2023年度第3/四半期鉄鋼需給説明会@日本鉄鋼連盟 需要産業の動向(建設業)
一般社団法人日本鉄鋼連盟は、鉄鋼需給動向について、四半期に一度、鉄鋼需給説明会を開催している。 東京地区においては、2023年10月31日(火)に2023年度第3/四半期鉄鋼需給説明会を対面式で開催した。大阪、名古屋は11月1日(水)にそれぞれ開催された。
第3/四半期経済活動は総じて緩やかな持ち直しが続くものの、鉄鋼需要は減少傾向が継続するとした。
写真左:鉄鋼連盟業務部(堀尾Grリーダー) 中央:(株)メタルワン 水野正士執行役員 右:日本鉄鋼連盟 海外市場 鈴木卓也シニアマネージャー
説明会内容
・最近の鉄鋼需給動向について
日本鉄鋼連盟 需給調査委員会 委員長 (株)メタルワン 水野正士執行役員
・トピックス/中国鉄鋼業の最近の動向
日本鉄鋼連盟 海外市場鈴木シニアマネージャー
本記事では、
・最近の鉄鋼需給動向のうち、需要産業の動向(建設業)について紹介された内容を含め、
詳細を整理したので報告する。
最近の鉄鋼需給動向について、説明される水野委員長 右写真→
2023 年 4~6 月期の需要産業動向を振り返ると
建設では、土木工事受注額は、公共・民間土木ともに 増加傾向を辿った。
・建築では、住宅着工戸数は、貸家の増加が続いたものの、持家・分譲が減少し、 前年を下回った。
・非住宅の着工床面積は、倉庫が大幅減となったほか、工場、事務所なども軒並み減少し、非住居用全体で前年同月比 2 桁減少となった。
2023 年 7~9 月期については、
建設では、土木工事受注額は、公共・民間土木ともに減少が見込まれる。
・建築では、住宅は持家の減少傾向が継続し、貸家と分譲も資材高騰等から前年水準を下回る見通しである。
・非住宅着工床面積も、人手不足や建設コスト上昇による工期の遅れなどから、前 年を下回る見込みである。
<概況>
2023年度第2四半期(7~9月期)~2023年度第3四半期(10~12月期)にかけての鉄鋼市況の概況についての概要が説明された。
経済活動は総じて緩やかな持ち直しが続くものの、鉄鋼需要は減少傾向が継続。
<経済動向について>
10月2日に日銀が公表した9月短観によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、
産業全体では前回(6月)から2ポイント上昇のプラス10となった。
内訳をみると、大企業製造業の景況感について、半導体不足などの供給不足の緩和から回復が進んだ自動車のほか、石油・石炭製品など幅広い業種で上昇したこともあり、
製造業 では 2 四半期連続で改善し、前回調査 (同年 6 月調査 )から 4 ポイント上昇の プラス9 となった。先行きも上昇し、1ポイント上昇のプラス10が見込まれている。
一方、大企業、非製造業については、コロナ禍からの経済再開やインバウンド需要等々で、今期は4ポイント改善のプラス27と、6四半期連続で改善し、1991年11月調査依頼の高水準となった。
なお先行きについては、足元の円安、原油高によるコスト増や、人手不足から来る人件費上昇の懸念もあって、6ポイントの悪化を見込んでいる。
参考
図1 参考:10月発表 日本銀行「短観(短期経済観測調査」
10月31日の経産省の発表によると
「生産は一進一退」
2023年9月の鉱工業生産は、季節調整済指数103.3、前月比0.2 %増となった。
これまでの生産の動向については、5月は、それまでの上昇の反動に加えて、部材供給不足の影響などを受けて低下したものの、6月は、堅調な自動車工業の影響等を受けて上昇した。
その後、7月は、生産用機械工業の受注減少等の影響により低下し、8月は、自動車工業の工場稼働停止などを受けて低下した。
こうした中、9月は、自動車工業を中心に多くの業種が上昇したことなどから、全体として上昇した。
国内鉄鋼市場では、自動車向けの回復が続いている。
需要産業別にみると、製造行の自動車部門では、8月の四輪車生産(乗用車・トラック計:速報)が前年同月比9.3 %増とで 8 か月連続で増加している。
一方、8月の産業機械部門門(鉱工業生産指数速報値)のうち、生産用機械(前年同月比 20.0 %減)とや汎用・業務用機械生産(同 8.3 %減)はともに減少している。
