東大レアメタル研 ユミコア八木良平氏 LiBリサイクルプラントさらに大規模に
東大生産研の岡部研究室が主宰するレアメタル研究会が今年106回を重ねた。レアメタル研究会100回記念誌は、「金属」Vol.92(2022)No.12別刷としても公表されている。今回の講演で岡部研で修士・博士過程を学んだ八木良平氏がユミコア社の中央研究所のリサイクル&抽出技術の科学者として、「Battery Recycle at Umicore」と言う演題で現在のユミコアのLiBリサイクル技術の進捗状況を解説した。
ユミコアがバッテリー研究開発拠点を設置したのは2011年まで遡る。2011年に7000 t/年処理の実証プラントを建設。ただ、それ自体はLCO (民生用) のバッテリーを処理するためのプロセスであり、2022年にNMC (車載用) に最適化されたプロセスが運用できる設備へとup gradeされた。
研究開発所におけるパイロット (1日1t規模) 試験は2019年にすでに成功しており、2022年には実証プラントを使用した7000 t/年の処理能力を獲得している。
今後2026年までに150,000t/年のLiB商業プラントの建設・操業を開始する事も明確になった。
講演の中でビーカーレベルの試験からパイロットプラントは100倍の規模まで処理能力が拡大し、パイロットプラントから商業規模は10倍の規模になるとの説明から、実証プラントは7,000t/年の設計処理能力となっている。
LiBリサイクルでは、現在のEUのEV市場規模から、原料の7割はバッテリー生産スクラップで3割が廃EV車となっている事が明らかにされた。
ユミコアが15万トンのLiBリサイクル工場が2026年に稼働するとEUの3分の2のLiBリサイクルを引き受ける能力となる。
ユミコアのリサイクル方式は、乾式製錬法と湿式製錬法の組み合わせたプロセスで、ニッケル、コバルト、銅を回収し、アルミやリチウムはスラグへ移行する。リチウムはスラグ相からの水抽出もしくはガス化し、80%以上が回収可能だという。欧州のスラグ中のコバルト度は0.1%と言う規制値があり、この規制値をクリア―しているとの注目される発言があった。
欧州の規制LiB規制によるリサイクル率の目標値は以下の通りである。
乾式製錬プロセスでは、スラグ中へ移行するリチウムの回収プロセス開発も順調に進化していると想像される。
一方、GHGガス排出量の観点では、乾式・湿式製錬法はGHGガス排出量が懸念されている。八木氏の説明では以下の説明が行われた。
ユミコア社の評価のベースは以下の判断が拠り所になっている。
ユミコア社のコーポレイト研究所のリサイクル担当者の講演は、岡部研の出身ドクターの講演でもあり、これまで公表されている情報より深い内容であった。
八木氏のLiBリサイクルの活躍とユミコアの商業プラント成功裏のスタートアップに期待したい。
(Katagiri)
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