週刊バッテリートピックス 「月面探知機で太陽電池が不具合」「EVの耐寒性問われる」など
2024年1月15日~1月20日のバッテリー業界では、月探査機「SLIM(スリム)」が日本初の月面着陸に成功したもののシャープ製の太陽電池が発電できないとされ関心を集めた。能登の地震の影響でポータブル電池への注目が高まり、寒波の中での電気自動車(EV)向けバッテリーの使用感も問われた。
<国内>
●月探査機SLIMが月面着陸も太陽電池発電できず シャープ製
(出所:JAXAHP)
宇宙航空研究開発機構(JAXA、ジャクサ)は1月20日、月探査機「SLIM(スリム)」が、日本で初めて月面着陸に成功したと発表した。月面着陸は旧ソ連、米国、中国、インドに次ぐ5か国目。ただ、機体に搭載された太陽電池が発電できない状態で、今後予定している探査に支障が出るおそれがある。
SLIM搭載の太陽電池を巡っては、シャープが月面着陸発表に先立つ1月19日に、宇宙用に開発した高効率の太陽電池を報道陣に公開したばかりだった。従来品と比べて大幅に軽量化されており、高い変換効率に加え、曲げられる柔軟性も備え、スリムのメイン電源を担っているとしていた。
●ECOFLOW、次世代ポータブルバッテリー発売 能登地震で注目
ポータブル電源開発のECOFLOW Technology Japan(東京都江東区)は1月18日、大容量の次世代ポータブルバッテリー「DELTA Pro Ultra」を発売した。単相三線式の入力に対応するポータブルバッテリーの発売は日本初。
能登半島地震の発生で防災意識が強まる中、自宅での電源保有に対する意識が高まっており、ポータブル電源に注目が集まっている中での発売となった。
プレスリリース: 大容量ポータブル電源EcoFlow DELTA Pro Ultra新発売 - EcoFlow(エコフロー)公式ブログ
●TCE、車載電池で「燃やさないリサイクル」スタート
豊田通商のグループ会社である豊田ケミカルエンジニアリング(TCE)は1月19日、自社ホームページ上で、車載用リチウムイオン電池における 「燃やさない電池リサイクル」処理パイロットラインを指導したと発表した。
関連記事:TCE:車載用LIBにおける 「燃やさない電池リサイクル」処理パイロットラインの稼働開始 | MIRU (iru-miru.com)
<海外>
●ドイツNGO、不正ディーゼル訴訟でVWに勝訴
ドイツの環境NGOであるDeutsche Umwelthilfe(DUH)は1月17日、ホームページ上で、「不正ディーゼル車を巡る訴訟で、ドイツ連邦政府とフォルクスワーゲンに勝訴した」と発表した。
関連記事:フォルクスワーゲン・ディーゼル車スキャンダル:ドイツ環境NGO、裁判で勝利 | MIRU (iru-miru.com)
DUHプレスリリース(ドイツ語):Deutsche Umwelthilfe gewinnt bisher umfangreichstes Gerichtsverfahren zu Millionen Betrugsdiesel-Pkw von VW, Audi und Seat – Deutsche Umwelthilfe e.V. (duh.de) Deutsche Umwelthilfe gewinnt bisher umfangreichstes Gerichtsverfahren zu Millionen Betrugsdiesel-Pkw von VW, Audi und Seat – Deutsche Umwelthilfe e.V. (duh.de)
●問われるEVの耐寒性 寒波の米国で問題化、中国でも研究結果
米ニュース専門放送局・Foxのイリノイ州局であるFox Chicagoは多数の電気自動車が凍りつき動かない様子を取り上げた。
関連記事:大寒波に凍りつく電気自動車 EVの限界点と「死骸」 | MIRU (iru-miru.com)
中国の自動車情報アプリ「懂車帝(Dcar)」が2023年12月下旬に発表した実験結果でも、EVは寒冷下では多くの車両の航続距離が200~300キロメートルにとどまり、カタログ値の4~5割まで短くなっていた。
懂車帝プレスリリース(中国語)懂车帝发布新能源冬测成绩单,看看你的爱车排第几?_懂车帝 (dongchedi.com)
●電池負極材、23年は中国製が9割
2023年に世界の電池負極材生産に占める中国の割合が97%を超え、一段と拡大したことが分かった。中国メディアの澎湃新聞が1月16日までに伝えた。
関連記事:中国の電池負極材生産、世界の97%に 貝特瑞がトップ維持 | MIRU (iru-miru.com)
●スウェーデンのノースボルト、追加融資を取得
スウェーデンの電池スタートアップであるノースボルトは1月18日、自社ホームページ上で、「欧州連合(EU)と米JPモルガン・チェースなど銀行団からのデットファイナンス(借り入れによる資金調達)を追加で取得した」と発表した。追加後の融資規模は50億ドル(約7400億円)で、2020年7月の融資分16億ドルの借り換えを含むため、新たな融資調達分は正味34億ドルとなる。
関連記事: どこまで進むNorthvolt?超大型ローン調達 | MIRU (iru-miru.com)
プレスリリース(英語): Northvolt raises $5 billion for circular gigafactory
(IR Universe Kure)
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