日本アビオニクス(6946) 24/3Q3決算メモ 割安感無くポジティブからややネガティブ
24/3期情報システムの収益拡大で増額修正含み、25/3期防衛費増で中計目標は上振れ期待
株価(2/20)11160円 時価総額374億円 発行済株3353千株
PER(24/3DO予18.8X)PBR(2.84X) 配当(24/3予)30円 配当利回り:0.3%
要約
・24/3Q3は3.7%減収も5.6%営利増、情報システム寄与で収益拡大も受注21.5%減で一服
・24/3期12.6%増収、5.0%営利増予想に変更無く、情報システムの利益率向上で増額期待
・中計目標の25/3期売上高220億円、営利26億円上振れ達成期待も特益無く税引伸び悩みに
24/3Q3は3.7%減収も5.6%営利増、情報システム寄与で収益拡大も受注21.5%減で一服
24/3Q3は売上高45.84億円(同期比3.7%減)、営利5.99億円(同5.6%増)、経常利益5.94億円(5.7%増)、税引利益4.22億円(3.6%減)、受注48.23億円(21.5%減)、受注残高135.78億円(8.0%増)と情報システム寄与で収益拡大も受注21.5%減で一服となった。
セグメント別では情報システムが売上高38.04億円(3.3%増)、営利7.23億円(31.2%増)、受注36.91億円(28.4%減)、受注残126.25億円(14.1%増)。防衛予算の増加を受け、受注が拡大しQ2に大幅増となった反動減で受注が減少、売上は主力の艦船搭載情報表示装置の大型受注残などの消化が進み増収に。利益面ではQDC改善などプロセス改善が進み収益性改善寄与が継続、営業利益率が19.0%と同期比4.3ポイント、Q2比でも1.9ポイント改善した。なお受注残高は防衛省関連ということも有り膨らんでいるが、Q2比でほぼ横ばいとなっており、今年度の発注増は織込んだ形に。
一方、電子機器は売上高7.79億円(同27.7%減)、営業損失1.24億円(1.4億円悪化し赤字転落)と低迷した。受注は11.33億円(同14.7%増)と23/3Q2以来の10億円超を確保したが、受注残は9.52億円(36.8%減)となり、依然として厳しい状況が続いている。受注面は接合機器が一部振動子の設備投資などの動きも出ておりボトムを付けた状況、但し赤外線機器はコロナ需要の一巡が影響している。売上面は輸出が2.38億円(58.5%減)、国内5.39億円(6.7%増)と特に輸出が大幅減。主力の接合機器が売上高5.33億円(36.3%減)と落ち込み、特に中国は0.89億円(69.5%減)と、スマホの不振、5G基地局向けの反動減が大きい模様。また台湾が主力と見られるアジアも0.67億円(72.4%減)と水晶振動子向けなどがスマホ・PC等の低迷で大幅減が続いている。なお国内中心トップシェアを持つ赤外線機器は2.47億円(2.5%増)とコロナ特需減からボトムを確認したと見られる。利益面では減収影響が大きくQ2比でも赤字拡大を余儀なくされた。
全体として、Q3業績はほぼ会社想定通りに推移した模様で、赤字体質だった電子機器事業が収益部門に変貌したことで企業変革が進んでいる。
24/3期12.6%増収、5.0%営利増予想に変更無く、情報システムの利益率向上で増額期待
24/3期会社予想に変更はなく、売上高200億円(12.6%増)、営利20.5億円(5.0%増)、経常利益20億円(3.9%増)、税引利益19億円(4.4%増)予想を据え置いた。Q3累計での会社予想に対する進捗率は売上高で66.3%、営利で73.6%となっている。
部門別では情報システム140億円(13%増)、Q3累計進捗率は77.3%、電子機器60億円(11%増)予想、Q3累計進捗率40.5%となっている。情報システムはNEC、富士通などを通じ、防衛庁向けに納入されQ4に売上が偏重となる。現状受注残高が豊富で進捗率が例年よりも高く、会社計画を上回る売上が見込まれる。また各種の効率化が進み収益力も高まっており、利益も上振れが期待される。
