ロシア産原油、インドと中国で輸入急増 深まる関係、OPEC減産の足並み乱す
ウクライナ侵攻後の西側諸国による経済制裁で行き場を失ったはずのロシア産原油は、インドと中国への輸出が急増している。主要産油国でつくる「石油輸出国機構(OPEC)プラス」は6月4日の会合で2024年末までの協調減産の継続を決めたが、ロシア産原油を引き取る2国の存在が、産油国の不協和音の背景となっている。
■インドと中国、5月のロシア産原油輸入は過去最大
ロイター通信が6月2日までにエネルギー調査会社の英ボルテクサと米クプラーの暫定データとして伝えたところによると、中国とインドによるロシア産原油の合計輸入量は、5月に前月比約10%増の1億1000万バレルと過去最大となった。クブラーのデータでは、このうちインドが6670万バレル、中国は4920万バレルだった。
エコノミック・タイムズの6月4日の報道では、インドのロシア産原油の輸入の比重は既にサウジアラビアやイラクなどを上回り、同国の原油輸入元で首位となった。
■ロスネフチ、インドで製油所 決算好調
インドはロシアとの間でエネルギー分野での関係を深める。5月半ばには、インディア・タイムズなどの外電が「ロシアの国有石油会社であるロスネフチが、インドでのグリーンフィールド製油所の建設を計画している」との消息筋の情報を伝えた。製油所はインドの国有石油企業との合弁で建設されるとみられるという。
ロスネフチはロシア産石油のインドへの輸出にも関わっているとみられ、同社が5月末に発表した2023年1~3月期の決算は純利益が3230億ルーブルと前年同期比45.5%増えた。
■中国、経済低迷でコスト削減
一方、中国のロシア産原油の増加は、同国内の石油需要の変化が背景にある。エネルギー・インテリジェンスは5月下旬、中国の4月の原油需要が1日当たり1600万バレルと初めて1500万バレルを超え、過去最高を更新したと伝えた。ゼロコロナ後の景気回復が遅れ製品価格が下落する中、製造業の業者が原料コストを抑えており、廉価なロシア産石油の購入を増やしているという。
中国の4月の卸売物価指数は前年同月比3.6%下落と、ほぼ3年ぶりの大きな値下がりだった。
■「価格より量」迫られるロシア
原油相場はロシアのウクライナ侵攻後に一時1バレル=130ドルまで高騰したが、最近は世界的な景気減速観測から一時60ドル程度まで落ち込む場面があった。このため、OPECプラスのうち最大の産油国であるサウジアラビアが単独減産を表明するなど、産油国の間では原油相場の下支えへの要望は強い。ただ、ロシアは制裁により60ドルを超えた価格では輸出できないため輸出量を増やして資金を稼ぐしかない。インドと中国がこの安いロシア産原油の引き取り手となっている現状があり、OPECプラスの足並みを乱す要因となっている。
(IR Universe Kure)
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