旭化成 連続炭素繊維をリサイクルする基礎技術を開発
~エネルギー効率の向上や低炭素社会の実現に向けて~
旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:工藤 幸四郎)は、独立行政法人 国立高等専門学校機構 北九州工業高等専門学校と学校法人 東京理科大学と3者で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」に採択され、2021~2022年度を開発期間とした「自動車用炭素繊維サーキュラーエコノミー・プログラムの研究開発」と題したプロジェクトにおいて、連続炭素繊維リサイクルの基礎技術開発に成功した。
背景
同プロジェクトは、2021年5月に、省エネルギー・新エネルギー・CO2削減等のエネルギー・環境分野の中長期的な課題を解決していくために必要となる技術シーズ、特に既存技術の延長とは異なる、飛躍的なエネルギー効率の向上や低炭素社会の実現に資する有望な技術の原石を発掘し、将来の国家プロジェクトに繋げていくことを目的とした「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」にて採択された。
同プロジェクトでは、自動車から廃棄されるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)/CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)由来の炭素繊維を、再びCFRP/CFRTPとして自動車に再利用する循環システムの社会実装を目指す。自動車から廃棄される炭素繊維を連続炭素繊維としてリサイクルすることで、高品質かつ安価なCFRTP提供による自動車軽量化、それに伴う省エネルギー効果が期待できる。また、日本がリードする炭素繊維と自動車業界への経済効果と競争力強化の実現を目指す。
取り組みの内容
これまでの炭素繊維リサイクル技術は、炭素繊維を細かく切断したチョップド炭素繊維※1としてリサイクルしていた。しかし、チョップド炭素繊維は本来の連続炭素繊維とは形状が大きく異なるため、個別のコンポジット技術を開発する必要があっlた。一方で、同プロジェクトでは、本来の連続炭素繊維としてリサイクルできるため、既存のコンポジット技術を活用することができ、循環型経済を意味するクローズドループ・リサイクル※2を実現することができる。
(出典:旭化成)
プロジェクトの特徴
このプロジェクトを実現するために、「電解硫酸法」を開発。「電解硫酸法」とは、硫酸を電気分解することで生成する酸化性活性種※3により、CFRP/CFRTPの樹脂成分を分解して、炭素繊維を取り出してリサイクルする技術。この技術の特徴は、①全ての樹脂を分解できる、②リサイクルした炭素繊維の強度が低下しない、③炭素繊維を連続繊維としてリサイクルできる、の3点だ。
(出典:旭化成)
電解硫酸法の特徴
そして、今回市販のスキューバダイビング用小型CFRP製タンクから連続繊維をリサイクルする基礎技術を開発した。リサイクルした連続炭素繊維は「拠れ」、「毛羽立ち」などがなく、新品の炭素繊維と同様に扱う事ができる。そのため、再びフィラメントワインディング※4をすることで、Tank to Tankのサーキュラー・エコノミーが可能となる。
(リサイクルした連続炭素繊維とフィラメントワインディング成型品 出典:旭化成)
また、リサイクルした連続炭素繊維と同社のポリアミド樹脂「レオナ™」を用いたCFRTP-UDテープ(Uni-directional Tape、一方向連続繊維強化材料)の開発も進めている。CFRTP-UDテープは強度が金属より高く、今後自動車フレームやボディなどへの応用が期待されており、この技術を活用することにより自動車部品から自動車部品へのリサイクルが可能となる。
今後は、実証開発および事業開発を経て、2030年頃の社会実装を目指していく。
(リサイクル連続炭素繊維とポリアミド樹脂「レオナ™」を用いたCFRTP-UDテープ 出典:旭化成)
※1 チョップド炭素繊維:
* 長さ3~24mmの長さに切断した炭素繊維加工製品
※2 クローズドループ・リサイクル:
* 廃棄物を同等の品質を維持した材料として再生産し、再び製品へ採用する手法
※3 酸化性活性種:
* 強い酸化力を持つ物質で、樹脂を分解することができる
※4 フィラメントワインディング:
* ロービング(連続繊維束)を引き揃え、樹脂を含浸させながら回転する金型に連続的に所定の角度で巻きつける成形方法
* 旭化成のエンジニアリングプラスチック総合情報について
https://www.asahi-kasei-plastics.com/
* 旭化成の炭素繊維強化ポリアミド樹脂UDテープについて
https://www.asahi-kasei-plastics.com/topics/udtape-01/
(IR universe rr)
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