一方、接合機器はスマホ、PCなどの低迷が長引く見通し。EVバッテリー向け合金タブ溶接、モーター用コイル線接合(フュージング)、ハーネス向け銅・アルミ異種金属溶接など自動車向けは増加が見込めるが、中国でのEV向け設備投資に不透明感が出ており、加えて水晶デバイス向けが、5G対応の伸び悩み等で回復が来期にずれ込む見通しにある。サーモグラフィーは非発熱向けで、ネットワーク監視サーモカメラの拡大、医用サーモカメラ発売等でボトム脱出も、大きな寄与にはならない見通し。全体としてQ1ボトムに新製品寄与もありは受注の緩やかな回復も、利益の黒字化は来期にずれ込もう。
全体として情報システムの収益上振れ、電子機器の赤字継続で、確認で収益の上振れが期待されるものの、大きな増額にはならないとみられる。
中計目標の25/3期売上高220億円、営利26億円達成は達成可能
同社は中期経営目標として25/3期に売上高220億円、営利26億円を掲げた。中計策定当時と状況が変化、情報システム150億円(23/3期比21%増)、電子機器70億円(同30%増)としている。既に情報システムは1年前倒し達成が期待されるが、電子機器は受注残の少なさから見ても25/3期でも70億円に届かない可能性が出てきた。但し電子機器は、接合装置で4つの接合機方式を持つ他社にない総合接合機メーカーという強味がある。特に同社が高いシェアを有するシーム溶接機は、水晶振動子の真空封止として利用されるが、今後、ミリ波対応の5Gスマホでは「高速大容量」、「高信頼性、低遅延」、「多数同時接続」が必要要件で、26/3期には需要が大きく伸びよう。またインバータ式抵抗溶接機は2次電池のタブ溶接、EVモーターの端子溶接等での利用が期待される。23年3月に発売した高信頼性インバータ式抵抗溶接機は、「大型モーター」や「車載電装品」市場における大電流対応や生産性向上ニーズに対応するもので、最大出力電流32000Aの高出力を実現している。さらに超音波金属溶接機は放熱部材のベイバーチャンバ封止、アルミ・銅の異種金属接合など低い接合温度を必要とする需要の広がりが期待される。最近2月にはEV ハーネスやEV 電池市場に向け独自の周波数発振制御方式であるアトモス方式(ATHMOS:Automatic Tuning Hold Master Oscillator Systemという独自の周波数自動追尾方式で、高負荷状態からでも高速でスムーズに超音波振幅を保持し安定した接合品質を実現)を備えた10,000W の「高出力超音波金属接合製品」の販売を開始した。またレーザー溶接は高い非接触接合で、金属ケースの高気密に優れ、2次電池ケース等の接合に利用が見込まれる。いずれにしても、最適な接合方式を提案できる強味から25/3期後半には需要の急回復が見込まれる。
赤外サーモは医用サーモカメラでは国内唯一の医療機器として、糖尿病や振動障害などの検査への活用が期待出来る。センシング分野ではドローン搭載型サーモカメラを開発中で、橋梁や建物の老朽化などの遠隔点検も視野にIoT機器として拡大期待がある。このため電子機器は25/3期受注で5割程度の増加が見込まれる。
全体として情報システムの増額、電子機器は修正計画未達になると見られ、中計の達成は可能も、更なる成長は26/3期にずれ込むとみられる。
株価はPERの低さ、防衛関連予算の大幅増などを囃し急騰を続け、2/19現在で11470円の昨年来の新高値更新となり、1996年時の高値12000円に迫る勢いとなっている。但し24/3期会社予想EPS594円に対しPER18.8倍と、東証スタンダード電機平均PER14.3倍に対し割高感が出てきており、しかも適正税率で税引利益を換算した場合PER26倍程度となり割安感はない。今期営業利益は上場来連続最高額更新見通しのほか若干増額修正が期待される。但し防衛予算の積み増しなどで25/3期は中計の上振れ達成があっても、適正税率でみてPERの割安感が無くなったため、株価は過大評価されていると見られ、一旦、ポジティブからややネガティブに変更する。
(H.Mirai)
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