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現役大学生が見聞した第9回バッテリーサミットREPORT

 2月27日、東京都千代田区神田の学士会館にてIRuniverse株式会社主催による「9th BatterySummit Tokyo 2024」が開催された。

今回の記事では本講演会の概要と内容について他の記者とは違った、現役大学生目線から簡単に紹介する。

詳細な各講演ごとの内容は別の記事をご参照頂きたい。

 

 

 ノーベル化学賞受賞された吉野彰先生を含む15人が電池の技術とそれを利用した社会、また今後の未来像を語られた。

 

 冒頭は吉野先生の基調講演からスタートした。

電池パスポート、クリティカルマスの法則、2050年の世界という3つの要素について講演された。特に、市場シェア16%を超えると一気に普及するというクリティカルマスの法則を引き合いに出しながら、現状の普及率を比較した点は特に興味深いものであった。

講演を通じて今後のEVの普及について様々な角度から説明をされた。

2022年度は12%とのことだったので、現在EVが一般化するかどうかの分岐点にあることが印象的だった。

バッテリーリサイクル以前に「なぜバッテリーリサイクルが必要になるのか」という前提となる内容で、この後に続く講演に対する序論の意義も感じられた。

 

 

 最初は株式会社 B3 代表取締役 竹下 秀夫氏による「LIB の最新市場動向」と題した講演だった。

表題通り、LIBの最新市場動向を中心に、竹下氏の独自の調査や視点が紹介された。

また、テスラ、BYD、CATLの燃料電池についての解説。さらに、それぞれの企業が開発した技術の紹介と、それぞれの問題点について解説が行われた。

竹下氏が集めた情報が数多く紹介され、会場の多くの人が聞き入っていた。

特に、企業側が公開していない製品設計や技術を、分解して逆説的に考察した結果の場面では、多くの聴衆から熱い視線が送られていた。

 

 

 2人目は、EcoPro(韓国)Jay-Yang 氏による「Save the Planet - We Build Battery Circulation Economy」と題した講演だった。

CAMの需要見通しの説明が行われた。

また、リサイクルのトレンドと、国ごとの政策の紹介もされていた。国ごとのルールに適応するために、EcoProがどのような取り組みを行っているのか説明された。

さらに、エコプロが行っているリチウムリサイクルの工程についても説明されていた。この講演以外で語られるようなことがない社内の情報も多く説明されていた。

 

 

 3人目は、株式会社 AESC グループ 明石 寛之氏 による「持続可能な社会を支える車載用リチウムイオン二次電池の最新技術と将来展望」と題した講演だった。

グローバルトレンドは車載用電池でもネット0であり、将来的にEVバッテリーの需要の増加は底堅いとの見通しが説明された。

次に、AESCが考えるバッテリーの克服課題とセルテクノロジーのロードマップが説明されていた。

さらに、セルやモジュールやデザインに至るまで次世代技術の紹介も行われた。

また、AESCが各国に持つ工場において、クローズドリサイクルを2026年から開始予定であることも発表された。

最後に、安さだけ、急速充電だけ、軽量化だけ等の単独要素ではなく、包括的に課題を解決するという同社の姿勢も説明がされた。

 

 

 午後の一つ目の講演は、名古屋大学 山本 真義教授の「次世代自動車用大容量バッテリーと化合物(SiC/GaN)パワー半導体応用との融合システムの技術動向」と題したものだった。

インバーターに関連した技術紹介が中心の内容だった。

主に、車両を分解した結果を元に、山本教授の考察と分析が紹介された。

序盤のテスラのモデル3のインバーター部品をモデルYに流用しているという結果が説明された際は会場から大きな興味の視線が注がれていた。

また、トヨタが行う部品の共通化(BZ4X,RX450C)や、日産(ARIYA)の振動に弱いという樹脂の持つ課題を克服した最新樹脂技術が、山本教授の考察と共に紹介された。 

バッテリーの省スペース化を進め、空力を追求して利用航続距離を延ばすという開発トレンドが存在することも説明された。

最後にインホイールモーターとその将来も言及があった。

インホイールモーター技術が成熟すると、Bセグメント車にどのようなことが起きるのか考察がされた。将来的にはそうなると、フロア全体か燃料電池になるということも夢ではないようだ。

 

 

 次はChina Automotive Technology & Research Center Co., Ltd.(China)のMr.Song Hu氏による「China’s NEV battery recycling management mode and industry development 」講演だった。

China Automotive Technology & Research Center Co., Ltd.は、日本語では中国自動車技術研究センターとなる。自動車関連標準規格(GB、GB/T、QC/T)の策定や、自動車および関連部品に関する各種試験の実施等を行っている。

まず、中国におけるリチウム資源の抱える問題と、何故リサイクルが重要なのかということが説明された。

その後、中国のリサイクルモデルの紹介が行われた。直接管轄下にある国有資産企業だけあり、非常に中国自動車産業と、リサイクルについて細かい点まで言及がされていた。

 

 

 rhomotion(イギリス)Mina Ha 氏 「Global Black Mass Outlook & Cross-Border Expansion」
rhomotionは市場調査やデューディリジェンスなど幅広いサービスを提供し、取引のサポートを行っている。さらに、バッテリー価値チェーン全体のサブジャンルについて、地域や国レベルでの供給チェーンや競合状況を包括的に調査している。

