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埼玉県庁が取り組むサーキュラーエコノミー

 昨今話題となっているサーキュラーエコノミー。言葉として浸透はしつつあるこの用語も、実際の運用やそれに付随する問題点といった所に対しては余り目を向けられる事がない。

今回は前半部で環境に対して先進的な取り組みを行う自治体である埼玉県の取り組みを紹介し、後半部では担当者に対するインタビューという形で抱えている問題点を記載していく。

 

(写真左から、埼玉県環境部資源循環推進課の尾崎課長、荻原主査、埼玉県環境科学国際センターの川嵜氏)

 

環境先進県としての取り組み

 

 埼玉県は、県を挙げて資源の循環利用を推進し、県内産業の成長にも繋がる要素としてサーキュラーエコノミーに纏わる企業活動を推進している。

2023年6月15日にはサーキュラーエコノミーの普及と啓発、情報発信等を目的とした施設「サーキュラーエコノミー推進センター埼玉」を開設するに至っている。

県が後押しするサーキュラーエコノミー事業は、主に大企業よりは小回りの効く中小企業、学術機関など小規模な団体の取り組みからスタートするケースが多い。

そういった活動を後押しすべく、同県では「埼玉県サーキュラーエコノミー型ビジネス創出事業費補助金」という補助金制度を展開している。

諸々の条件こそあるものの、この制度は上限額750万円までの資金援助を可能としている。

 

 実際にサーキュラーエコノミーを推進しているというだけあり、その再生材利用に関しても積極的な政策を採っている。

その代表的な制度となっているのが「彩の国リサイクル製品認定制度」というものだ。

これは埼玉県内で発生した循環資源を利用したリサイクル製品に対して認定を行い、埼玉県が広報などの後押しをする制度となっている。

その種類も様々であり、現在認定されているのは一般廃棄物を利用した道路溶融スラグや食品廃棄物を利用した堆肥、浄水発生土を利用した土壌改良材など多岐に渡る。

こういった製品に対し付加価値をつけアピールする事で、再生資源を利用した製品をより循環させていく取り組みを行っている。

 

 また昨今話題の要素に絡めた啓発活動も幾つか行っており、1つ目が「埼玉県プラスチック資源の持続可能な利用促進プラットフォーム」の設置である。

これは埼玉県内の企業や業界団体、市町村や消費者団体が集まりプラスチック資源の循環利用に関する講演会や研修会、交流会を積極的に行う互助制度である。

必要に応じて有識者やオブザーバー等を招聘し、アドバイスなどを通してプラスチック資源のリサイクルをより活性化させる役割が期待されている。

 

 同県の取り組みは大規模施設の建造・運用といった所まで進んでいる。

リサイクルに関する「資源循環モデル施設」として、処理設備を備えた再資源化・製造施設である「彩の国資源循環工場」というリサイクル施設群を彩の国資源循環工場にオープンさせている。

これは多くの事業者が共同で各リサイクル施設を運用する代物であり、金属リサイクルやバイオマスリサイクル、蛍光管や太陽光発電パネルのリサイクルにRPF製造リサイクルなどおおよそ昨今話題となっているリサイクル事業をほぼ全て網羅している。

更には製造施設の名の通り、自動車部品の製造や組み立て、廃棄物の保管コンテナの製造といった機能を行う施設も併設されている。

リサイクルと生産を同時に引き受ける、これからのリサイクル事業のモデルケースと言えるだろう。

 

 これだけ取り組みを多く行っている同県であっても、リサイクルに対する課題は未だ尽きない状況となっているようである。

 

高まるリサイクルの機運と課題

 

 ―今回は応じて頂きありがとうございます。埼玉県ではかなり先進的な取り組みを進められているようですね。

「御社が講演会で取り上げられていたアルハイテック株式会社様の事業についても、以前展示会でお見かけした事がありました。

目の付け所が他社とは違うユニークな点に惹かれて、アルミ包装をどうにかリサイクルする軌道に乗せられるのではないかと検討をした事もあったんですよ。」

「お見かけした当時は水素に関して殆ど触れていなかったのですが、最近は水素がエネルギー源として着目されていますよね。

そういった点から課題を見つけて新しい商流に乗せるというのは上手いやり方ではないかと感じます。」

 

 ―プラスチックのリサイクル周りに関する事情についてお伺いしますが、燃料として用いるRPFについてはどう見ていますか?

