新着情報

2024/05/08   レアアース市場近況...
2024/05/08   旭化成、三井化学、...
2024/05/08   TREホールディン...
2024/05/08   JX金属:日鉱記念...
2024/05/08   三井化学と旭化成新...
2024/05/08   廃バッテリー不適正...
2024/05/08   東邦チタニウム:2...
2024/05/08   【MIRUウェビナ...
2024/05/08   中国のニッケル銑鉄...
2024/05/08   中部鋼鈑:24/3...
2024/05/08   中山製鋼所:24/...
2024/05/08   ユミコア・フィンラ...
2024/05/08   炭酸ストロンチウム...
2024/05/08   4月のアルミ概況お...
2024/05/08   4月の銅の概況及び...
2024/05/08   タンタル原材料輸出...
2024/05/08   精製鉛輸出入Rep...
2024/05/08   精製鉛輸出入Rep...
2024/05/08   タンタル・キャパシ...
2024/05/08   MLCC輸出入Re...

三井ハイテック(6966) 24/1Q2決算メモ  ややポジティブ継続

24/1期電子部品低迷で10.0%増収ながら29.2%営利減予想に減額、25/1期は再飛躍へ

株価7830円(9/22)   時価総額3090億円 発行済株39467千株

PER(24/1DO予24.3X)PBR(3.2X) 配当(24/1予)72円、  配当利回り:0.9%

 

要約

・24/1Q2はモーターコア好調、電子部品不振で5.8%増収もMIX悪化で42.1%営利減

・24/1期モーターコア拡大も半導体部品不振から10.0%増収29.2%営利減に減額修正

・中計計画は半導体回復、モーターコア増で25/1期売上高2540億円、営利330億円変えず

 

 

24/1Q2はモーターコア好調、電子部品不振で13.3%増収もMIX悪化で26.4%営利減

 

 24/1Q2決算が9/12に発表され、9/22に説明会が実施された。24/1Q2は売上高483.49億円(同期比13.3%増、前期比6.8%増)、営業利益46.04億円(同26.4減、同20.4%増)、経常利益62.01億円(同0.6%増、同36.7%増)、税引利益44.94億円(同7.1%増、同39.9%増)。モーターコア好調も電子部品不振で同期比増収ながらMIX悪化で営利大幅減、但し前四半期比ではQ1ボトムに回復し、増収営利増益となった。経常利益は為替円安効果で同期比、前期比ともに増益に。

 

 部門別ではリードフレーム中心の電子部品が売上高146.66億円(同期比18.7%減、前期比9.8%増)、営利16.92億円(同53.0%減、同46.9%増)。スマホやPCなど向け半導体中心に在庫調整が継続、車載向けも自動車生産の回復の遅れが影響、為替影響を除くと実質は62.5%営利減に。但しQ1ボトムに緩やかな回復、円安効果もあり、Q1比で大幅な利益回復、為替影響を除きQ1比24.6%増に。

 

 モーターコアを中心とした電機事業は売上高324.08億円(同期比37.0%増、前期比5.7%増)、営利27.52億円(同9.9%増、同2.0%増)に。自動車メーカーの生産回復を受けて既存製品の需要回復と新規製品の量産開始により大幅増収が継続。利益は設備投資47.79億円(同期比29.03億円増、2.5倍、前期比8.45億円増、21.4%増)に伴い減価償却費が15.09億円(同期比23.5%増、前期比10.7%増)と膨らみ、初期コスト増なども有り利益が伸び悩んだ。ちなみに償却費控除前営業利益は44.23億円(同14.7%増、同5.2%増)と、同期比でも2ケタ増益を確保している。なお同社のモーターコア売上における主機モーター向けは77%を占めるが、その多くはトヨタのHEV向けである。その他は主機以外の車載モーター、エアコンを中心とする家電用モーターコアなどがある。

 

 金型・工作機械は売上高12.75億円(同期比29.8%増、前期比1.5%増)、営利3.32億円(同12.4%減、同8.9%増)となっている。同部門は内部への金型売上が17.64億円(同14.0%減、同3.9%増)あり、内部売上を含む総売上では30.39億円(同0.2%増、同2.9%増)となっている。電機部品部門の需要に対応して内部への金型売上があり、外部売上の伸びが高いものの、全体ではほぼ横ばいとなっており、利益面では投資負担増なども有り、同期比営利減となっている。

 

 全体を通じ営利の16.56億円減益の増減要因では、為替の円安効果で4.10億円、電機が1.94億円のプラス効果に対し、電子部品が22.49億円の減益と大半の減益を占めている。

 

24/1期モーターコア拡大も半導体部品不振から10.0%増収29.2%営利減に減額修正

 

