ベンチマークミネラルズ、ヒルトン東京でカンファレンス開催②2日目レポート
リチウムイオンバッテリーマテリアルに特化したリサーチ企業であるベンチマークミネラルズは、9月20日・21日の2日間にわたり、新宿のヒルトン東京でカンファレンス「バッテリー ギガファクトリー アジア パシフィック」を開催した。2日目の講演の一部に参加したため、内容を報告したい。
このカンファレンスは、主にアジア地域の政府、業界、金融が参集し、鉱山から電気自動車に至る地域のリチウム イオンバッテリー経済の方向性を示すのが狙い。参加企業は7~8割が欧米系で、欧米目線からのアジアを中心とした事業展開、特に過度な中国依存からの脱却について述べたものが多かった。
例えば12時40分からの「Building anode supply chains(サプライチェーンの確立について)」のタイトルでのパネルディスカッションでは、International Graphite Ltd社CEOのAndrew Worland氏、Gallois SP2 Carbon USA Co社のGlobal sales and Marketing ManagerであるTim Nelson氏、Buxton Resources Ltd社CEOのMartin Moloney氏の3氏が登壇した。このうちWorland氏とMoloney氏はオーストラリアで、Nelson氏はマレーシアでそれぞれ事業を展開する。
サプライチェーン確立の要素は、やはり場所が大きな要素となる。パネリストらはいずれも、オーストラリアやマレーシアは電池の原材料となる資源類の採掘所に近く、欧州に比べ低コストで輸送ができると話した。Moloney氏は新たな事業を立ち上げたばかりで、新工場の場所は電力発電所が近くにあったことが決め手になったと吐露。ただ、人材確保や地域コミュニティとの関係など課題も抱え、Nelson氏は「マレーシアの場合は政府機関との協力が非常に重要になる」と述べた。
午後の遅めの時間からは、ベンチマーク社からのスピーカーが相次ぎ登壇した。このうち、同社Sustainability Analystの Olivia Lin氏は「リチウムイオンバッテリーが本当に環境保護なのか」と疑問を投げかけ、中国で生産される硫酸コバルトなどの生産過程も含めて、二酸化炭素(CO2)排出量などを検証した。
同じくベンチマーク社のSenior Analystである Sarah Colbourn氏はバッテリーリサイクルの中国依存の現状について話した。
さらに、Botree Cycling社の Gangfeng Liu氏は中国を中心に急速に普及するリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリー(LFP)について、再利用の技術面、コスト面でのハードルの高さを指摘し、「本当に使用を普及させて良いのか、世界レベルでよく考えなくてはならない」と警鐘を鳴らした。
ベンチマーク社のProject Manageであるr Daan De Jonge氏の登壇は、このカンファレンスの全ての講座の最後となった。同氏はレアアース市場について、埋蔵量・処理能力ともに中国が圧倒的に優位で、「覆すのは難しい」と話した。
ただ、生産技術面ではモンゴルやベトナムも追いつきつつあるとした上で、「欧米としてはやれることをやっていくしかない。資金が集まればできることも増えていく」とし、電池向け資源の獲得に投資家の注目が集まることが大切だと述べた。
全般に、この分野での中国勢の優勢や、産業の過度な中国依存に警戒感を抱いている論調が目立った。昼間のパネルディスカッションでは、中国以外の顧客開拓やEV以外の電池の使途について語られ、最後のレアアースについての講演ではレアアース貿易の政治的利用に対する懸念が示された。
カンファレンスは午後4時過ぎ記念撮影をして終了。しかし参加者の中にはその後も残って交流を楽しむ姿も多かった。
関連記事: ベンチマークミネラルズ ヒルトン東京でカンファレンス開催 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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