃やした後、焼却灰を取り出す過程で排出される。
(焼却灰からの貴金属回収設備)
高い技術力により精度の高い貴金属回収を可能とすることで、回収した貴金属を非鉄精錬会社に売却し、自治体に対する落じん灰の買取を実現している。
導入メリットは大きく三つあり、まず一つは資源化率の向上です。貴金属という貴重な資源を回収し資源化することができる。資源化を行うことで自治体の資源化率の向上が可能となる。
二つめは、自治体の収支改善。同じ資源化でもセメント原料の場合はセメント会社に処分料を支払う必要がありますが、落じん灰有価買取の場合は逆に買い取り料を受け取ることができる。同時に処分すべき焼却灰の総量が減少するので年間の焼却灰処分料支払いが削減可能となる。
そして、三つ目は処分場の延命化。処分場の残余容量は多くの自治体にとって大きな課題となっている。落じん灰有価買取を活用することで、埋め立て量を削減することも可能。同社の選別技術により、貴金属だけでなく亜鉛や鉛などの非鉄金属も回収できる。
風力発電設備の解体には並々ならぬ意欲をみせる
そして2年前に訪れたときにもクロダリサイクルでは風力発電設備のリサイクルに着手していたが、今後ますます風力発電設備のスクラップ&ビルドが進むことで解体ニーズも高まることは必定とされている。また実際、風力発電設備のリサイクル(リユース)市場に参入する企業も増えている。
(風力発電用モータから解体を経て取り出したネオジム磁石)
この風力発電設備のリサイクルには並々ならぬ意欲をみせている奈良社長。
「風力発電設備解体処理によるネオジム磁石や貴金属回収の扱い促進、ならびに設備一貫処理の研究を進めていきたい」とのこと。
風力発電設備ではモータのネオジム磁石、羽根部分のブレード(GFRP、CFRP)が難題とされている。特にブレードは確固とした、経済的かつ持続的なリサイクル手法が世界的にも定まっていないため、クロダリサイクルの「研究」に期待したいところである。
また函館港という立地を生かした、発生場所を問わない広域回収スキームについても奈良社長は以下のように述べている。
「函館には港があるため広域な海のインフラを活用し、陸上輸送が困難な解体品を海上輸送にて受入れし、当社の再資源化プロセスで高度な資源循環に寄与したい。現在埋め立て処理に終わっている部品、素材を減らすことで、社会貢献し、会社の社会的意義を高めていきたい」。
(IRUNIVERSE/MIRUcom)
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