LME、香港に倉庫ハブを計画か 対中取引に利便も政治リスクや家賃が課題、外電報道
ロンドン金属取引所(LME)が金属保管倉庫の見直しに着手しているようだ。ロイター通信が1月30日に伝えたところによると、LMEは香港に世界的なネットワークのハブとなる大型倉庫の建設を計画しているという。LMEは2022年にニッケル取引を巡りトラブルを起こした。足元では上海金属取引所(SHFE)との合併も囁かれ、去就が注目される。
■ニッケル事件で信頼失墜、上海との統合のうわさ絶えず
LMEは言わずと知れた香港証券取引所(HKEX)の傘下企業。報道によると、香港での倉庫設置、は2012年にHKEXがLMEを買収して以来、計画されてきた事案という。ただ、世界トップレベルの香港の高額な家賃や、LMEが手掛ける銅やアルミニウムの香港経由での中国への輸入の需要がさして大きくなかったことなどから実現してこなかったという。
それが、ここにきて再燃しているのは、2022年春のニッケル騒動による信頼失墜がやはり響いているようだ。騒動後、「金属価格はLMEではなくSHFEやシカゴマーカンタイル取引所(CME)など他の取引所の水準を参考にしている」(日本の中堅商社関係者)といった声がしばしば聞かれるようになるなど、LMEはすっかり信用を無くした。その結果、2023年以降はLMEとSHFEとの協業や統合の観測が度々浮上している。
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統合需要はSHFE側にもある。ロイターによると、SHFEとしても、これまで中国国内が中心だった金属取引の参加者がアジア全域に広がる中、国際的な倉庫ハブの必要性に迫られているという。
■中国リスク、恒大集団への処置で判断?
ただ、実現のハードルはそれなりに高く、市場の意見も賛否両論だ。
まず、メリットとしては、中国人のバイヤーにとってはロンドンの倉庫よりは香港の倉庫の保管物の方が何といっても利便性が良く、中国からの買い付け増加が期待できること。もしSHFEとの協業や統合が進めば、香港の倉庫はなおのこと使い勝手の良いハブになるだろう。外国人側からも、中国との取引に利便性の高い倉庫になると予想できる。
一方、リスクとしては、現在もネックになっている家賃の高さが挙げられる。香港の近隣には台湾やマレーシアなどの家賃の安い港湾がある。また、中国と取引をするなら、中国本土の港湾に倉庫を直接設置する方がなお便利だ。
また、外国人投資家は現在、中国の政治的リスクに敏感になっている。ロイター通信によると、消息筋2人が同通信の取材に対し、香港の外国企業や個人に対する中国の締め付けを理由に、「香港への投資には慎重だ」と述べたと伝えた。例えば、中国政府が、香港の裁判所が下した中国不動産大手の中国恒大集団の清算命令をどう処理するかなどで、中国リスクを判断しようとする動きもあるという。
香港地元紙の香港経済日報(電子版)は1月30日、一連の報道に対し、LMEは「新たな取引のハブを設定するとすれば重要な基準に照らして決めねばならず、市場関係者に意見を聞く前に、関連部門の質疑委員会内で話し合わねばならない」と答えたと伝えた。
(IR Universe Kure)
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