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会話で読み解くLME入門20#暴れ竜はどう動く!? 欧米、下旬の金利の行方と中国、春節前需要が焦点

 天災、大事故が連続発生し、暴れ竜を思わせる波乱の幕開けとなった2024年。昨年来のLME銅相場(現物)を巡る値動きとその在庫の推移を改めてチャートにして眺めてみると、口を開けた竜が獲物にいままさに襲いかからんばかりの図柄が浮き出て一瞬身構えさせられる。さて、その竜がここからどんな動きを見せるのか。下旬には欧米の金融政策決定会合、そして、その先には中国の今年の需要動向を占う大きな判断材料にもなり得る春節休み(2月10日~17日)前の在庫手当て時期も控えている。目が離せないスケジュールを前に、われらが堂林記者、どうにも落ち着かない。連絡をとった先はやはり師匠だった。今年もドタバタの顛末になりそうな気配だが、宜しく1年お付き合いの程を。

 

暴れ竜の姿を彷彿とさせる価格と在庫のチャート

 

鈴木さん:遅いおめでとうになったけど、正月はどうだった。1カ月ぶりかな。気がせいているようだから、お屠蘇気分を振り払って、さっそく本題に入ろうか。LME銅相場、年明けは何度か反発局面を挟みながらも、下落基調が続いてきた。週明け月曜日には1トン8,235ドル程度まで下げたけど、昨日16日は小反発した。この辺りが下値抵抗線という感じなのかな。昨年末28日にあった8,530ドルの直近の高値と8200ドルを挟んだボックス圏の動きといえるのかもね。年明けの下げは、4日にFRB(米連邦準備制度理事会)が公表した12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録要旨が、早期利下げ期待を後退させる内容で、ドル高が進行した影響が出たということだろうね。

 

堂 林 君:早ければ3月の利下げ実現を前提に、前のめりの動きが市場では強まっていただけに、戦略の見直しを迫られた市場関係者は多かったはずです。議事録要旨では「政策金利はピークにある可能性が高く2024年中に利下げが開始されるとの認識が示される一方で、景気抑制的な政策スタンスを『当面』維持するのが適切である」といったト―ンでしたからね。5日に発表になった12月分の雇用統計で、米国の労働市場がなお良好であることが示唆され、早期利下げ観測をさらに後退させたことも、LME相場には弱材料になった印象です。これで為替も大きく動きました。ドル・円でみると、上げ下げをくり返しながらも、昨年12月に141円まで水準訂正があった後、年明けもその流れを引き継ぐ形で140円台でスタートを切りましたが、17日現在、再び1ドル=147円程度までドル高・円安が進行しています。

 

鈴木さん:11日に発表になった12月の米CPI(消費者物価指数)も前年同月比で3.4%の上昇となり、伸びは前月の3.1%から加速した。これも、「早ければ3月にも」との市場の早期利下げ観測に冷や水を浴びせる結果になったよね。米国の金融政策の動向や経済指標の動きが引き続き、相場水準を左右するポイントになっている。今年最初のFOMCの開催は月末に予定されていたね。

 

堂 林 君:はい、1月30‐31日の日程です。これに先行してECB(欧州中央銀行)理事会が25日に予定されています。すでに市場は、その結果待ちの様子見モードに入っているといえるのかもしれませんね。その行方どうみますか。

 

鈴木さん:もともと、この段階での利下げの選択肢はないわけだから、据え置きか、いまの時点では限りなく想定しにくい上げかの2択だけど、まあ、大胆に予測すれば4会合連続の据え置きに落ち着くんじゃないかな。米サプライマネジメント協会(ISM)が5日に発表した12月の米非製造業(サービス業)景況感指数は前月から2.1ポイント低下して50.6、雇用環境を示す指数が20年7月以来、3年5カ月ぶりの低水準となったとも聞いている。3日に先に発表のあった12月の製造業景況感指数も47.4で、約22年ぶりの長期低迷を記録したということだった。5日発表の雇用統計で出た「強い経済」を打ち消すよう指標もあるわけだから。

 

