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電動トラックと電動船? バッテリー用金属は2050年までに枯渇する?

 世界に先んじて産業革命と環境汚染を経験した欧州は環境意識がとても強く、今日に至るまで率先して環境汚染問題に取り組んでいる。その根底にあるのはサーキュラ・エコノミー(循環型経済)という考え方で、大量生産と大量廃棄をやめ、リサイクル、再利用、省資源を推進する礎となっている。

 

 このような背景から英国イーザインLoadstarは刺激的な1月17日付記事「電動トラックと電動船? バッテリー用金属は2050年までに枯渇する?」を掲載した。

 

 要は、銅、コバルト、マンガン、ニッケルの世界的な埋蔵量は、交通機関の電動化を将来的に支えるには不十分で、脱炭素の諸条件を満たすには「脱成長(de-growth)」が不可欠になるとの研究プロジェクトの成果を紹介している。

 

 欧州連合(EU)の資金援助の下で行われたロコモーション(Locomotion)プロジェクトと呼ばれるものはスペインのバリャドリッド大学(Universidad de Valladolid)のエネルギー・経済・システムダイナミクスの研究グループが主導し、電動自動車やバイクが広範囲で普及している状況に鑑み、将来の輸送需要に基づいた電動化のシナリオを、原材料の入手可能性、リサイクルの可能性、その他の要素をも考慮に入れ総合的に検討した。

 

 その結果、公共交通機関や大量貨物輸送だけでなく、自家用輸送の全てにおいても電動化に対処しうるに足るバッテリー製造に必要な諸々の原材料が足らなくなる惧れがあり、また既知の鉱物資源埋蔵量に関しては2050年までに尽きる可能性が高いので、「脱成長」シナリオを実現するために世界の輸送部門だけでなく資源集約型部門においても更なる調査・研究の必要性を説いている。

 

 脱炭素化の即効策としては、陸上輸送の電気自動車・トラックよりもエネルギー効率の優れた鉄道輸送の電車を推奨し、また電動船は、他の貨物輸送手段よりもはるかに優れた脱炭素化の高い投資収益率を約束できるものと、海運エコノミストの以下のコメントも添えている。

 

 英国では、サザンプトンとフェリクストウに 1 日約 11,000個(20フィート換算)のコンテナが運び込まれ、それらはトラックに積み込まれて北部に陸送される。その代案として、巨大コンテナ船が例えばオランダのロッテルダムに寄港し、そこから欧州の各港に電動船積み替えネットワークを作り、環境負荷の少ない海上コンテナ輸送網を構築するとのこと。

 

 この記事にもとになった論文を探したところ、以下(英文)が見つかったので、興味のある方はご覧頂きたい。

 

「輸送の電化に必要な材料とエネルギー」

https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2022/EE/D2EE00802E

 

 とりあえず前言に当たる部分の要約を以下に紹介したい。

 

 「運輸部門は、2019 年に世界の CO2 排出量の 27% に達したがゆえに、輸送機関の電化は、脱炭素化戦略の礎を成す。本研究では二つの生物物理学的制限: 潜在的な材料のボトルネックと正味エネルギー収支に焦点を当てた。送電網と充電器をも含んだ典型的な家庭用EVの正味エネルギー収支はほぼゼロであることが分かった。

 

 つまり、EV製造に投下されるエネルギー量は、その生涯寿命での移動に使用されるエネルギー量と同じ。2050 年までの運輸部門における 3 つの異なる移行戦略の下でのモデルシミュレーションにより、EVバッテリーの市場シェア、リサイクル含有率、および現在の埋蔵量と資源に対する累積抽出のシェアを推定することができる。

 

 調査したシナリオの少なくとも 1 つで、銅、コバルト、リチウム、マンガン、ニッケル、グラファイトの埋蔵量が枯渇することが分かった。 リサイクルは重要な戦略だが、システム全体の影響により効果は限定的。正味エネルギー分析の観点から、公共交通機関などESOI(蓄積エネルギーと投下エネルギーの比較)が高い EV 輸送モードを優先することが推奨される。

 社会全体のエネルギー新陳代謝からは、よりエネルギー集約型の輸送・移動手段に切り替えると、他の裁量目的に使用可能な正味エネルギー量が減少し、社会全体のバランスが崩れる可能性もある。今後の作業では、EVと内燃機関車両の間の完全なエネルギーライフサイクルを徹底的に比較する必要がある。」

 

 

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(IRuniverse H.Nagai)

世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。

 

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