脱炭素に資する新技術説明会「バイオマスを原料とするプラスチック代替材料(同志社大)」
・脱炭素に資する新技術の説明会が2月21日科学技術振興機構主催で開催され、同志社大学理工学部機能分子・生命化学科水谷義教授が「バイオマスを原料とするプラスチック代替材料」について以下の報告をした。本開発材は、化石燃料に依存しないカーボンニュートラルなバイオマスを原料とした機械材料であり、耐水性を持ちながら生分解性も有することで廃棄しても環境問題を起こさず、また、弾性率、強度、破断伸び、吸水性などをコントロールできるなど従来の材料にない特長を有する。
・プラスチックは優れた力学特性、加工性のよさ、軽量、安価などの理由で幅広く利用されているが、「生分解性の低さによる環境汚染」、「化石資源である石油に依存」等の問題を有している。カーボンニュートラル(CN)であるバイオマスを利用して、プラスチックの特性を活かした材料を開発した。
・バイオセラミックス骨(リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト:HAP)+タンパク質)、貝殻・蟹の殻(炭酸カルシウム+βキチン)、歯(リン酸カルシウム(HAP)+コラーゲン)がある。応力―歪曲線から、一般のセラミックスは剛直性があるが小さい力で破壊してしまうのに対し、バイオセラミックスは剛直性がないが、材料として靭性が高いのが特徴である。この高い靭性は、剛直な無機粒子が小さい事と変形時に柔軟な繊維状の有機高分子―無機粒子界面がスリップしてエネルギーを吸収する為、生まれる(代表例:レンガ―モルタル構造)。また、バイオセラミックスは容易に無機成分を取り出せる為、再生利用が容易である(代表例:骨から温水でゼラチンを抽出可)。
1.天然由来のバイオマスによる、繊維構造を有する力学材料の合成
今回は骨に注目し、バイオマスを原料とするプラスチックをモデル化して研究開発を行った。具体的にはリン酸基含有タピオカデンプンとHAPを共沈法で複合化し、骨の様な高靭性をもつバイオマスハイブリッドプラスチック材料を調製し、その機械特性を曲げ試験で評価した。破断面を比較するとCNF非含有HAPは脆性破壊(破断)するのに対して、CNF含有HAPはヒビ、或いは曲がるのみで破断されなかった。CNF含有HAPの断面写真は骨の断面とよく似た面であった。
2.アシル化により耐水性向上、熱可塑性の発現
本合成材料は、分子中にヒドロシル基を有する為、耐水性に課題を持っていた。ヒドロシル基をアシル化し、耐水性を向上させた。アシル化前の吸水率が120%超に対して、アシル化によって吸水率10%以下に改質した。
3.アシル基の種類によって機械特性、熱可塑性、吸水率等制御可能に
本研究では4種類のアシル基で検討を行った。側鎖が長いヘキサノイル体、ラウロイル体とアセチル体、ベンゾイル体では特性の違いが顕在化した。具体的には、
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成形性:ヘキサノイル基、ラウロイル基は熱可塑性で、60℃迄下げて成形しないと成形困難。
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機械特性:アセチル体、ベンゾイル体は高強度、高剛性。ヘキサノイル体は高靭性。
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水浸漬後の機械特性:ベンゾイル体は高剛性保持。ヘキサノイル体、ラウロイル体は高靭性保持。
このようにして化石資源に依存しない構造材料を生み出すことができた。バイオマスを原料とするプラスチック代替の構造材料として非常に期待が大きい。
IRuniverse T.K.A.
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