今回の講演ではBlack Massについての講演だった。

リチウムイオン電池のリサイクルには、まず電池を解体し破砕し、「黒い塊(black mass)」と呼ばれる物質を作る。その後、さまざまな化学プロセスを用いて、黒い塊から原材料を回収する。

今回は、このblack massの動向について多くの時間が割かれた。

また、最後にバッテリーリサイクル市場が取り組まなくてはならない課題も独自の視点から説明された。

 

 

 古河電池株式会社 古川 淳氏 「鉛蓄電池の用途と技術の将来見通し」

鉛蓄電池が発明されてから160年以上が経過し、時代のニーズに応えるためにさまざまな改良がなされてきた。さらに新しい電池化学が登場しているが、どれも鉛蓄電池ほど持続可能ではないという説明があった。

鉛蓄電池は、次の10年間においても自動車や産業用途における重要な電源として続けて使われるだろうが、鉛蓄電池の将来にとって、AUX(Auxiliary、補助)やESS(Energy Storage System、エネルギー蓄積システム)での鉛蓄電池の採用にどのように同社が応えていくのかということが紹介された。

 

 コーヒーブレイクの後、最後の部の4人の発表が行われた。

ユミコアジャパン株式会社 近藤 幸成氏 「ユミコア正極材の方向性とバリューチェーンにおける取り組み」

市場の概要が説明された。BEV(Battery Electric Vehicle)市場の大幅な成長に応えてCAMの需要の上昇が見込まれる。

また、それぞれのニーズに応えた正極材を作る必要があるとのことだった。例えば、電圧をあげる、寿命ののばす等のニーズがある。

ユミコアが量産中の正極材についての説明もあった。

また、ローカルフォーローカルの生産体制についての説明もあった。これはフットプリントを減らすことにも繋がる。

そして最後に、今後の生産体制の開発見通しが発表された。現在稼働中の各国の工場が紹介されただけれなく、今後の設備投資のロードマップも説明された。

 

 

  次にエラメット社の講演。

「Energizing Europe: Exploring the EV Battery Gigafactory Landscape」EV市場の成長に伴い、バッテリー需要の増加と国内サプライチェーンの確保が重要とのことだった。

EV移行は脱炭素化目標に関連し、強力な政策で支えられている。2023年はEV産業の停滞があったが、EVの普及には長期的なビジョンが必要だ。

また、各国のサプライチェーンについての説明もあった。ヨーロッパでは多くのバッテリー工場が登場しているが、上流部分は中国が支配している。自給自足は困難であり、ヨーロッパのバッテリーサプライチェーンの確保は経済競争力と地政学的な問題となっているとのことだ。

 

 

 Jervois Finland Oy (Finland) Mr.Sami Kallioinen氏「 Jervois Finland and Sustainable Cobalt supply to battery Industry」

Jervoisの資産は戦略的に重要であり、ニッケルとコバルトはEVバッテリーに不可欠な鉱物であり、ジャーボアの資産はこれらの需要に関連していることに言及があった。

Jarvoisはコバルト先端材料で特異なポジションを持っており、コバルト価値には長期的な良い動向があるとのことだった。

また、強固な財務プロファイルと確かな運営チームがあることも特徴の一つのようであった。

さらに精錬所の拡張の計画もあり、よりリサイクルに注力していくとのことだった。

 

 

 COREMAX CORPORATION (Taiwan) Mr.EugeneLawrence Ho氏「Key challenges of midstream battery material sector and how CoreMax Group plans to build a sustainable supply chain 」

CoreMaxグループの概要の後、カソードマテリアルヴァリューチェーンについて、上流から下流までの説明があった。また今後の市場見込みについても説明がなされた。

現在直面している困難は、不確実な政策枠組みと貿易状況、IRAやCRMA、貿易障壁、国家間の政治問題などへの対応が挙げられる。

CoreMax Groupは、持続可能なサプライチェーンを構築するために様々な取り組みを行っている。安全性と環境への配慮を第一にし、技術革新による効率向上や品質の向上、コスト効率の向上を図っている。

また、貸付や補助金に頼らないコスト管理も重要視しているそうだ。

また、新しいアイデアにオープンであり、あらゆる潜在的なプレーヤーとの対話を大切にする社内風土があるとの説明があった。

 

 

 

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 全ての講演者に共通していたのは、今後もEV市場は成長の見込みがあり、それに伴いバッテリーの需要は増加するということだった。

一方で、需要に応えるにはリサイクルも行う必要がある。

各企業がそれぞれの強みを生かしながら大きなビジネスチャンスを伺いながらも、環境問題にも真剣に取り組んでいる姿が大変印象的だった。

一方で、少数の原材料産出国の政治的姿勢によって大きく市場そのものが影響を受けてしまう脆さも存在し、それに対するリサイクル業界からの解決はまだほど遠いものだということも事実だろう。

 

 

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Y.Imahoko

現在慶應義塾大学在学中。専門は量子コンピュータ―。今まではコンピューター関連の先端技術に興味を持っていたが、入社がきっかけとなり資源関連にも興味を持ち始める。

 

 

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