 24/1上期実績を踏まえ、24/1期予想を減額修正、売上高1920億円(期初計画比130億円減額、10.0%増)、営利160億円(同66億円減額、29.2%減)、経常利益158億円(同66億円減額、30.3%減)、税引利益117億円(同49億円減額、33.5%減)予想とした。

 

 

 セグメント別では電子部品が売上高1330億円、営利105億円、電機部品が売上高570億円、営利53億円、金型・工作機械が内部売上含む130億円、営利11億円予想。電子部品は半導体の在庫調整が下期まで継続、受注回復は来期となる見通し。車載向けはQ1ボトムにQ2より改善、Q3以降も自動車生産の回復を見込む。但し、日系自動車メーカーの中国での販売不振などがあり、大きな回復は望めないとしている。利益面では減収影響が大きく、収益の大幅悪化を見込む。なお電子部品部門は設備増強も64億円に減額、償却費も36.5億円と若干抑制する。一方、電機部品は電動車向け駆動・発電用モーターコアの需要拡大が続き、大幅増収、投資負担増でも売上増に近い利益増を見込む。ちなみに設備投資は315億円(2.1倍)、償却費79億円(43.3%増)を想定、減価償却控除前営業利益は184億円(25.9%増)と、収益性は増設設備本格稼働が下期以降を考慮すると多少利益率は低下するものの、基本的には利益率維持する見通しに。金型・工作機械はモーターコア増産に伴う内部売上が減少、外部への金型販売が伸びる見通しで、総売上の伸びが見込め無いため、こちらも設備投資を13億円(2.6倍)、償却費8.4億円(11.4%増)を見込み、利益の伸びは投資負担などで営業減益見通しに。

 

 全体では共通設備含め設備投資を420億円(2.0倍)、これに伴い減価償却費が125億円(31.2%増)の計画となっており、減価償却費控除前営利が285億円(11.3%減)と実質的には減益率が半減する見通し。また為替前提が136円(2.73円の円安想定)で、売上の前提が会社想定並みに推移するとみられる中で、現状の為替推移で会社予想を若干上回る経常利益が見込まれる。

 

中計計画は半導体回復、モーターコア増で25/1期売上高2540億円、営利330億円変えず

 

 同社は2022年3月に新中期経営計画として25/1期に売上高2300億円、営業利益300億円を目指す計画を発表した。しかし電動車市場の拡大、また最大手ユーザーのトヨタのEV戦略の大胆な変更、さらに為替の大きな変化などで、3月に新中計の増額変更を行った。具体的には売上高を240億円増額し2540億円、営業利益30億円増額し330億円予想、為替前提は1$=110円を130円とした。売上高の構成は具体的な開示がないが、世界的なEV拡大の中で、売上増額の中心は電動車向け。設備投資も、当初計画の3年間で680億円に対し320億円を上乗せし1000億円とした。なお今回、24/1期を大幅減額修正したが、3月に増額した修正通計予想については変更しなかった。これは売上の減額が電子部品であり、モーターコア事業は売上増額となっており、電子部品の落ち込みが一時的として25/7期の回復を見込んでいるため。

 

 成長の中心となるのはモーターコア事業。同社は従来のカシメ方式によるモーターコア積層に加え、カシメブロック、環状取りコア、そして樹脂接着積層など、新積層技術を投入している。同社はカシメ技術によって、自動車用モーターコアを年間約160万個生産、世界シェア30%を誇るが、中心となるのはトヨタ向けのHEV用モーターコアとなっている。しかし本格的なEV拡大の中で新たなユーザー開拓の意味も有り、世界の各拠点で新技術対応も行い、事業拡大を加速する方針。

 

  具体的にカシメブロックは顧客のカシメ積層のモーターコア特性を向上させたいとの要求に対し対応した。現在、積層鉄心の製造過程では上下方向で隣り合う電磁鋼板同士を締結する手段として、ダボカシメ(小さな突起を利用して塑性変形を利用して接合する方法)及び溶接が広く利用され、同社はHEV向け等で圧倒的な強さを有する。この締結手段はコスト及び作業効率性の点で優れるが、高級EV用モーターでは低鉄損、高トルクの要求が強く、樹脂材料又は接着剤を用いて電磁鋼板同士を締結する方式を採用することが多く見られる。電磁鋼板は板厚の2乗に比例し鉄損となる過電流が発生、電磁鋼板を薄くして積層する事が必要となり、薄型化に対し接着方式は平滑かつ鋼板にストレスを与えず、機械精度も優れているとして採用されている。特に欧州メーカーは接着接合方式を選択する例が多い。同社はモーターコア外周面にモーター形状に干渉しないカシメブロックを生成、カシメブロックを付けた状態でモーターコア内はカシメレスを実現、接着剤の厚みが無く鋼板占有率も高められ、鉄損の削減を可能とした。