さらに、建設業では、8月の非住宅着工床面積は前年水準を下回っている。
こうしたなか、9月の粗鋼生産(速報値)は前年同月比1.7 %減の702万トンと2か月連続で減少したものの、普通鋼熱間圧延鋼材生産量は輸出向け出荷の大幅増を背景に4か月連続の増加の見通しとなった。
参考MIRU記事
2023年9月(速報) 鉄鋼生産概況(銑鉄及び粗鋼生産 詳細) | MIRU (iru-miru.com)
このような背景の中、
2023年10月~12月期粗鋼需要見通しを、2,233万トン[前年同期(2,141万トン)比4.3 %増]と10月12日、経済産業省は発表した。前期実績見込み(2,196万トン)比でも1.7 %増
参考MIRU記事
2023年度第3四半期鋼材需要見通し @経産省 特殊鋼需要見通し(概要) | MIRU (iru-miru.com)
<需要産業動向>
需要産業の動向(建設業)
4~6月期から7~9月期中の動き及び10~12月期見通し
<公共土木工事受注額>
・1~3月期の公共土木受注額については前年同期比 8.8 %増、3期連続の増加
・4~6月期の公共土木受注額については前年同期比微増(0.2 %)、4期連続の増加
・7~9 月期については、「防災、減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」関連の工事が引き続き下支えとして期待されるものの、前年同期との比較的においては、若干下回る見込み。
・10~12月期見通し:「防災、減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」3年目にあたり、予算案も一定水準が維持され、前年と同水準の需要が見込まれ、前年比横ばいの見通し。
<民間土木工事受注額>
・1~3月期の民間土木工事受注金額(機械装置等工事を除く)は前年同期比 6.9 %増、4期連続の増加
・4~6月期は、海外での景気減速の懸念から民間企業の設備投資意欲に一服感がみられ、前年実績を下回る見通しであったが、微増(1.1 %増)となり5期連続の増加。
電気ガス、運輸通信等が減少したものの、製造業・鉱業・建設業、不動産が増加した。
・7~9月期は、人手不足の問題及び建設コストの増加等から工事の遅延が生じており、前年比減少が見込まれている。
・10~12月期見通し:円安や資材価格等の下押し要因はあるものの、企業の設備投資がコロナ前の水準に戻りつつあるため、前年同期比で増加する見通し。
<建築:住宅部門>
・1~3月期の新設住宅着工戸数は、前年同期比 0.6 %の20.2万戸2期ぶりの増加。
・4~6月期は、建築コスト上昇による住宅取得マインドの低下が予想されたが、貸家は増加傾向をたどった。一方、持家・分譲が減少、前年同期実績を4.7 %下回った。2期ぶりの減少。
・7~9月期は、持家は建築コスト上昇などにより住宅取得マインドの回復が見込めず、減少傾向をたどるとみられ、貸家・分譲にも一服感がみられることから前年を下回る見通し。
・10~12月期見通し:持家は資材価格の高騰等を背景に厳しい受注環境が継続することから減少傾向が続くと見られ、これまで堅調であった貸家・分譲も一服感が窺えることから、前年を下回ると見られる。住宅部門全体の活動水準は前年同期比で減少する見通し。
<建築:非住宅>
・1~3月期の非住宅着工床面積は、前年同期比 2.9 %減の1,027万㎡、2期連続の減少
・4~6月期は、再開発大型案件や倉庫、物流施設案件が引き続き堅調に推移しているが、中小物件が盛り上がりに欠けるたため、前年同期比 17.4 %減の 1,121 万㎡、3 期連続の減少
・7~9月期は、人手不足や資機材などの調達コストの高騰、物流能力などの影響から、中小案件を中心に低迷が続くと見られる。前年を下回る見込み。
・10~12月期見通し:資材価格の高騰や人手不足等により、中小案件を中心に工期の延期・中止が散見されるなど、低調な状況が続くと見られるが、前年の活動水準が低かった反動もあり、非住宅部門の活動水準は前年を上 回る見通し。
(IRUNIVERSE tetsukoFY)
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