タングステン輸出入Report#81タングステンAPT輸入 過去最低輸入量で推移
日本のタングステンAPT輸入は、2023年1-10月の輸入量が過去最低だった2020年を下回り、過去最低記録を塗り替えてきた。最大輸入先の中国からの輸入量も減っているが、それ以上にベトナムからの輸入の減少が大きく影響している。
【1】タングステンAPT輸入概況
財務省の貿易統計によると、2023年10月の日本のタングステンAPT(タングステン酸塩、 パラタングステン酸塩及び過タングステン酸塩系のタングステン化合物)の輸入量は110.1トンだった。6か月ぶりに100トンを超えた。それでも前年同月比15.2%減少し、2か月ぶりにマイナスに戻した。前月は、5か月ぶりにブラスだった。
10月の同輸入平均単価は、キロあたり4,021円、前月より202円安だった。前月は、1ンぶりの高値となり、依然として高値圏にある。
2023年1-10月の同累計輸入量は751トン、前年比29.2%減少した。ついに同統計上の過去最低だった2020年の同累計を僅かに下回った。
【2】タングステンAPT輸入先
日本のタングステンAPTの輸入は、これまでも大半を中国からのもので占めている。ただ、昨年あたりは、中国以外、特にベトナムからの輸入が増えたことで、中国依存度がやや低下した。その結果、昨年は、同輸入全体のうち、中国からの輸入量が78.6%と、2年連続で8割を下回り、2016年以来の低い寄合となった。ただ、2023年は、再び中国依存度が高くなり、1-10月の累計で見ても同輸入量全体の88.2%まで上昇している。
その高い依存度の中国からの同輸入量は、昨年よりも大きく減らしている。ただ、中国からの輸入は、2020年の同輸入量よりもまだ僅かに多く推移している。
日本のタングステンAPTの輸入量が過去最低の2020年を下回ったのは、ベトナムからの輸入量減少が大きく影響している。ベトナムからの輸入は、今回10月を含めて6月から輸入が途絶えている。5月の輸入量も100キロと、それまで毎月20トンの輸入が続いていた状態と比べて、大幅に減少しており、実質半年間、輸入が途絶えている。
2023年10月の日本へのタングステンAPTの主な輸入先と輸入量と輸入平均単価と前月との単価差は以下の通りである。
中国 110トン4,013円(196円安)
ドイツ 120キロ1万1,167円(5万7,533円安)
【3】税関別
税関別に見ると、前回も少し紹介したが、2023年は昨年より輸入量が減少しているところが多い。そうした中、秋田船川が輸入量を大きく増やしている。
今回10月は、名古屋に纏まった量の同輸入があった。これは、1月以来、9か月ぶりである。この結果、名古屋も昨年よりも輸入量が増加ペースに転じている。
また、今回の名古屋の纏まった輸入があったことで、2023年の1-10月の累計で見ると、神戸を筆頭に、秋田船川、伏木、大阪、東京、名古屋の6税関にほぼ均等に輸入が分散した。ここまで輸入が分散することは、近年あまり見ない。
また、同輸入平均単価は、秋田船川が他の税関よりも比較的低く抑えていたが、今回纏まった輸入があった名古屋も単価が低く抑えられている。
2023年10月の日本へのタングステンAPTの主な輸入税関と輸入量と、キロあたりの輸入平均単価は以下の通りである
東京 20トン4,131円
神戸 40トン3,904円
伏木 20トン4,309円
名古屋 30トン3,882円
※記事内のグラフ・図表は、MIRU.comにて作成
(K.AKIYAMA)
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