アルミ合金&スクラップ市場近況2023#10 LMEダウンで輸入塊も急落&スクラップ輸出分析
5月後半の国内アルミスクラップ市況は、上物、UBCについては高値調整の下げ、スソ物は輸出向けも勘案し横ばい、という市況感となっている。上物系はLMEアルミ相場が4月下旬の2400ドル台から2200ドル台まで下落していることが要因ではあるが、輸出も警戒しつつの慎重な下げになると思われる。高値調整アイテムのUBCはメーカー買値で210円も割れる可能性もあり。
(LMEアルミ相場($/ton)と国内アルミ新地金相場NSP(\/kg)の推移)
このLMEアルミ相場の下落に伴い、輸入ADC価格も大幅にダウン。
足元(5月16日現在)ではトン当たり2300ドル前後だが、一部では2300ドルを割れているものも散見。
現在の為替レートで計算した輸入塊の日本着値ではキロ当たり325円前後。国産ADCに下落圧力がかかっている。
国産品は現在330〜340円で推移中。
(中国産ADC12輸入価格の推移 $/ton)
アルミ合金メーカー関係者は
「中国でのアルミ合金需要が落ち込んでいることで世界的に合金市場がシュリンクしている感がある」というが、それはひとつには中国経済全体の地盤沈下、もうひとつはいまや3台に1台がEVという中国社会において、予想以上にアルミ合金を用いる、内燃機関のあるエンジンブロック需要が落ちていることが関係しているのではないかと推察する。
(関連記事)中国新エネ車販売、4月は前年比で倍増 3台に1台がEVに
実際、中国の主要都市ではEVが多く、タクシーはかなりEV化が進んでいるように見えた。バイクもほぼ電動バイクしか走っていない。
そもそもガソリン車のブルーのナンバープレートがかなり取得しづらくなっており、政策としてEV化を進めている中国の戦略は成功している。町中でも排ガスの匂いは全くしなかった。
(上海虹橋にて筆者撮影 青いナンバーガソリン車、緑がEV)
こうしたEV化の進展が中国でのアルミ合金需要を減退させているとするならば、中国国内での合金需要はますます落ち、海外向け輸出に活路を見出すことになるだろう。
アルミスクラップはノミナル。国内が下がれば中国系業者が安値拾いの買いでもっていく。
3月のアルミスクラップ輸出は32,000トン。昨年、過去最高の36万トン超えを記録したが、それを上回るハイペースの輸出が続いている。1-3月合計で約8万トン。2010年は1年間で9.8万トンだったことからすると隔世の感がある。これにアルミUBCの輸出を加えると、昨年2022年で7万トンだったため、アルミスクラップの総輸出はすでに40万トンを超えていることになる。
(アルミスクラップ輸出推移 トン)
そして、このUBCだが、常に韓国とタイ向けがメイン。
やはり韓国向けのほうが多く、最新の3月統計では韓国6018トンに対し、タイ向けは228トンにとどまる。
しかし業界関係者が注目しているのはその値差。
というのも、韓国向けはノベリス向けでAプレスがメインの商材となり、3月の輸出単価がキロあたり237円というのも相場と出荷のずれがあることを踏まえるとそう外れていないUBCの単価とみえる。
しかしタイ向けは通常、タイのUACJ向けのUBCタブレットかペレットと思われ、輸出単価も韓国向けよりもキロ当たり20〜30円以上高いレベルが続いていた。例えば2月統計では韓国向け218円に対し、タイ向けは231円。1月は韓国向け214円に対し、タイ向け294円、とこれは極端に高いのだが、値差がある。1月はインド向けに51トンで256円という単価もあった。
ところが最新の統計では韓国向け237円に対し、タイ向けは180円とはじめてタイ向けが韓国向けを大幅に下回った。業界関係者筋では、B缶が輸出されたのだろう、とみているが、もしもUACJタイ向けとするならばB缶輸出は考えづらいかと。UACJ向け以外のタイならばそうかもしれないが、税関では「いつもの」横浜から出ているのでやはりUACJ向けかと察せられる。ならばこの安値は何なのだろうか?
また一説にはUACJタイ向けのペレット、タブレットは一般のアルミスクラップの輸出コードで出荷されている、という話もあるが、そうなるとタイ向けは6000トン以上出荷されて、単価も120円となっているため、なおさら見えづらい。
(アルミUBC輸出推移 トン)
(関連記事)【貿易統計/日本】 2023年3月のアルミ缶スクラップ輸出統計
(IRUNIVERSE/MIRUcom YT)
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