【年末企画・タングステン】APT6%下落、需給限定で値動き鈍い 24年も動き見込めず
2023年のタングステン価格は小幅な値動きにとどまった。供給は中国からの供給量が決まっていることなどを背景に10年スパンでほぼ一定。一方、需要の方も世界的な製造業不振などを受けて低迷し、動意の鈍さから値下がりした。2024年に向かっても大きな手掛かりに乏しく、当面、動意は鈍そうだ。
■APTは$300で満足感? 酸化タングステンは3月から値動きなし
過去1年間のタングステンAPT価格の推移(EU Free mareket)($/MTU)
タングステンAPTは2023年12月下旬時点で$312.5/MTUと、年初から約6%値下がりした。下落率は2022年の3%よりは大きかったが、43%値上がりした2021年に比べると動きは鈍かった。逆に言えば、2021年夏に節目の$300に載せてからは十分な高値圏にあり、さらなる高値での取引が躊躇される水準にあるともいえる。
過去1年間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
動意の鈍さは特に酸化タングステンに顕著だった。酸化タングステン価格は3月23日から仲値$346.4/MTUで横ばい。2月から3月にかけて$353にやや値上がりしたものの続かず、年初時点の$345に比べ0.4%と小幅に高い水準に戻してからは動きがない。もっと長いスパンで見ても、2022年春からはほぼ横ばいが続いている。
タングステンは中国での生産量が多い鉱物の1つだが、中国当局は2005年ごろから国内需要の高まりを受けて価格引き上げや輸出統制を行っており、現在は中国産タングステンの輸出は制限されている。足元では韓国のタングステン鉱山の再開などの情報もあったが、実態が伴わず価格には反映していない。
一方、需要についても世界的な製造業不振を背景とした超硬需要が伸び悩み、タングステン需要も低迷した。ロシアのウクライナ侵攻が長引いているほか、ガザでの紛争ぼっ発を受けて兵器向け需要を期待する声もあるが、金属専門商社の幹部は「実感できていない」と話す。
■24年は需要回復も再生品利用で相殺か
2024年は製造業需要が改善すれば、タングステン需要もある程度回復しそうだ。しかし、中国産の供給が限られる状態が長年続いたため、西側諸国はタングステン仕入れに関して、まず自分たちで生産したリサイクル品を使用し、続いて自分たちの鉱山採掘分を使ったうえで、それでも足りない分に関して中国からの輸入に頼るという仕組みを作ってきている。需要が増加してもリサイクル品で間に合ってしまえば、やはり需給が均衡して値動きは鈍くなりそうだ。
(IR universe Kure)
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