コバルト市場近況2023#4 ようやく底打ち気配か?
低迷を続けてきたコバルト価格に反転の兆しが出てきた。HG(高純度)コバルトとLG(低純度)コバルトの仲値は3月初めを底に上昇に転じている。ただ、LMEコバルトは横ばいから抜け出しておらず、先行きには不透明感も根強い。
■HGコバルトとLGコバルトの価格推移
ファストマーケットは3月22日、米国の一部の業者でコバルトの入手難が生じていると伝えた。ファストマーケットは値上がりの背景として、従来型のエネルギーからコバルトやリチウムに投資先を移転するための投機筋からの買いが入っているとの見方を伝えた。さらに、採掘コストが値上がりしているため、生産者側が卸価格にコストを上乗せしているとの見方も報じた。
一方、LME価格は2月下旬から1か月以上も高値が1トン=33.760ドルの水準での低空飛行が続いている。
■LMEコバルト価格の推移
コバルトの実需は言うまでもなく電気自動車(EV)向け電池材料が大きい。EV需要は中長期的にも拡大が見込めるが、電池材料に関してはコバルトフリー電池の開発が進んでおり、電池材料としての需要への見方がコバルト市況を左右しやすい地合いが続いている。また、コンゴの鉱山などでの労働条件問題などで採掘が滞るリスクも根強く意識されている。
EV以外の分野での実需も伸び悩みが目立つ。中国の専門サイト「生意網」は24日コバルト週報で、中国内のコバルト需要について「デジタルウェアブルといった新分野や3C電子商品などの販売が不振で、コバルト需要は予想よりも伸びなかった」と伝えている。
■最近のコバルト関連の主なニュース
3月24日
欧州委員会は3月16日、欧州重要原材料法(European Critical Raw Materials Act)案を公表した。重要原材料のうち、重要技術(ツイントランジション、宇宙防衛)に関連する鉱物や生産量の増加が比較的難しい鉱物を「戦略的重要原材料」と位置づけ、その安定供給確保に向けた措置を規定した。ビスマス、ホウ素(ボロン)、コバルト、銅、ガリウム、ゲルマニウム、リチウム、マグネシウム、マンガン、グラファイト、ニッケル、白金族、磁石用レアアース(Nd、Pr、Tb、Dy、Gd、Sm、Ce)、ケイ素(シリコン)、チタン、タングステンの16種が「戦略的重要原材料」の対象となった。リストは4年毎に評価・更新する。
関連記事: EU:重要原材料法案を公表 | MIRU (iru-miru.com)
3月15日
オーストラリアの訪問団とインドは3月11日ニューデリーで、包括的経済協力協定(CECA)の交渉を正式に再開すると発表した。このうち鉱業・資源分野に関しては、両国の既存の重要鉱物投資パートナーシップのもとで、リチウム関連2件、コバルト関連3件について交渉の対象にするとした。
関連記事: 豪印 重要鉱物投資パートナーシップ延長で関係深化へ CECAの交渉再開も | MIRU (iru-miru.com)
3月9日
3月5日から中国・北京市で開催された全国人民代表大会(全人代、国会に)で、同会に参加した奇瑞控股集団の尹同躍董事長は、リチウム、コバルト、ニッケルを中国の戦略的備蓄資源とし、海外諸国(特に「一帯一路」沿線諸国)との協力を通じ、資源所在国が上述の資源を企業誘致のために利用することを提言した。
関連記事:全人代シリーズ⑧ リチウム・コバルト・ニッケルを国家戦略備蓄資源に指定 | MIRU (iru-miru.com)
(IR universe Kure)
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