 また電磁鋼板は打抜きやスリット加工、積層などで加工時の残留応力が磁気特性の劣化に寄与し鉄損を増加させる性質がある。この残留応力低減はひずみ取焼鈍が有効であるが、接着方式は高温で接着剤が溶け焼鈍ができず、この点で同社のカシメブロックの優位性がある。トヨタは焼鈍方式を採用、最大ユーザートヨタのEV戦略が本格拡大となれば改めて伸びが期待される。なお接着方式では短時間で硬化する接着剤を利用しているが、製造設備のラインが長くなる等の問題もあり、欧州大手メーカーでも改めて新方式に興味を持つところが出ている。但し樹脂積層方式の認知度が高く、同社は黒田精工の特許を侵害しない新方式での樹脂積層方式の製品も製品化、量産に対応する体制が整ったとのこと。具体的にはマグネットモールドという特許技術を使用し、熱硬化エポキシ樹脂を使いローター内のマグネットを固定する技術を開発。従来の接着工法に比べ充填率が高く短時間で硬化し、高精度ポスト基準でモールドを施すことで、高性能低価格のローターコアを提供できる。

 但し、同方式の利点を活かし品揃えの強化として考えるが、主戦場は新技術を含めたカシメ方式を拡大させる方針とみられる。もう一つの新積層技術は分割コアの精度と生産性を高めた環状取りコア技術。昨今、モーターの小型高効率、高出力化に対しモーターの鉄心を複数の部品に分割することでコアの鉄心損失を低減し、巻線効率を向上させ銅損失を低減するため採用が増えている。分割コアではモーターコアの真円度が静寂性やモーター寿命、トルク変動などに影響が及ぶため、分割コアの組立精度が要求される。同社は一体コアとして打抜きを実現、内径真円度を向上、がたつき(コキング)の大幅低減に成功した。採用事例では、電動ステアリングなどでコキングによるハンドル操作でがたつかないなどで、主機モーターコアでは同社を利用しないニデックなどでも採用されているとのこと。なお同環状取りコアは主機モーターとは異なり、金型販売として伸ばす事が多くなるとみている。いずれにしてもトヨタ向けのHEV用カシメ方式で売上を伸ばしてきた同社は、トヨタ以外でも着実にユーザーを広げ、EVでも新技術で対応、黒田精工と2大金型メーカーの戦いが続くと見られる。

 

 

 電子部品事業は半導体の立ち直りが2024年Q1にずれ込む見通しも、車載関連ではパワー半導体向けリードフレームなどの拡大も有り、25/1期は2桁増収が見込まれる。なお先端半導体においてはフリップチップBGA基板の多用が見込まれるが、車載などでは接着強度など、安全性重視の観点も有り、リードフレームの地位は変わらない見通し。全体的にはリードフレームも多ピン化、狭ピッチ化など高い技術を必要とする製品群も増えており、業界トップクラスのインナーリード先端ピッチ0.12mmに対応、半導体生産の増加とともに増産効果と収益性の回復も進もう。

 

 金型・工作機械は、車載主機以外ではモーターコアビジネスではなく金型販売も積極展開する見通しで、電動ステアリングやエアコン向けなどに精密プレス用金型、MACシステム(三井オートマチックコア・アアッセンブリ・システム:打抜きから結束にいたる工程を一つの金型内で行ない高い生産性を誇る)などを提供していく。

 

 全体として、電子部品については多少回復が遅れる見通しで、中計会社計画について多少未達懸念はあるものの、改めて25/1期以降、収益の再成長が続くと期待する。

 

 株価は24/1期会社減額予想EPS320.1円に対し、PER24.5倍と東証プライム電機平均PER19.8倍に対し若干割高な水準にある。しかし同社はQ1をボトムにQ2は前期比で回復を見せており、今後も電子部品の回復が本格化すれば再度成長が加速するとみられる。5月にトヨタがEV戦略で2030年までにEV関連投資を1兆円増増加し5兆円にすると表明、今後、新たなEV主機用モーターコア受注の成約が期待される。25/1期にはリードフレームの収益回復も加わり中計予想には達しないとみられるが、モーターコアは会社計画を上回ってくるとみられ、減額修正の悪材料は株価に織込んだと判断、25/1期予想EPS615円を前提に次世代自動車関連の注目企業として中期的に大台回復もあると考え、ややポジティブ継続とする。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

関連記事

関連記事をもっと見る