堂 林 君: 30日までに予定されている重要な経済指標もじっくり見極めたうえで、31日に政策決定ということになるんでしょうけど、その結果と同時にパウエル議長がどんな見解を示すのか、興味深いですね。とりあえず主要経済指標としては今日22時半に小売売上高、26日に個人消費などの発表があります。

 

鈴木さん:話が米の金融政策に偏り過ぎたかな。需給動向もみておこうか。前からあなたが言っていた在庫状況はどうなの。

 

堂 林 君:ええ。直近のピークは12月7日の18万2,750トンで、そこから消化が進んで16日現在で15万4,725トンになっています。2万8,000トン超圧縮された形です。それでもかなりの高い水準にあると思いますが、相場は8,300ドル前後のレベルを維持しきています。高水準の在庫に対する「耐性」が備わったというか、需要の底堅さみたいなものは感じています。

 

鈴木さん:国際銅研究会の予測によると、2024年は供給超過で、その幅は46万7,000トンということだったよね。その数字について、私は「結構重い」と判断したと思うけど、前提を見直す必要があるのかな。

     

堂 林 君:鈴木さんが以前、「皆が同じことを言い始めたら疑ってかかれ」と指摘されていましたが、まさにそれが起きている印象を持つんです。銅を巡って、中国の需要が弱いという話になりがちですが、オーストラリアの産業科学資源省がまとめた12月の四半期リポートなどをみると、2023 年 1~9 月期で前年同期比 8.4%増の 2,070 万トンとなった世界の銅地金消費の伸びをけん引したのは、主に中国とその他のアジア諸国だと分析しています。中国については特に「住宅不動産セクターが直面している課題にもかかわらず、インフラ部門をけん引役に2023年に入ってから銅需要は好調を維持している」と指摘していました。 

国内生産の増加やドル高で、2023年の中国の銅輸入(未加工銅と銅製品)が6.3%減の550万トンだったと外電が報じていましたが、中国国内での生産が増え、仮に需要構造が銅地金から銅鉱石やスクラップに大きく変わったとしても、鉱石から地金、スクラップまで世界の銅流通総体として見れば、やはりそれは強材料になるはずだと思うんです。高水準の在庫を抱えて、1トン8,000ドルラインを割り込まず、その一段上の水準にあるのは、そうした背景があるのかとも考えています。

 

鈴木さん:LME在庫の内訳をみると、キャンセルワラント比率などは16‐17%程度と低いし、投機筋が活発に動いている気配も見えないよね。その意味で言うと、いまの相場水準は掛け値なしの実需に支えられているという見方もできるわけか。だから大崩れはない。あなたはそう見ているということなのかな。

 

堂 林 君:はい。意外と強いのかと。17日に発表のあった2023年の中国のGDPも物価の変動を調整した実質で前年比5,2%増となって、中国政府の「5%前後」という目標を達成しました。この数字、ゼロコロナ政策で景気が低迷した22年からの反動増という側面もあり、いろいろな見方ができるんでしょうけど、それなりの実績でした。2月10日からの春節の連休を前に、連休明けを見据えて銅地金からスクラップまで、これから3週間、中国でどの程度在庫手当ての動きが広がるのか、見てみたいと思います。それが中国の実需を見極めるチャンスにもなるかと思っています。

 

鈴木さん:米の金利据え置きを市場が織り込み済みとしたら、そちらの方が相場的には大きな材料になってくる可能性もあるね。1年スパンの供給超過予測を前提に、目先の相場を読むのはリスクがあるということになるかもしれない。カナダの鉱山会社ファースト・クァンタム・ミネラルズがパナマで所有する巨大銅鉱山コブレ・パナマ銅山の閉鎖問題などもあって、需給予測自体流動的な要素を抱え込んでいるしね。

 

堂 林 君:春先以降の相場展開を予測する意味でも、この際、しっかり中国の需要動向をおさえておきたいと思っています。

 

鈴木さん:その構えでよいと思うよ。暴れ竜の首をしっかりおさえられるか、面白い。良い経験になる。頑張って。

 

(IRuniverse G・Mochizuki)

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