【年末企画・ガリウム・ゲルマニウム】中国規制に沸いた1年、8割高騰も伸び悩み
2023年のガリウムとゲルマニウム価格は中国政府が夏に輸出規制の強化を発表したことで年後半に大きく動いた。ただ、足元では中国外からの迂回調達が進むほか、中国も一部業者に輸出認可を与えるなどしており、品薄への恐怖感から買いを入れる動きは一巡。秋以降の価格は伸び悩みが目立つ。
■ガリウム、7月平均価格が27%上昇
過去1年間のガリウム価格の推移(EU Freemarket)($/kg)
ガリウム価格は2023年12月下旬時点で$505/kg程度と、2022年末に比べ80%高となっている。中国当局は7月3日にガリウムとゲルマニウムの輸出を許可制にすると発表。7月の平均価格は前の月から27%上昇するなど、直後は品薄への恐怖感から先回り買いが広がった。
ただ、8月の規制開始を経て、その後の価格上昇は穏やかになっている。12月の平均価格の上昇率は前の月に比べて2%程度。秋に「中国が米企業1社に対し輸出を許可した」と明らかになり、ぽつぽつとだが輸出が行われているようだ。また、日本の商社から「欧州経由で入手した」との証言が挙がったように、迂回貿易ルートも整い始めた。もちろん中国以外からのガリウムの調達経路も探られている。
とはいえ、関係者の間ではまだまだ様子見気分が強い。現在の値動きの鈍さは「各社の目先の在庫が充足しているため」(別の商社関係者)といい、在庫が尽きればまた買いが入る可能性がある。2024年は在庫切れに悩む海外企業と、中国国内の関連企業の業績悪化に悩む中国側の根競べが続きそうだ。
■ゲルマニウムも様子見ムード
過去1年間の金属ゲルマニウム価格の推移(99.99%china)($/kg)
ゲルマニウムはガリウムほど中国依存度が高くなく、また海外でも容易に生産できるとの見方から、規制発表当初から値動きは大きくなかった。金属ゲルマニウムは12月下旬時点で$1420/kg程度と、2023年の1年間で24%上昇した。2022年5月以来の高値水準になるが、同年冬に$1000ちょうど近辺まで落ちた分を取り戻しただけとも言える。
12月8日付のレアメタルニュースによると、中国からのゲルマニウム輸出は10月に欧州や日本向けに規制前の注文分が輸出されたものの、規制実施後はやはり審査が長引き動きがないようだ。現時点ではガリウムと同じく様子見を決め込む関係者が多いとみられる。
酸化ゲルマニウムもやはり動きは鈍かった。12月下旬時点価格は$872.5/kg程度で、1年間で12%上昇した。
過去1年間の金属ゲルマニウム価格の推移(99.99%china)($/kg)
(IR universe Kure)
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