「元々プラスチックの回収というのは積極的に行っていたのですが、その先のリサイクルについては課題があると考えていました。

回収を行った後に再利用しようとしても、その後の品質についてバージン材と比較するとどうしても問題となる点が出てきてしまうことがあります。

再生樹脂の取り扱いをどうするか、と化石燃料代替という所で考えていくとRPFというのも選択肢に入るのではと見ています。」

 

 ―現在の所、廃プラスチックについてはマテリアルリサイクルの他にサーマルリサイクル、ケミカルリサイクル等の手法があり各社取り合いとなっている状況です。

「RPFに関しては廃プラスチックの回収側に対して思うこともあります。

実際に回収を行う際に廃プラスチックの品質に差が出てしまう為、いかに品質が安定した廃プラスチックを集めるかという事が一つ。

もう一つは少々の付着物が残留している場合の受け入れに難儀しているという所です。これに関しては回収側でもう少し融通が効く体制の構築は必要ではないでしょうか。」

 

 ―最近バッテリーなどの二次電池に関して注目されていますが、そういった領域で話題となっている事はありますか。

「電池の回収に関する問題ですね。現状JBRCがバッテリー(小型二次電池)の回収とリサイクルを行ってはいるのですが、JBRCに加盟していない企業の電池や膨らんだりしているものは回収対象にならないのです。」

 

自治体の処理施設で電池による火災も多発しています

「回収後に自治体が選別して廃棄するというのはもちろんあるのですが、そのまま廃棄されてしまうことが非常に多いです。

それが収集の際に火災事故などを引き起こす原因となったりもしています。」

「もちろん家庭から電池を集めるのは市町村の役割ではあると思います。しかしこれを回収したとしても市町村側からどこに処理を委託したら良いか、という動線がない場合も考えられ、二次電池の回収についても自治体ごとの温度差が出てしまっているというのが現状です。」

 

―透明性の高いリサイクルルートの設定を自治体が行っていく必要があると。

「とはいえ1市町村だけで出来る事ではないので、もっと大きなレベルで行う必要があります。

多くの自治体も同じ悩みを抱えているのではないでしょうか。」

―現状電池のない生活は考えられませんが、それで火災事故が起きてしまっているというのは大きな問題です。

「やはり電池の中にあるレアメタルを上手く取り出して、資源として活用しつつ負荷の無い処理をしていく事が大事ですね。

回収されない電池自体が海外へ流出しているのではないか、という懸念もあります。」

 

 最近は電池と一体化した製品が多い

「元々電池がセパレート出来る製品が出回っていた時代もありましたが、今は多くの製品で電池が一体型という形式、つまり機器内部に埋め込まれている状況です。

例えば携帯可能なゲーム機やノートパソコン、スマートフォンはもうそういったデザインが多いですよね。

そこから分離・回収し処理委託出来るタイプの物なら良いのですが、そうでない場合は市町村によって方法は様々ですが、主に破砕処理を行っています。

水を掛けながら発火の危険を回避しつつ、必要な処理を行っているという所もありますね。

電池を完全放電させた上で破砕処理など必要な手順を行うこともあるようですのでとてもコストも時間も掛かる状況です。これを何とか解決出来ないかというのが切実な願いです。」

 

 「処理業者としては『持ってきてくれた電池は売れるものであれば我々は購入させてもらうが、ニカド電池等売れ筋でないものは買う理由は無い』というのが本音でしょう。

通常ゴミに希釈して埋め立てるという流れは本当にリサイクルという点でも資源循環という点でも、ベストな手法なのか甚だ疑問に感じています。」

―ありがとうございました。

 

 資源処理を巡る様々な問題と、環境問題や循環型社会、SDGsといった外圧に晒されながら資源処理をしていかなければならない状況の昨今。

生活の周りに溢れる有限な資源をどう再利用し、適切に処理をしていくのか。自治体レベルで聞こえてくる悲鳴は、この問題が最早一刻の猶予も無い状況を如実に表していた。

 

 

(IRuniverse Ryuji Ichimura)

 

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